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リサコラム
連載547回
      本日のオードブル

饒舌な場所


第11話


「Bonちゃんの即興」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


海と空が
青い糸でつながった景色、
そんな場所は別にカップマルタン
でなくても、サントリーニでなくても、
日本中に世界中にたくさんあります。
そこに家を建てたら
素敵な別荘になります。
ぜひ、ポリカーボネートの
天蓋ベッドを置きませんか?
まさしく海と空と一体になって
眠れますから。

 
      
  





       


第12話
 「Bonちゃんの即興」

 

「やあ、すばらしい眺めですね~」B氏は首から掛けたカメラを構えると、また、

「いや~すっばらしい~」を連発しながらどんどんシャッターを切った。


                


 NamikoB氏から少し離れて邪魔にならない場所に移動するとB氏の後ろ姿を追った。


 「向こうに見えるのはB氏はちらっとNamikoの方を振り返ると「あれは無人島ですか?」

と尋ねた。そしてまたすぐにカメラを覗き込んだ。「ええと、どの島ですか?」「あれです。

正面のあの島は?」「ええ、無人島です。どうしてかといいますと、まず、水がでないんです。

低い山だから。海水を飲み水に変えてまで住まないのでしょう。それに人が住むには小さすぎま

せんか?」Namikoが言い終える前に、Bは笑いながら言った。「ははははははっ小さすぎる

なんて、僕のマンションなんか60平米の2LDKですよ。あのくらいあれば十分な豪邸の広さで

しょ。いずれにせよ、最高ですね。青い海に囲まれて、静かで、悩みもストレスもいっぺんで


き飛ぶでしょ」と、B氏はNamikoに笑いかけながらもカメラを離さなかった。そして眼下に広

がる海を撮り続けた。


                


 「それで、この場所ですがNamikoが言いかけると、Bはまた「素晴らしいな~これはい

い写真が撮れなくてどうするかって感じだね~、う~ん」と独り言のようにつぶやき、時々唸り

声を上げながらもずっとシャッターを切り続けた。Namiko は都会からやって来たBにとにかく

自分の希望を託しかった。そのため、何とかこの場所をアピールしたいという気持ちからつい言

葉が多くなりそうになるのをじっと我慢した。


                


 「それなら、このベッドもいかがですか?」「はい?」「ああ、この天蓋ベッドも撮られませ

んか?この別荘の一番の自慢なんです」NamikoはやっとBが振り返った瞬間を逃さなかった。


 「ああ、これですね。なかなか素敵なベッドですね。でも、なんで海の方を向いていないんで

す?」「これは軽い力で向きを変えることもできるようになっています。それが自慢なのです。

天蓋とベッドは別々に動くんです。天蓋のポールはポリカーボネートなので、ご覧の通り透けて

みえるでしょ。海を見たいときにポールだって邪魔しないんですよ」「なるほどね、それはすば

らしいアイデアだ」Bはうなずいた。


               


 「それに、ここはガラスの扉を閉めれば寝室になりますから、真っ暗な海より映画を見て夜を

過ごすのも素敵かなと….」「うん、わかりますよ」Bはまたファインダーを覗いた。


 「ああ、確認ですが、こちらは、Namikoさんのご実家があった場所だと伺いましたが

Bはぱっと振り返ったと思った次の瞬間にはまた移動しながら写真を撮り続けた。Namikoは慌

ててBの後を追った。


               


 「ええ。ここは元々、母方の実家があったところで」それから、Namikoはちょっと声のトー

ンを落として雲のかけらもない紺碧の海と空をじっと見ながら、カメラを握ったままで離さない

B氏の背中に向かって小声で言った。


               


 「でも、みんな都会に出て行ってしまって、だって、ここは漁業以外の仕事はないんです。

若い人が漁業に従事するなんて、なかなかないことでしょ。一度はみんな華やかな都会に行きた

いものですよ。それに小高い丘の上に古い家があってもどうしようもないから、それなら別荘に

と、家族会議で決まったんです。観光と言えるようなものは何もないですけど、ほんとうにいい

場所ですよ。それにお寿司やさん兼和食の食堂も一軒あります。幼馴染の同級生が帰って来て始

めたんです。お魚はおいしいですよ。もちろん新鮮ですしね、それにすぐに目と鼻の先でしょ。

都会で修行して戻って来た人だし、とってもいい人なんです」Namikoはそう言いながらBの姿

を目で追っていた。


               


