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リサコラム
連載560回
      本日のオードブル

思い返せばいろいろ
ありまして


第2話


「オーキッドパイ」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



白い建物に
青い海、白い雲
プライベートビーチ。
そこに大きな丸いプールを
作って、その建物の中から
眺めたとき、なんだかプールが
殺風景に見えはしないかとその時、
設計士は思ったのかもしれません。
そうかここにランドマークを作ったらどうか
そうすれば世界のパワーをこの水の中に
集めることができるかもしれないと。
まあ、想像ではございますが。









 
      
  





       


第2話 「オーキッドパイ」



  「ああ、あなた!あの、いやね、実はしばらくこのホテルに隠れておりまし

てね


             


 「隠れておられた?」ラウンジに顔見知りの男性を見つけて話しかけた体格のい

い方の男性は隣の席を勧められるより先に、自ら腰かけた。

 「どうしたんですか?」体に見合わない甲高い声がラウンジに響いた。


 テーブルをはさんで真向いに座ったもう一人のその男性は、「ちょっと静かに」

と言いたげに顔の前に人差し指を立てた。眉間の横の血管を浮き上がらせているそ

の細面の中年の男性は、同じ指で眼鏡をちょっと持ち上げると、ホテルのラウンジ

の中をそれとなく観察した後で、やっとこわばった表情を崩した。


             


 「どうか、ここにいることはご内密に。ここで偶然にお会いしたのは仕方ないと

しても私の家族にも会社にも内緒なものですからね」と言った。「それにしても、

奇遇ですね。体格のいい男性はもぞもぞしながら、やっと椅子の中に納まると、

「しかし、秘密というのは穏やかではありませんね」と言った。「いや、なんとか

ね。今のところは」「何があったんです?」と体格のいい男性は身を乗り出した。

「いや、いや、告訴されるようなことではありませんからご安心ください。それよ

り、せっかくですから、ご一緒しませんか?」と言うと、近くのウェイターに向か

って軽く手を挙げた。


             


 すぐに腕に白いナプキンをかけたウェイターがメニューをもってやって来た。

「ここはいくら食べても飲んでもコンプリメンタリーですからね」と細面の男性は

軽く笑うと、ウェイターに向かって「今日のおすすめは何かな?」と尋ねた。長身

のウェイターは体を半分に折り曲げるように二人にメニューを渡した後で、細面の

男性のメニューの中ほどを指さして、「アフタヌンティのお時間は、オーキッドパ

イとオーキッドティのセットが一番のおすすめでございます」とにっこり笑みを浮

かべた。


             


 「オーキッドパイ?つまりはランのパイってことかな?食用のランなのかな?」

細面の男性が尋ねた。「はい。食用のランもございます。こちらのパイは食用のラ

ンを使ったものではございません。ランの形をかたどったものです。お皿の周囲に

は毎日作り立てのラズベリーとブルーベリーのソースを敷いております。それをつ

けながらお召し上がりいただき」そこで、体格のいい男性は「それでは、私は

コーヒーだけで」とウェイターにメニューを返した。


             


 細面の男性は「ほう、うまそうだね」と言いながら腕組みをするとラズベリーと

ブルーベリーのソースに乗ったランの形に焼かれたパイの皿を想像しているような

表情を浮かべてから、「それで?そのオーキッドパイの中は?」とウェイターに続

きを促した。


             


 「はい。オーキッドの花びらをかたどった中には生クリームとカスタードクリー

ムが順に入っております。交互に違う花びらの味わいを楽しんで」「なるほど。

すばらしい。それにされますかね」椅子の背にもたれていた体格のいい男性は起き

上がると、細面の男性の方に身を乗り出した。細面の男性は聞こえていないような

風で、さらにゆっくり質問を続けた。


             


 「そのカスタードだがね、中には何か入ってはいないのかね?」「はい。入って

ございます。中はあんず、レーズン、オレンジピールを刻んでシャンパンで和えた

ものが入っておりまして」「ほう、大人の味だね、なるほどそれはおいしそうだ。

それで、そのあんず、レーズン、オレンジピールだけど、どのくらいの割合で入っ

ているのかね?」「割合?」体格のいい男性は耳慣れない言葉を聞いたようにびっ

くりして繰り返した。




 「はい。割合は100ccのカスタードに対しておよそ50%の」「50%!ああ、

わかった、50ccってことだね。どうです?いいあんばいですね。それにされませ

んか?」体格のいい男性はウェイターの話をまたも中断すると、決めかねている細

面の男性に向かって決断を促した。「そうだね~好みとしては70が希望だね。50

じゃちょっと足りない感じだね~」と両手でメニューを持ったまま、首を傾げてし

ばらく考え込んだ。


             


