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リサコラム
本日のオードブル

第19回

テーブルクロースは、

真白きに限る


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
趣味は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン
.
  「テーブルクロースに、撥水加工したのは誰だ?」
 
       「旦那様、今はそれしかございませんのよ。」
                

 

       


テーブルクロースは、真白きに限る                     



  

 「お好きな作家は?」「愛読書は?」活字離れの今日、初対面でそんな

会話から始まることは皆無でしょう。でも、「何色が好き?」と聞かれたら

すかさず私は「白」と答えます。ラベンダーもチョコレートもエメラルドブル

ーも、ミルクティもアイボリーも黒も、もちろん好きです。たまに行く豆腐専

門店のお昼ご飯のデザートが、とうふ、抹茶、桜、ゆずの豆腐アイスクリー

ムから選んでくださいといわれるとき、迷った挙句いつも”とうふ”と答えて

しまいます。それはきっとモカも、メロンもストロベリーも、クッキー&クリー

ムもあるけど、やっぱりバニラアイスがいちばんおいしかったりするのと同じ

ことでしょう。飛躍しているようですが、ベッドリネンもタオルもパジャマも、

体に直接触れるものは、やはり最後は、肌触り、そして “白”という色に

帰するのではないかと思うのです。白は色の原点で終着点だと思ってい

ます。


 “ベッドリネン”なんて呼び名も15,6年前は“ELLDECO”なんかの先端

の雑誌の中でのみ使われる言葉でしたし、コンフォーターケースなんて言

葉でお客様に説明してもまったく通じなかった当時でした。そのころから

ベッドリネン好きな私は手あたり次第にベッドリネン、ベッドスプレッドを買い

オーダーし続けていました。今はなくなってしまったブランドもたくさんあり

ます。NICOLE(ニコル)、DESCAMPS(デキャン)、Marie Claire(マ

リ・クレール)、Christian Dior(クリスチャン・ディオール)、Junko Kos

hino(ジュンコ・コシノ)など。綺麗、かわいい、シック、かっこいいと思うと、

買わずにはいられないのです。靴は5、6足しか持っていないくせに、ベッ

ドリネンは100枚を裕に超えるコレクション。スタッフや身内からもちょっと

変人扱いです。                                 


 こんな風にベッドリネンが大好きで、特に白い布には特別な思い入れを

するようになったのには理由があります。それは、“白”の原風景を見るよ

うなこんな文章が、私を惹きつけて止まないからなのです。



 「模様の織り出された厚い糊の硬(こわ)い卓布(テーブルクロース)が美しく

かつ清らかに電燈の光を射返していた。先生のうちで飯をくうと、きっとこ

の西洋料理店に見るような白いリンネルの上に、箸や茶碗が置かれた。

そうしてそれが必ず洗濯したての真っ白なものに限られていた」「カラやカ

フスと同じ事さ。汚れたものを用いる位なら、一層(いっそ)始から色の着

いたものを使うが好い。白ければ純白でなくっちゃ」
 ......          


 これは主人公”私”の独白で綴られる、知らない人はいない夏目漱石

の「こころ」です。読見返すたびになんとすてきな文章だろうと震えるよう

な感動を覚えます。しかし、約100年も前に書かれた文章です。洗濯機

も掃除機も、スチームアイロンも、もちろんエアコンもない時代に、真っ白

い糊のついた、ジャガードのテーブルクロスで自宅で食事をする光景が存

在するのです。24時間営業のコンビニがあり、携帯電話にパソコンがあっ

て、暑くもなく、寒くもない生活を簡単に送れるというのに、いったいいつか

ら、私たちはこんなにも怠け者になってしまったのだろうと、「こころ」を読

むと身につまされる思いです。


 私が好きな言葉
端正という原風景は、常にこの夏目漱石の小説に

特に「こころ」にあるのです。だからって、「好きな作家は夏目漱石です。

『こころ』が愛読書です」なんて、今の中学生も答えないようなことを言う

のは、とても恥ずかしくて言えたものではありません。こんな読み方を、ど

んな解説書も、学校の授業も教えてくれないからです。だからいい大人

が人前では漱石の「こころ」は、読めないのです。



           



 “テーブルクロースは真白きに限る”、この言葉を胸に、インテリアも生

活スタイルも、今の便利すぎる、だらけた生活スタイルに渇を入れるため

に、すでに古典の域に達している小説を読んで、昔の人たちの端正な生

活に思いをはせてみるのも、時にはいいものですね。

                    

また、来週の金曜日、お会いしましょう。 

木村里紗子 Risaco

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