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リサコラム
連載551回
      本日のオードブル

秘密基地はバラの香り


第1話


「幸せな完全犯罪」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



窓の外は静かな森の
ホテルの庭です。
透けるレースからも中心が膨らんだ
白い柱の手すりと階段が見えます。
そこを上ると、眼下には美しい湖が
見渡せるかもしれません。
部屋を変えたいと思ったのは
運命ともいえる重なり合いの末です。
美しい先生はそんなことを知らず、
熱心に私に教えてくださるのです。
なんて、私は幸運なのでしょうか!


 
      
  





       


第1話
 「幸せな完全犯罪」

 

 「やっと抜け出せそうです。長い保留人生から。まず、幸いなことにそれにより

だれかに迷惑をかけたことはないことを申し上げておきます。


               


 話は私の高校時代に遡ります。実につまらないことから始まったのです。

それは放課後の必須のクラブ活動に私がテニスを選んだことからでした。もともと

3面しかないテニスコートの真ん中の1面しかそのクラブ活動では使えなかったた

めに、そのセンターコートで華麗にラケットを振ることを希望した15人ほどの女

子は体育館の片隅に集められ、そこで、くじによって人員整理をさせられることに

なりました。「くじ」です。そう、もっとも民主的な方法です。


               


 「くじで決めたいと思います。50分で、15人が練習するのは無理なので少し

絞らせてもらいます」担当する理科の先生が言い終える前に冷たい床の上に座らせ

られた生徒が一斉に奇声を上げたそのとき、私は別の意味で奇声を上げました。私

はこの「くじが」大の得意なのです。


               


 5人兄弟姉妹の上から数えても下から数えても、3番目に生まれた私は生まれた

順番というはなはだ民主的ではない方法で、待遇が決められるという憂き目に会っ

てきました。5人兄弟姉妹の3番目がどんな風に扱われるか、想像はつかないかも

しれません。上の2人はつねに優秀な成績表を持ってきていました。小中高一貫の

教育を受けさせられ、5段階評価の中に5と4はあっても決して3はなかったので

す。時に美術や音楽の中の特殊技能を要するときに2という数字がちらっと覗いた

こともあったようですが、しかし5がひしめく中でひときわ輝く2という数字に、

両親、祖父母までの3世代の家族の面々は爆笑はするものの、悲観的に問題視する

ことはありませんでした。そして3番目の私は5段階評価の中でたいていオール3

で、まれに4が混じることもありました。しかしながら、2も1も、見た覚えはあ

りませんでした。なのに、幸か不幸か、3が並んでいるばかりの派手さも地味さも

ないそのぱっとしない評価表にほとんどだれも関心を向ける者はいませんでした。


               


 関心をむけられない対象は評価表だけではありませんでした。3番目の私は常に

もっとも大事にされず、もっとも関心を寄せられない部類に属していました。そも

そも、3という数字は三日坊主に代表されるように持続力の限界も表しています。

なのに、3日続いた後の4と5という数字は認められる数字になるなんて、不公平

だと思いませんか?


               


 そして成長するにつれ、家族の中で兄弟姉妹の下から2番目までは、過保護にし

てもいい、いや、すべき対象になりました。私は4番目と5番目の妹と弟の面倒を

見て子供時代を過ごしてきたため、上の二人のように勉強する時間がなかったので

す。だからさえない3のオンパレードだったのです。そう言えば、今の厳しい世の

中では間違いなく「言い訳」以外に分類されることはありません。しかし、私はそ

ういう3番という番号を背負ってこれまで生きてきたのです。その見返りに神が下

さったせめてものご慈悲が、くじ運なのです。だから、おみくじ、駄菓子屋のくじ

では、絶対の自信がありました。くじだけが私の味方だったからです。


 くじには引きてる引き方というものがあります。それは箱の中に手を入れた瞬間

でわかります。もっとも人の手が当たる場所にそのいいくじは入っています。重箱

の隅をほじくるという嫌味なたとえの通り、すみっこには、当たりくじが入ってい

ません。必ず中心にあるのです。それはずいぶんかき混ぜられた結果、自然、その

場所を得ているからだと私は思っています。


               


