MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載534回
      本日のオードブル

かつて

第10話


「僕のホリスティック
リゾート」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



ベッドに
横になっても
デッキチェアに
ごろんと寝転んでも
感じるものは、ただ、
さらさら、ざわざわという
竹ぼうきがかきならす音だけ。
その様子が水面に写り込んで幻想的な
景色は心の中に幽玄な世界を作り出します。
ただ、
ノックの音で遮られなければ。

 
      
  





       


第10話
 「僕のホリスティックリゾート」

ノックの音がした。最初はひとつ。次は2つ。3回目は4つ。


 その3秒ほどあとKazuは「どうぞ」と言うと、椅子をくるっと樫の木のドアの方に向けてから

立ち上った。


               


 入って来た常連らしいクライアントはKazuに軽く会釈をすると大きく開かれた窓の方を向いて

黙って立った。「どうぞ」Kazuはにこやかにそう言うと、横のひじ掛け椅子をクライアントの

Masa
に勧めた。


               


 「いえ、けっこうです。今日は立っていたい気分なものですから」

 「そうですか。Masaさんのお好きにどうぞ。しかしお久しぶりですが、何かありましたか?」

Kazu
Masaの背中に言った。


 「まあ、いつものことですが、新たなリゾートのオープンを控えて、ちょっと気持ちを落ち着か

せるために、先生のところに寄ってみました」

 「なるほど。ご繁盛のようですね。お忙しでしょう。お噂はかねがね


               


 「ええ。まあ、順調ではありますがね。なんかこう、大事な時の前には先生のお顔を見たくな

るんですよね」

 「それはありがたいことです。お顔の色もよくて、お元気そうに見えますよ。私の助けなど必

要ですか?」


               


 「もちろんです。先生とは長いお付き合いですから。こんな時はぜひ、お目にかかりたくて」

Masaは静かに言うとKazuの方を向き直った。

 「気が向かれましたらお掛けくださいね」Kazuはソフトに椅子を勧め、Masaは会釈をすると

相変わらず立ったままカウンセリング室の窓から竹林を眺めた。


               


 「先生の方は、順調ですか?」「おかげさまで、口コミでクライアントさんも増えていますよ」

Masaの背中に向かって言った。

「実は前から伺いたかったのですが、どうしてこんな竹林の前に?」「竹林を望む場所をなぜオフ

ィスに選んだかという意味ですか?」「ええ」「それはですね、数年前まで毎年行っていたカンボ

ジアンのあるリゾートを彷彿とさせるのからなのです」


 「ほう、なるほど」Masaはまだじっと立ったままぽつりと言った。3mのガラスの壁で隔て

られた部屋の向こうは竹林のざわざわという音だけがかすかに部屋に響いてくる。


               


 「先生、私はバックパックで世界中のいろんな場所を訪れていた時期があるんです。いろんな

と言っても、リゾートと言われる場所です」「ほお、それは面白い。そんなお話は初めて伺いま

した」「ええ、そうですね。友人にもバックパックであちこち行ったやつがいましたが、僕の場

合は、リゾート専門でした。ちょっと変わっているかもしれませんがね」「どんな場所に行かれ

ました?」


 Masaは一呼吸おいてから「主にアジアですね」と言って、Kazuの反応を待ってから続けた。


               


 「民宿を泊まり歩き、お金が無くなるとホテルの住み込みで働いたこともあります。いろんな

ことがありましたが、面白かったですね」「なるほど、それが今のリゾート開発のお仕事につな

がったということですか?」「そうですね。簡単に言えば」「それで、今度はどんなリゾートを

オープンなさるのですか?」Kazuは聞いた後で、「もしもよろしければ」と付け加えた。


               