 「ああ、すみません。聞いていなくて。でも、もう決めました」Bが言った。「もう決めまし

た?」「ええ。売って頂けませんか?」Namikoはあまりに早いBの決断に驚いた。「こんな素

晴らしい場所は他にはありませんからね。う~ん。ここままそっくりいただきたいんです」「こ

のままそっくりですか?」Namikoは頭の中を探って返事を探してみたが、今日の空模様と同じ

で何も書かれてはいなかった。「ああ、ちょっとびっくりしまして。でも、買っていただけるな

ら、それは正直うれしいです」というと顔をほころばせた。


 「それはよかった。実はそのつもりで、今日は確認のために来たんです。それで、さっき何を

おっしゃってました?つい、この景色に夢中で」と、ぺこんと頭を下げると、Bのカメラはシ

ャツの上でゆらゆらした。


               


 「いえ、大したことでは」と言ったがNamikoは続けた。「あの、建築家のル・コルビュジエ

ってご存知でしょう?実を言いますと、あの有名な別荘がある南フランスのカップマルタンって

いうところにここはそっくりなんです。海はこの通り美しいし、海岸もきれいです。もちろん泳

げますよ。夏にはね。だから、まさにコルビュジェの別荘というイメージで作った家なんです。

それに、すぐ近所には素晴らしいシェフがいるシーフードのレストランがあるんです。それもね、

コルビジェのその別荘と同じ名前の『ヒトデ軒』という名前になる予定、なんです」Namiko

やっと言いたいことを言い終えると、Bは「ほお~、それはますますいい!」とさらに感動した

様子を見せた。「それでは、お茶でもお入れいたしますから、どうぞごゆっくり撮影なさってく

ださい」とNamikoは言うと、小走りに部屋の中に入って行った。そして玄関まで来ると、急い

で例の食堂に電話をかけた。


                


 「はいっ~!」威勢のいい声が響いた。「あの、ごんちゃん、食堂の名前変えたいから考えて

って言ってたでしょ。決まったわよ、『ヒトデ軒』にしたら?いい?決まりね」「Bonちゃん、

いつもように、いきなりだね。まあ~いいけど、それがいいなら」「ありがと。それじゃ、後で

行くから、話、合わせてね、わかった?『ヒトデ軒』だからね」Namikoはごんちゃんという幼

馴染の承諾したような声を確認すると、「ありがと。恩に着るわ」と言って電話を切った。


 「この場所を素敵な別荘地にしたいんです」Namikoはミントアイスとアイスカフェラテを盆

にのせて戻って来た。「実を言いますと、このベッドの上のクッションもBさんのために」と

天蓋ベッドを撮影していたBに「B」と大きく刺繍されたクッションをBに示しながら言った。


               


 「ああ、そうかなと思ってました」Bはうれしそうにうなずくと、「Namikoさんがそこまで

気を使ってくださったんだなと思って、まあ、最後の決断をしましたよ」と言うと、うれしそう

に笑いながらBNamikoに握手を求めた。“眺望ばかりじゃなかったんだ” Namikoは内心そ

う思いながら、握手の手を振った。


               


 その日の帰り、Namikoは母にメールを送った。「別荘が売れたのよ~今までの人生で5本の

指に入るくらいうれしいことだったわ。それに、私の名前の凡子ってずっと好きじゃなかった

の。だってずっと「Bonちゃん」ってあだ名だったでしょ。でも、今回はおかあさんがくれた

あの「B」のクッションのおかげだわ。


 お母さんの説く『凡庸』って、ほんと、すばらしいことね」




      


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
  別荘が無理なので、まずはテイストの違う2つの寝室を作ったのがもう、
 13年ほど前になります。
  凡庸とはほんとうに難しく、そしてすばらしい言葉だと思います。


  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
           


p.s.2
     
お待たせをいたしましたが、
     近いうちに下のE-bookの英語版をアマゾンで出版いたします。

     自分で四苦八苦して訳してネイティブの先生にチェックしてもらい
     わいこさんに編集作業をお願いしておりますものです。

   
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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