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リサコラム
本日のオードブル

第42回

MOTTAINAI


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン


   

   「どれどれ、う~ン、おなかの脂肪も、Too Much!」

 

       


MOTTAINAI



 バンコクには、チャオプラヤ川という有名な大河が流れています。その川の

ほとりには5つ星クラスのホテルがひしめく一帯が続きます。その中の一軒

“ジ・オリエンタル・バンコク”には、川沿いに作られた有名なレストランが2つ

あります。1つは、ホテルの対岸に位置するタイ料理の“サラ・リム・ナム”。

ホテルからは、船で渡ります。そして、もうひとつは、コロニアルな美しい“リバー

サイドテラス”レストランです。そのゴージャスなバイキングディナーで有名なの

です。日が暮れるころにオープンするそのレストランには“スマートカジュアル”

というドレスコードがあります。女性は、背中の開いたドレスに優雅なストールを

羽織り、男性はノーネクタイにジャケットを着てリゾートのディナーの装いです。


テラスレストランの中央はオードブルコーナー。新鮮そうな数々の刺身たちは

巨大な氷の山にうずたかく美しく盛られ、野菜のサラダは芸術品のようです。フ

レンチあり、チャイニーズあり、タイキジュイジーヌあり、数々の鮮魚のグリル、ス

チーム、フライあり。北京ダックあり点心あり、ヌードルあり。その種類の多さと量

でこれ以上すごいバイキングレストランは、きっと日本ではお目にかかれないだ

ろうし、世界でも屈指かもしれません。さらに、別腹を刺激するデザート群。ビ

ーチリゾートの甘い香りを運ぶフルーツ、アイスクリーム、おびただしい数のケー

キ列をなして、その美しさを競っているかのようです。一角にあるテントの下で

は、タイの伝統的なたこ焼きのような、“おやき”が甘く香ばしい香りを放ってい

ます。そんな中で世界中からやってきたツーリストや、地元の名士のような人

々が、それぞれにオリジナルプレートをかかえては、テーブルに運び、ワインや

シャンペンとともにリバーサイドの晩餐を歓談とともに楽しみます。
          


 熱帯のシティリゾートのその光景は、どろっとした甘く香ばしい濃厚な匂いと、

世界各地からやってきた香水の混沌とした香りに満ち満ちてゆき、時折、活気

に満ちたその喧騒を沈めるかのように、川面を渡る風は、ひんやりした空気を

運んできます。夜が更けるとともに、それぞれのテーブルは華やぎに満ち、そ

れはきらびやかな香気を昇華させているようです。人々のおなかもかなりフル

になったころ、今度はデザートタイムです。テーブルで、その巨大な食べ物の

山をぼんやり見ていた私の視界に大柄な白人男性が入ってきました. “Too

 much!too much!”彼はそう叫びながら、巨大なアイスクリームの缶から

シャベルで山盛りのアイスクリームの丘を築きます。丘は別の色のアイスクリー

ムでさらに高くなり、今にも土砂崩れを起こしそうな高さにまで到達しました。 

「すごいわ、満腹なのに、食べすぎって、いいながら、まだあのデザートを平ら

げるのかしら?」私はぞっとして自分が瞬間に何キロも太ってしまったような錯

覚に囚われました。それと同時に一気に食欲を失い、それは、目の前の食べ

物への嫌悪感に変わりました。人は、空腹の時には、よだれが出るほどおいし

そうに感じられるのに、満腹になると、それを見たくもなくなるものです。そして1

時間前までは、目の前に広がる世界中のすばらしい料理が芸術品に見えてい

たのに、目を背けたくなる景色に変わるものです。席を立ちながら、「あの、残

った料理はどうなるだろう?ちゃんと食べる人がいるのかな?」その料理の行く

末をあれこれ想像しながら、おなかは満たされても、言い表せない不安で、や

るせない気分になり、部屋に戻りました。バンコクは、多くの大都会によくあるよ

うに、貧富の差は非常に激しく、ホテルの外では今日の食べ物にも苦労してい

る人たちが大勢います。なのに、「少数のToo Muchな人々が毎日、Too 

Muchも続けているなんて、こんなに“もったいない”ことがあるんだろうか?」

以来、私はバイキングレストランを見かけると、10年前のあの“Too Much

”なアイスクリームの山が鮮明に思い出され足を踏み入れられなくなりました。



 “MOTTAINAI”という言葉を世界語にしたのは、ケニアの環境副大臣で20

04年ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏。エコロジストの先頭を切

る彼女は、日本人の美徳である“もったいない”という精神が、3R(Reduce,

Reuse,Recycle)を、ひとことで表現した言葉だと、感銘を受け、2年前から

それを世界に広めたいと運動を始めました。国連会議の場で、マータイ氏の号

令の元、各国の大使たちが“MOTTAINAI”を連呼していたシーンをニュース

で見たとき、衝撃を受けました。“消費削減、再利用、再生利用”、これがつま

りは“もったいない”精神からきているものだと感じた彼女のおかげで、“もったい

ない”は、“MOTTAINAI”になったのです。
                         


 “残すのがもったいないから、食べてしまう”でも食べ過ぎた食物は、もったい

ないからと体は飢餓の時に供えて、“脂肪”という名の栄養源としてたくわえる。

蓄えすぎたら、それを人は、“もったいなく”も、減らす努力をする。“もったいな

い”が、“もったいない”を産んでいる矛盾があります。また、「新しいおふとん、

気持ちよさそうだけど、まだ今のでも使えるから、もったいないから捨てられなく

て、また来年考えよう」と、80代のお客さまに言われることがあります。それは

戦争を経験し、もののない時代に苦労して生き抜いてきた、“もったいない”精

神のなせる言葉だと理解しています。また60代の方に「退職したから、寝室を

きれいにして、天蓋ベッドで寝たいけど、もう先が長くないから、“もったいない”

かな」、といわれることがあります。でも、これから人生の第2の黄金期迎えると

いうのに、長年働いてきた彼女自身が、一番“もったいなくはないのかな?”と

考えることもあります。何がいったい“もったいなく”て、何が“もったいなくない”

のか、と考え続けると、ほんとうに矛盾という壁が立ちはだかります。
  

私にとっての“もったいない”運動は、汚れてしまった雑巾は、ベランダ用にし

て、汚れたまま、洗わずそのまま捨てる。古くなって気持ちよくないベッドリネン

は使った後に洗わず捨てるくらいです。つまり、

 1.今の自分に最良の物を選択する

 2.それを大事にケアして丁寧に使う 

 3.ストレスによる食べすぎを防ぎ、なるべく少ない量をおいしく食べる、

そのくらいのものです。日々こころ穏やかに丁寧に暮らすことが、ストレスによる

“もったいないもの”を生産せず、他の人のストレスをも軽減し、“MOTTAINAI

”に繋がるのではないか、という私なりの今出せる、結論なのです。         





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木村里紗子 Risaco

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