 「和の旅館をリゾートの中に昇華させたというと、横柄に感じますか?そんなリゾートです。

どう思われますか?」Masaはやはりじっと竹林を見ながら言った。


 「いいえ。横柄とは感じません。なんとなくですが、イメージはできますね~いい感じのね。う

ん、『和の旅館をリゾートの中に昇華させた』か、いいな~、しかし私はその道の素人ですから、

Masa
さんのアドバイスにはならないと思うのですが、私が先程申しましたリゾートは、私が初

めて経験したリゾートです。後にも先にもそれだけです。今のところは。だからその衝撃は大き

くて、驚くと同時に感動しまして、一度で気に入ってしまったのです。それからそのリゾートに

は年に1回滞在するようになりました。ほんの3泊ほどですがね、しかし、そこに行くとまるで

ずっと前からこの地に住んでいたような不思議な気分になりましてね。まず、1日がほんとうに長

い。こんなに長いとは思ったことがありませんでしたね。朝、竹林にやってくる鳥のさえずりで

目がさめて、天窓のスクリーンを開け、まだ薄暗い空を眺めながら空を仰ぐんです。まだ夢現

(うつつ)をさまよっていますから、どのくらいの時間が経ったのかもわからない状況です。

そんな中でだんだんと白くくぐもったような空になると、そこでやっと目が醒めて、大きな窓の

ブラインドを全開して竹林と対峙するのです。すると、大きな箒で空気を揺らすような音と言い

ますか、そんな竹林の鳴らす空気の流れを感じましたね。庭にはベージュのパラソルとデッキチ

ェアがふたつ並んでいまして、その横はスクエアなプールです。それを眺めながらぼうーと何を

考えるでもなく思っていると、何かこう、私のなかの結び目がほろりと外れる気がしましてね。

なんともいい感覚でしたね。そこに竹林の小道の木戸をノックする音がして、スタッフが目覚め

の飲み物をもって来るというわけです」


               


 「それはとても素敵なご体験ですね、先生」「ええ。ほんとうに。竹取物語の世界のような幽

玄な雰囲気でしたね。そこで毎日4、5回もスタッフがあれこれと何かを持って来たり、掃除を

しに来たりと世話を焼きに竹林の木戸からやって来るんです。最初は楽しかったのですがね、し

かし、だんだんとうるさく感じるようになりましてね、私は借り物のその空間を、自分の世界だ

と、変な話ですがね、感じるようになりましてね、それでノックは3回するようにと言ったので

す。彼らはノックしたはいいが、返事がないとマスターキーで開けてすぐに入ってくるんですよ

ね。それで、私はノックを3回するように取り決めをしましてね。それで返事がなければ遠慮し

てくれとね。つまり


               


 「最初はひとつ。次は2つ。3回目は4つ、ではありまませんか?僕がいつもやっているよう

にですよね」「ああ、そうです。しかし、Masaさん


 「ええ。まさかとは思われるでしょうけれど、先生が足しげく訪れておられた当時、僕もその

アマンサラのゲストリレーションズで働いていたのです。日本人ゲストをお迎えするためにね。

そんなゲストがいらっしゃっていることはもちろん知っておりました。それから日本に戻って来

て、先生のことをブログで知って、もしかして、あの時のゲストかもと。やはりそうでしたね。

今まで黙っていたのは、直接、先生の口から聞き出したかったのです。ゲストをもてなす上で、

それは私の信条ともいえるものですからね」


               


 「まさか、私がカウンセリングを受けていたとは、驚きですね」Kazuは笑ったが、内心はや

られたという心情をガラスに映るKazuの表情からMasaは読み取った。


               


 「今度のリゾートの方針がそれなのです。ほんとうはいいのかどうか不安だったもので、来て

みたのです。安心しました」MasaKazuのなんとも返事に窮した感覚を背中で感じながら、

「かつての先生の教訓が私にこの世界の魅力を教えてくれたのも同然なのです。ここはやっぱり

私のホリスティックリゾートです。ゲストへの過干渉はやめて正解ですね」と窓ガラスに写った

Kazuに言った。


    


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 星野リゾートの『星のや東京』のオープンに際してオーナーが
カウンセラーの元を訪れるという勝手な設定で書かせていただきました。
テレビの番組で、『星のや東京』では、ゲストが一度チェックインをしたら
要請がある以外は部屋に入らないと伺ったものですから。

アマンサラは素晴らしいリゾートです。
未だ訪れてはいませんが。


 「もの、こと、ほん」は下の写真から。

           
           

p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.