"あの、カーテンは窓にかけるものじゃないんですけど...”
窓にかけなきゃどこにかけるの?
それは、部屋にかけるものなのです。
もちろん窓のあるところにかけてもいいのですが、窓じゃなくてもかけていいし、
好きな壁にかけてもてもいい。無機質な白いビニールクロスの壁ばかりが目立
っていて、こじんまりした小さい窓しかない部屋なら、壁を窓に見立てて、両サ
イドに芸術的なダミーカーテンをかけてもよいのです。
私は、横長の低い腰高窓のあるところに、大きなカーテンを4分割してかけて
いるので、まるで、パリのプチホテルのように、スリムで、縦長のかっこいい窓が
4つあるように見えます。本当は、ごくふつうのかっこわるい低いサッシ窓が2つ
つながっているだけなのです。カーテンは窓を覆うものでは決してありません。
では、カーテンとはそこに住む人に、心地よく美しく安らぎのある空間にするも
の?もちろんそうです。でも、あくまでも窓を利用しながら、思いのままの情景を
部屋の中に作り出すための魔法の道具でもあるのです。
「窓のサッシのサイズに合わせてそのとおりにカーテンをかける。」
それだけではあまりにももったいないと思います。
カーテンのショウルームに行って、何のイメージもなく、窓の大きさだけを販売
員に伝えて、「見積もりして。」という方も多いのですが、それは、カーテンとは
窓にかけるものでしかないと思っているからでしょう。たくさんの同じような吊り
サンプルから、色、柄だけを見てこれがいい、あれがいいと選ぶ方多いでしょ
う。そして予算だけでカーテンを決める風潮も悲しいかな現実のようです。
幸いにも美しい景色が一望できる部屋をお持ちなら、それがどんなインテリア
よりもインテリアになる絵であれば、カーテンをかける必要もないでしょう。
その反対に、美しいとはいえない日本の都市の町並や、隣の高いビルの壁を
景色とするお部屋なら、カーテンでヨーロッパの美しい町並みや、海外の美いリ
ゾートの情景を作り出す遊びもできます。
“カーテンとは、好きな絵画をかけて、楽しむ気持ちと同じ。”
であると考えれば、カーテンを選ぶのがずっとわくわく、楽しくなりませんか?
そして、時々部屋の絵を掛け替えたり、新しい絵に掛け替えたりするように、
カーテンもたまには変えてみる。すると新しい景色が自分の部屋にやってきま
す。今月は、ヨットハーバーを望むモナコのホテル、来月はタヒチのリゾートな
んていうのも不可能ではないのです。 日本の、特に都市の町並みはヨーロッ
パの統制の取れた美しい景色とは言えず、いろんな色や、看板が氾濫し、建
物の色もまちまち。決して美しい町並みとはいえないところが多いです。だから
こそ、カーテンとは、部屋の風景を自在に変えることもできる“魔法のカーテン”
であるべきだと思うのです。
カーテンはまた、お化粧や服と一緒ともいえます。今はメイクの技術がすごく進
んでいて、目なんかアイメークで、2倍か3倍にはなります。ヒップアップもバスト
アップも足長にも、5kgはスリムにも見せられる服の着こなしもあります。カー
テンも、メイクや欠点カバーの服と同じ。平凡なサッシ窓をスリムで美しいパリの
ヴァンドーム広場を望む、ホテルRITZ (リッツ)の窓辺に見せるため技もありま
す。アイメーク、ボディーメイクの感覚で窓や、部屋のつくりの欠点をカバーして
すっきり美しい部屋に見せることもカーテンの役目です。
残念なことに、一般の日本の家屋の間取りも窓の形状もサイズも、インテリア
を楽しむ人たちのためには、都合よくはできていません。だからこそ、日本のカ
ーテンやさんの役目は大きいし、腕の見せ所でもあります。
平凡な日本の家屋をどうにかしてかっこよく見せようと、私も努力の日々が続
きます。
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また、来週の金曜日にお会いしましょう。
木村里紗子 |
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