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リサコラム
連載577回
      本日のオードブル

彼女のアイデア


第7話


「劇的で面白いこと」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



部屋の
広さは約8畳
そこにツインベッドを
中央にナイトテーブを
置き、それぞれに好きな
アートを飾りました。
南西の窓の外は
鬱蒼とした、
イングリッシュ
ガーデンです。
白いベッド白いソファ白いカーテン
そして、反対の壁のオレンジと白の
ストライプの壁がとても新鮮でしょ?


 
      
  





        


第7話  「劇的で面白いこと」



 「何、読んでいるの?」女性は隣のソファの男性に尋ねた。


 男性は女性と並んで、ツインベッドの並ぶ方向を向いて一人掛けのソファに座っ

ている。その膝の上には文庫本とその下にはオレンジと白のストライプのクッショ

ンが載っている。女性は男性の方に身を乗り出した。


            


 「ああ、あれね。『グレートギャツビー』でしょ?」女性はそう言うと目をぐる

っと回した。


            


 「ふ~ん」男性は間をおいてゆっくり、かつ簡単に承諾してから、また膝の上の

本に目を落とした。「私は『セント・オブ・ウーマン』よ」


 男性は女性の方に首を傾けると、「ふ~ん?」と返事をした。それから、女性は

男性の方にソファの向きを向けて、「『ウォルドルフ・アストリア』ってホテル、

知ってるよね?ニューヨークの」と聞いた。男性はまた「ふ~ん?」とだけ

言った。「超高級な...」女性はキーワードを並べてみて、男性の反応を待った。

男性はまた「ふ~ん?」と言った後、また読んでいる本に目を落とした。


            


 「ほら、アルパチーノが主演した映画、ほら、あれ、退役軍人の、その撮影の舞

台よ、ゴージャスなホテルよ。ゴッドファーザーのアルパチーノよ」男性は本

のページをめくりながら、ちらっと女性の方を見たが、また「ふ~ん?」とだけ言

うとページに戻った。女性はあきらめてまた膝の上に置いた本に目をやった。


            


 日差しは雲で少し陰り始めた。「面白い?それ」女性は男性に尋ねた。

「ふ~ん」男性は答えた。「私、その本、嫌な気分がいっぱい詰まっている腸づめ

ソーセージって感じがしたわ。最初読んだときはね。2回目も、3回目もやっぱり

気分が悪くなったわ」女性は目をぐるっと回した。「私のこの本はね、『セント・

オブ・ウーマン』だけど、映画の方が断然面白いわね」男性はちらっと本から目を

外すと「ふ~ん」と答えた。「わからないと思うけど、ほんとそうよ」女性は膝の

上に本をパタンとひっくり返してから、ソファの肘の部分に体重をかけると男性の

方に身を乗り出した。


            


 「この映画で初めて知ったのよ。何をかって言うと、ゴージャスなホテルって面

白いことがいっぱいあるってことをね。スイートにはシルクのカーテンがあって、

ピンと伸びたシーツの大きなベッドがあって。でも、それだけじゃなくて、バトラ

ーがいて、彼らに無理難題をなんでも言いつけられるところってこと」女性は

目をぐるっと回した。「まあ、アルパチーノがはまり役だったからかもしれないけ

どね。日ごろはすごくつつましい貧乏暮らしをしてる退役軍人がね、若い学生の介

添え人を連れてファーストクラスでニューヨークに飛ぶのよ。そして、その最高級

のホテルのスイートに泊まるのよ。まあ、ありえないって感じもするけどね。そし

てミニバーの小瓶に文句をつけるところがなんかとってもカッコよくてね。『もっ

と大きいのを持って来い!』って言うのよ。いきなりゴージャスなホテルに泊まる

と、エキセントリックで偏屈な老退役軍人の顔から、散財をする常連ぽいゲストに

大変身するところがなんとも豪快っていうか、でも、そんなゴージャスなホテルに

泊まれるお金があるのなら、普段の生活をゴージャスにまではいかなくても、まあ

まあ、素敵にすればいいのにって、不思議に思った映画だったのよね。まあ、私に

とっての記念すべきゴージャスなホテルの入門編って感じの映画だったのよね。

映画の主題はぜんぜん、別のところにあるんだけどね….


             


 「ふ~ん」1分ほど間をおいてから、男性はちらっと女性のほうを見た。「わた

し、グレートギャツビーはよくわからない。前はわかろうとしたけど、今はだんだ

んわからなくなってきた。アメリカンドリームもわからないし、実感としてね。

それに今はアメリカンドリームなんてなくなっているらしいじゃない?だからよけ

い、人間の心理の絡み合いがわからないのよ。わかろうと思ったけどね、わからな

くちゃいけないような気がしてたけど、今はわかる必要もないような気がしてるの

とくに、この素敵な寝室を作ってからね」


            



 「ふ~ん」男性はやっと少しだけ笑った。

 「ねえ、そう思わない?わからないくてもいいんじゃない?」男性は返事に困っ

た風で「ふ~ん」と言うと、女性は黙り、そして沈黙がしばし二人の間に間を置い

た。


             


 南西向きの部屋に陰りが出て来た。「電気、つけようか」女性が立ってダウン

ライトをつけに行った。男性は入れ替わりに立ちあがり、伸びをしてから、「乾杯

しようか」と言った。「うん、そうね」女性は男性が寝室から出たあと、庭の生垣

越しに空を眺めた。


             


 「長い道のりだったけれど….」女性はひとりごとを言った。「やっとここまで

来たわね。まだグレートギャツビーもわからないけど、退役軍人の気持ちもわから

ないけど、ウォルドルフ・アストリアのスイートみたいな部屋にしたら、無口な夫

が自らシャンパンを部屋に持ってくるようになったことは事実」女性はくすっ

と笑った。


            


 「お待たせ」男性はトレーにグラスとシャンパンを乗せて戻って来た。男性が栓

を抜き、女性のグラスに慎重にシャンパンを注ぐ間、女性は、「つまり、小説より

実生活の方がもっと劇的で面白いってことよ。ねえ、そう思わない?」と言った。

「ふ~ん」男性はあいまいな返事をし、彼女は、「つまり、そういうことよ」と言

って、目をぐるっと回した。


            


 二人は15回目の結婚記念日の乾杯をした。


   


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
  ストーリーは常に架空ですが、
  リフォーム、新築、
  その前と後の劇的ビフォーアフターにまさる
  おもしろい小説はないと
  感じるようになりました。


  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
             


p.s.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
    英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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