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リサコラム
連載607回
      本日のオードブル

愛おしいひとびと

第9話


「待合室」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ミルクティ
とホワイトの
ストライプの
絨毯の約8畳ほどの
クリニックはクール!
女優の控え室のように、
ドアの前にブルーグリーンの
シルクのカーテンが掛かっている
4つの診察室に4人の女医先生がいます。
奥の柱の壁には
素敵な街並が
カラフルに
描かれて
います。
その壁は
とてもとても
インテリジェントな壁のようです。
まあ、人間ほどではありませんが。




 







        

第9話 「待合室」



 こんにちは。ようこそ、当クリックへ。初夏の日差しがだんだんと強さを増

すこの頃ですね。現在の気温は、26度の夏日です。」


            


 「あっ、ええと」待合室に入って来た壁村ミミは部屋の中をキョロキョロと

見渡した。そして数秒後、やっと事情が呑み込めた。


 「ああ、なるほど、ロボットさんですね。ええと、受付はこちらでよろしい

でしょうか?」壁村ミミはそう言いながらも相手はどこにいるのかわからな

かった。


 「はい。こちらで結構でございます。そして、私はあなた様の正面の壁にお

ります。まあ、壁に耳ありと申しますように、私も結構いい耳を持っており

まして、最近は『かべみ』と愛称で呼んでいただいております」壁村ミミは数

回うなづくと正面の派手なアートのような壁を見つめた。


            


 「壁にいらっしゃるのですね。なるほど、わかりました」壁村ミミが答え

ると、「それでは早速ですが、本日は診察をご希望でしょうか?それとも、」

とよどみのないクリアな言葉でロボットかべみは質問をした。


            


 「はい。面接に伺いました、壁村ミミと申します」「壁村さまですね。お待

ち申し上げておりました。それではまず、ちょっと人間テストをさせていただ

きます。正面の壁をご覧ください。何が見えますでしょうか?」ロボットの

かべみはそう言うと静かになった。「ええと、何が見えるかと言われても、壁

ですが、」ミミはじっと立ったまま戸惑った表情を見せた。


            


 「よろしければ、『かべみ』とでも呼んでいただければ、大変うれしく存

じます」ロボットかべみは少しはにかんだ声を出した。「ああ、かべみちゃん

ですか?君ですか?」「いえ、性別はございません」「ああ、今はそうです

ね、区別してはいけないのよね。わかりました。ええ、と、これはアートで

すね。どこかの街並かしら?でもずいぶんと賑やかな色ですね」「そうです。

正解です。それでは恐れ入りますが、街並をもう少し詳しくお願いできます

か?」ロボットかべみのよどみなく、クリアな声はミミには少し恐怖感を帯び

て聞こえた。


            


 「ええと、いろいろな色で塗られた壁の家が並んでいますね。朱赤、黄緑、

黄色、群青、紺、橙、こげ茶、水色、黄緑、空色、黄色、」「はい。結構でご

ざいます。しかし、最後の黄色は3つ目ですでに挙げられましたので、重複し

ております」かべみはそう言った後で、「お言葉を返すようですが」と遠慮気

味に付け加えた。


            


 「すごい、すごいですね。ほんとに人間みたい。いや、人間以上でしょう

か?」ミミは明るい声で笑った。


 「それでは、どうぞ、おかけください。正面のオールドローズのソファへ」

「ありがとうございます。やっと人間、合格ですね」ミミは正面の壁の前に二

つ並んだオールドローズ色の右の一人掛けソファに腰かけた。


            


 「それではまず、簡単なアンケートにお答えいただけますか?右手のサイド

テーブルの上に問診票がございます」ミミはサイドテーブルの上を見た。「え

え~と、もしかして、このタブレット?」「はいそうです」「なるほど~

ええと、」ミミは備え付けのペンで入力を始めた。3分ほど経った頃、ミミは

ちいさくあくびをした。


            


 「何かご不明な点がございますか?」とロボットかべみは目ざとく尋ねた。

ミミはそっとハンカチを出して涙をふくと、「いえ」とだけ答えたが、すぐに

またあくびをした。「ちょっとしたアンケートでございますので、あまり気負

わずご記入いただければ結構でございます」「はい、はい。そういたします」

ミミがそう言うと、ロボットかべみはすぐに「『はい』は一回にしないさい

と先生からもよく注意を受けます」と言った。「ほんと、そうですね。ロボッ

トに注意されちゃいました!はい。心得ました。気をつけます」「恐縮でござ

います」ロボットのかべみが穏やかな口調で応じた。


            


 それからさらに3分ほど経って、ロボットは「送信ボタンがまだ押されてい

ないようです」と言った。「ああ、これですね、すみません、忘れておりま

した」ミミは送信ボタンに触れた。「ありがとうございます。それでは、先生

がお呼びになられますので、そうしたら指示されたカーテンの中のお部屋に入

っていただけますか?」ミミは少し不安げに首を傾けると、恐る恐る尋ねた。

「あの、いえ、その、念のためですが、先生は人間ですよね?」

「はい。人間です」「ああ、ですよよね、ははは」ミミはやっとほっと一息つ

いて待合室を見渡した。


            


 このクリニックの待合室はロボットかべみのいる壁を中心に左右2つずつ部

屋があるようで、その入り口にはそれぞれ同じ色のカーテンが掛かっている。

プルシャンブルーとでも言うのか、青い絵具に緑の絵具を混ぜたような色合い

の光沢のある鮮やかな色で、その奥には、その同じ青を水で溶いたようなレー

スカーテンが美しい濃淡を波打たせながら下がっている。ミミにはクリニック

と言うより、アート教室とでもいうような感じに思えた。


            


 4つのカーテンの内、どこから先生は自分の名前を呼ぶのだろうか?ミミは

振り向いてキョロキョロしたが、すぐに、かべみに気付いて、またじっと姿勢

を正した。


 「壁村ミミさん、正面左のカーテンからどうぞ」女性の声が、正面の壁の違

う方向から8畳ほどの待合室に響いた。


            


 「はっ、はい」ミミはすっと立ち上がった。すると、壁から拍手をするよう

な音が聞こえてきた。


 「おめでとうございます。合格でございます」かべみの声だった。「えっ?

今から面接ではないんですか?」ミミはぎょっとした表情で小さく叫んだ。

「早さを優先する、当クリニックでは待合室の中で面接は終了いたします。

よって、壁村さんの結果は合格です」


            


 「合格?採用と言うことですか?」「はい。実は、ロボットの私が合否判定

をしますため先生はその合否に関して承認をなさるだけです。まあ、お互い、

人間同士は恨まれこなしということですね」壁村ミミがあっけにとられている

と、よく耳にしたことのあるチャイムの音が壁から鳴り始めた。


            


 「それでは、私はお昼休みに入ります」かべみの言葉とともに、キンコン

カ~ンコ~ンという音もフェードアウトした




   




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
  
  ロボットに仕事を奪われる反面、
  人間関係のいろいろを
  替わりに処理する役目をもしかしたら
  担うようになるのではないかと
  そんなことを考えています。
 


  「もの、こと、ほん」は下の写真から、
           
            


p.s.2
   
 E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   
 英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    
E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
  
 どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。






シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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