 「それじゃ、70で」体格のいい男性は、ぶるぶると頭を震わせると相方の男性

から半ばメニューを奪うような感じで抜き取ると、ウェイターに突き返した。


 「ちょっと待てよ。70は少々多すぎるかな」細面の男性が言い終える前に、体

格のいい男性は、「それじゃ、中を取って60。これでいこうじゃありませんか!

それがいい」と言い切るとドスンと椅子の背にもたれた。


 「なるほど、その手がありますね。間を取って、60か、それで行きますかね、

ねえ、どうかね?」とウェイターに尋ねると、体格のいい男性が代わりに「ええ、

いいですね。私は賛成、大賛成です。60でいきましょう。中庸の徳といいますよ

ね。迷ったら間を取る。ほら、オーストラリアのシドニーとメルボルンが首都を争

って、挙句、間にあったキャンベラが首都になったようにです。私はこれが一番好

きですね」そう言うと首の後ろや顔などをいきなりナプキンで拭き始めた。それか

らウェイターが立ち去ると、「ふ~」と大きな息を吐いてから、椅子の背もたれに

ぐったりともたれ、外を見渡した。


             


 4階のラウンジからは眼下に美しいプライベートビーチが見渡せる。その手前は

1階部分くらい高くなっており、そこに大きな円形のプールが見える。「なるほど

そうか。あれが、そのランのプールなんですね」体格のいい男性はプールの中心に

モザイクタイルで浮かび上がったランのプールを指さした。


 「ええ。本家本元はオアフ島のハレクラニだと言われてはいますがね、私はこの

プールが最初ではないかと思っているんですよ」と言うと、細面の男性はひじ掛け

椅子を立って、数歩、バルコニーの方に向かって歩いた。


 「まあ、私にはどっちでもいいようなものですがね」体格のいい男性は細面の男

性の背中に向かって小さくつぶやいた。それに気づいたのか、振り返ると、「知っ

てます?この地球上には強力なパワースポットがあることを?」と言った。

「さあ」体格のいい男性は構わず、そわそわとウェイターを探した。


             


 「今まで3つ、世界のパワースポットをめぐりました。アリゾナのセドナ、フラ

ンスのルルド、そしてハワイ島のここです」「はあ~」体格のいい男性はウェイタ

ーに手を挙げた。「僕のコーヒーはまだかね?」「お先にお持ちしてもよろしゅう

ございますか?」男性は、「ええ、ああ」とちょっとためらってから、「まあ」

と小声で言った後、「あとでいい」としぶしぶ言った。


            


 細面の男性は「ここが本当のパワースポットであればですね、ここからあのラン

のプールに飛び込んでも、助かるということではないかと思っているんですがね」

と言った。「まさか、そんなことあるわけないじゃないですか!」体格のいい男性

はぐるっと椅子をバルコニーに向けた。「それじゃあ、パワースポットとは実際に

どんな意味があるんでしょうかね?」体格のいい男性はそれには答えず、「ああ、

来ました、来ました。やっとね、その60ccがね」と目をきらりと光らせた。


 「いろんな人生の局面でね、パワースポットと言われる場所をめぐって来たんで

つまり、選択を余儀なくされる局面で、です。どちらを選べば人生は好転す

るのだろうとね。しかし、今回は『意義ある選択』がどうしてもできなかったので

す。でもやっと帰国できそうな気がしました。あなたのおっしゃる、その無意味で

も「中間」をとるということですよ。そこに何も意味がなくてもね。それこそ私が

探していた答えだったようです




  
                
              


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
   リサコラムは先週から
土曜日の更新に変更させていただいております。

   ハレクラニの有名なランのプールでどのくらいのゲストを
  世界中から引き寄せたでしょう。
  セドナも、ハワイ島ももちろんパワースポットかもしれませんが、
  私はそのランのプールこそ、パワースポットではないかと
  そんな感じを持っています。



  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
             


p.s.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
    英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.2
    下は日本語版です。
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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