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リサコラム
連載514回
      本日のオードブル
習慣

第4話

「守られた習慣」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



ロッジAの
吹き抜けの
玄関には天井から
シャンデリアを下げます。
メゾネット式で2階部分は
天蓋付きのロマンチックな寝室です。
バックカーテンはオリジナル刺繍です。
天窓からは星を明りに読書ができます。
青空で目覚めることもできます。
電動ロールスクリーン
付きですので
ご心配なく
ミニキッチン
星空の露天風呂
それと他にはええと、
夏はセミのBGM付きです。


 
      
  





       


第4話
「守られた習慣」


「ゼミでね、インテリアプランをやっているんだけど、別荘のね」蘭子は隣に

座った同級生のユリ子に言った。


               


 真新しい野外音楽堂の木の椅子に座った二人の後ろではさっきからセミがジンジ

ンとBGMを奏でているために、二人の会話はセミの休みの間しか交わせない状況に

なっていた。運悪く、蘭子のその言葉はあとのほうがかき消されてしまった。


               


 聞いていたユリ子は「ふうん?」と言う感じで首を傾げると、演奏の中休みを待

って、「セミがどうしたの?」と聞き返した。蘭子はふふふと笑うと、「セミがう

るさいわね」と言った。


               


 二人は中学の同窓会会場である出来立ての野外音楽堂の東の端の中間点あたりの

木のベンチに腰掛けていた。他の30数人もそれぞれ2、3人から5,6人の男女

別のかたまりとなって話が弾んではセミに中断されを繰り返しているはずだった。


               


 30年ぶりに中学校の同窓会で顔を合わせた蘭子とユリ子は中学の頃は一緒に通

学し、同じ放課後のテニス部でダブルスも組んだこともあり、週末には同じ学習塾

にまで通った同学年の仲のいい友人であった。しかし、友人とはいえ、4月生まれ

で長女の蘭子は3月生まれで末っ子のユリ子をいつも年の離れた妹のように世話を

焼いた。部活が終われば、近くの文具店兼駄菓子屋の店先でいつも一緒に当たりく

じ付きのアイスを食べた。そして蘭子はよく当たり、ユリ子はちっとも当たらなか

った。蘭子が当たれば、必ずユリ子に当たりくじをあげ、自分はまたアイスを買っ

て一緒に食べた。そうして二人はそれぞれ進学とともにその故郷を離れた。


               


 そして20年後、蘭子は大学職員になった。その二人の母校が廃校となることを

帰省した折りに聞きつけた蘭子はそこに野外音楽堂を作ったらどうかと地元の議員

に話を持ち掛けた。それから帰省の度に幾度となく町の会合にも出席し、ほどなく

蘭子の案は実現されることになった。蘭子は卒業生に地道に寄付を募り、ふるさと

納税という便利な資金集めの手助けもあって足掛け6年、やっと、学校の跡地に野

外音楽堂が建てられることになった。その祝賀行事と初演は今年のこのお盆の時期

に決定した。


  そしてそのチャンスに乗じてまた寄付を募ろうと同窓会が盛んに行われた。そ

うして故郷に帰って来た元中学生たちでちょっとした帰省ラッシュが起きていた。


               


 「こんなにいい場所にいたなんて、その頃は全く思いもしなかったわ。今こうし

て見るとほんとうにいい場所よね。都会からの交通の便もそう悪くはないし、それ

に何より空気がおいしいわ~。いや、前からこんなにおいしかったのよね~」ユリ

子は膝を枕に頬杖をついて眼下に広がる景色を眺めた。山の中腹から眺めると山林

の間に田んぼと畑と集落が点在する。その懐かしい光景はすでに故郷ではないユリ

子の目にはとても美しい田園風景に映った。この町にとって、ユリ子はもう観光客

と同じ立場になっていた。それというのも高校入学とともに、家族共々都会の街に

引っ越し、そこで就職、結婚し、子供を育て、とうとう帰る場所を失ってしまった

からだった。しかし当然のことながらここでもここなりの息苦しさもあるはずだけ

れど、それでもユリ子はまたこの場所に自分の居場所を持ちたいと思った。


               


 「素敵な場所になったわよね、野外音楽堂ができて。ここに自分の別荘でもあれ

ばね~」そこで蘭子は「それがね」と切り出した。セミもようやく鳴きつかれたよ

うで、音楽堂の回りはやっと静かになっていた。


               


 「音楽堂のすぐ裏手にね、週末Uターンを狙って町がロッジを建てることになっ

たのよ」蘭子が少し興奮気味に早口でしゃべり始めると少し遅れて「へ~、そうな

の~、それはすごい!それも蘭子のアイデア?そうよね」とユリ子は蘭子の8割ほ

どのテンポで反応した。ユリ子は中学生の自分に戻ったように感じ始め、蘭子は姉

のような気分で調子づいていた。


               


 「そのために伐採される木材も最大限に利用してね、現在、ロッジ5棟が予定さ

れているのよ。5棟はそれぞれ、すってきな内装込みで販売されるのよ。私とゼミ

の学生も少しかかわっているのよ、まあ、ボランティアのようなものだけど。学生

たちにとっては絶好の機会だし、若い感性でそれぞれに企画に参加しているからき

っとおもしろいものができると思うわよ。それと先行してレストランも開業するか

ら、これは見逃せない物件になるわよ~」「なるほどね~」ユリ子の顔はほころん

でいた。


               


 蘭子がさらに「目指してるのはね、過疎の町から芸術の町、軽井沢のような別荘

地ってところ。ちょっと理想が高すぎるかもしれないけどね」と言いかけたところ

で、またセミが合唱を始めたのでしばらく二人の会話は途切れ、そして止むとそれ

を待っていたようにユリ子が口を開いた。


               


 「そのロッジ、私も買えるのかしら?」蘭子はちょっと驚いた顔をしたものの、

すぐにそれは満開のシャクヤクを思わせる笑顔に変化した。「もちろんよ!ただ、

すでに口コミで伝わってしまって、投資目的もあって、人気が高まっちゃってね、

だから、地元に実家がある人と、以前住んだことのある人は10倍の倍率を得て抽

選に参加できるのよ」


               


 それを聞いてユリ子の顔はさっと赤らみ、そして次第に白くなった。「私、知っ

ての通り、当たりくじに縁のない人間よ~。10倍でも無理だわ、きっと。だって

駄菓子屋のアイスだって当たったことない人間なんだからね~」ユリ子は大きなた

め息をついた。


               


 「10倍よ。絶対当たるって!二人で当たろうよ!」蘭子は大声を張り上げると、

セミはさっと演奏をやめた。


               


 それから夏が終わり、涼しさが肌寒さに変わる頃、ロッジの抽選が行われた。


               


 ユリ子は落選し、蘭子は当選した。蘭子は間もなく辞退し、その当たりくじを

当然のようにユリ子に譲った。



    



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.2
   子供の頃、私ははとても人間関係におっくうでした。
   今はその正反対の環境にある仕事をして、仕事と孤独が好きです。
   世話好きの方はとても尊敬いたします。




 「もの、こと、ほん」は下の写真から。

            

p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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