 前置きがずいぶん長くなりましたが、そんなわけで私は体育館の隅で粛々と順番

を待ちました。くじの箱に手を入れた瞬間、いつも通り、当たりくじはわかりまし

た。しかし、最後の生徒が引いたときに、それは完全なるはずれくじだと分かった

のです。外れたのは3人でした。15人の応募者は12人に絞られ、3人が落選し

たのです。またしても私はその3人に入りました。


 その3人は人員に余裕のあるクラブを探してボヘミアンになりました。私は取捨

選択の末、もっとも人気のないクラブの中から私が入ることを許されたクラブが、

ドイツ語だったのです。


 物理の先生がそのドイツ語クラブの担任の先生になりました。放課後、5人の部

員と先生はガラガラの教室でDVDを見ながら、“グーテンターク”から始めました。

そして2人がすぐにリタイヤし、3人になりました。そして1年間、ナメクジのよ

うな速度で私はやっと「私はピアノが趣味です。あなたのご趣味は何ですか?」

というようなそんな簡単な会話だけを獲得して1年を終えました。


               


 私はそれから短大に入り、中くらいの成績で卒業して、ある中堅の繊維関係の企

業の面接を受けることになりました。その履歴書に私は得意な科目にドイツ語と、

書きました。最終面接で、面接官であり、今の常務は、私にドイツ語で何か話して

みろと言いました。私はあらかじめ用意していたといいますか、それしかできない

「私はピアノが趣味です。あなたのご趣味は?」というその簡単な会話文をしゃべ

りました。常務はうなずき、それ故か私は合格し、そしてその企業に勤続して15

年になります。いまだ独身です。


               


 そして、なんと来年、ドイツとオーストリアに1年間の研修に行くことになった

のです。私は人事部からその研修のメンバーに選ばれたことを聞いて、椅子から転

げ落ちそうになりました。あの得意科目はドイツ語という履歴書がいまだ生きてい

るのかと、それとなく懇意にしている人事の人間に確かめると、きっとそうかもと

いうぼかした返事が返ってきました。私は焦りました。しかし、そこでいい評価を

得て、戻ってくれば社内での私の昇進は確実なものとなることもわかりました。も

う、考える暇はありませんでした。ほとんどたなぼた式にめぐってきた初めてのチ

ャンスだったのですから。私はついに決断したのです。今まで中庸の徳をいいこと

に保留し続けていたことに着手することにしたのです。つまりは中間から抜け出す

ことに、です。


               


 まずは会社帰りと休みの日に通えるドイツ語教室を調べ、3教室通いました。週

7日です。少し慣れると、先生方に「私はピアノが趣味です。あなたのご趣味は

?」というその簡単な会話文で話しかけました。するとすぐに仲良くなれました。

私はその中のピアノが弾ける一人の先生に家庭教師をお願いすることになったので

す。とても美しいドイツ人の女性の先生です。


               


 そしてその先生を迎え入れるために自分の部屋を防音室にしました。内装も全部

変えました。そして、ふたが粘着テープでくっついているかと思うほどに長年開い

たことのないピアノを持って来て、壁には美しく晴れた森の中の一軒家でピアノを

弾けるようなそんなパノラマの素敵な壁紙を見つけ出してだまし絵のように美しい

景色を作り出したのです。35年の人生で私は初めて運ではなく自分から行動を起

こしたのです。


               


 実を言いますと、ドイツ語はもちろんのこと、ピアノは趣味どころか、小学生以

来、まるで弾いてもいません。それなのに、幸運にも15年間、社内でドイツ語を

披露する機会に巡り合うこともなく、私のドイツ語と趣味のピアノは封印されてい

ました。

  今、私はにわかに出現した秘密基地でドイツ語とピアノの猛特訓中なのです。

これを完全犯罪にできるかどうかはここ半年にかかっています。しかし、思い返せ

ば、高校時代、あのくじに落選したおかげなのです



      


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
  中間から抜け出す、難しいテーマです。
 しかし、チャンスは日に3度あるそうですね。
 私もやっと学生時代以来のドイツ語の勉強を再開する決心をつけました。
 


  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
           


p.s.2
     
お待たせをいたしましたが、
     近いうちに下のE-bookの英語版をアマゾンで出版いたします。

     自分で四苦八苦して訳してネイティブの先生にチェックしてもらい
     わいこさんに編集作業をお願いしておりますものです。

   
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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