MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
本日のオードブル

第25回

 ポスト・ハック・イアゴ、
プロクター・ハック



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
趣味は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン



 「これは、いったい何のカギなの?」

         「あなたが探していたカギ穴のカギかもね。」
                

 

       


 ポスト・ハック・イアゴ、プロクター・ハック



 「post hoc ergo,procter hoc、誰かその意味がわかるか?」大統領

は執務室で、そこにいるスタッフに問いかけます。「ここには27人の法律家が

いるのに、誰も解からないのか?」そしてたった1人、補佐官のレオがその意味

を言い当てます。大好きなドラマ、“ザ・ホワイトハウス”のワンシーンでした。

 “この後、これゆえに。(after therefor before)”と。ひとつの事象には必ず、

その前にそれが現れるべき何かが存在するというラテン語だそうです。


 “ポスト・ハック・イアゴ、プロクター・ハック”何度か繰り返しているうちに口を

ついて出てきます。つまりこうなりたいという結論から、今なすべきことが見えて

くるということです。大げさですが、未来をコントロールするカギ穴があることに気

づいた思いでした。あとは、そのカギ穴のカギをみつければよいわけでした。


 ある日、「木村さん、どうしてお化粧しないの?すればかわいいのに」と鈴木

保奈美さんそっくりの超美人なお客さまに聞かれたことがありました。「あまり、

かわいくなりたいとも思わないんです」。と簡単に答えてしまいました。彼女はま

だ疑問符がいっぱいのようでした。 しかし理由ははっきりしていました。私たち

のような接客業は、毎日いろんなオーダーが持ち込まれ、そして時には、お悩

みご相談だったりもするたくさんのお話を聞くこともあります。だから自分自身が

大きな海綿のようになって相手の気持ちをたっぷり吸い込める気持ちの余裕

がどうしても必要になります。どうしたら毎日大きな海綿になれるか?と考えた

ときに、ストレスゼロの状態の自分を毎朝作り出すしかないとある時自分なりに

悟りました。それを阻むものは見逃さずに、追求しようと思ったのです。それが

ひいては、ミスを防ぎ信頼を得て、満足を与えられるのではないかと。実は化

粧をしないというのは、カギ穴のカギだったからです。


 それはもう10年近く前、初めてシンガポールに旅行に行ったときのことです。

私は予約したホテルで、とても不満足な思いをし、たった6日間で、現地で3

回もホテルを変わりました。最後は、“ラッフルズ”でした。そのホテルは1887

年創業以来の輝かしい歴史、伝統と格式を持つ、シンガポールの顔とも言え

るホテルです。そのホテルがいいのはわかっていましたが、分不相応と思い、

敬遠してしまっていたのです。


 タクシーでラッフルズの正面玄関に着くと、大勢のスタッフが出迎えて名前で

呼びかけました。それからマネージャー、女性バトラー、日本人スタッフの3人

が、白い玉砂利を踏みしめて、美しい中庭を通り、部屋へと案内するあいだ、

女性バトラーは、満面の笑みを浮かべて、ちょっと意気消沈した私にやさしく

話しかけます。部屋でチエックインを済ませた後、彼女は自ら、ウエルカムシャ

ンペンを中庭側の大理石のテラスにあるテーブルに運んできました。「私たち

にできることは何でもおっしゃってください」と。前の2つのホテルでかなり嫌な

思いをした私は、この笑顔に救われた思いでした。それからチェックアウトまで

の1日半、彼女はいつも屈託のない笑顔を見せて、会うたびに、「ご滞在はい

かがですか?」と聞いてくるのです。美しいパームツリーの中庭に面したテラス

で日本の友人にハガキを書いていると、「もっとどうぞ」と言って、ラッフルズオリ

ジナルのポストカードを持ってきます。これほ格式あるホテルのチーフバトラー

をしているのに、彼女は実にノーメイクだったのです。

 それは接客業をする私に、いつかはノーメイクであんな笑顔を見せたいと

思わせたのです。


        


 実際、化粧をして、長くお客さまの話を聞いていると、油浮きしていないか?

化粧くずれしていないか?と気になります。暑い日に外に出かけるときは、汗

をかいてもハンカチやタオルで顔を拭くわけに行きません。早く帰ってシャワー

を浴びたいと思いはじめると、意識が自分の不快感に集中して親身になれな

い自分がいます。また、“せっかくきれいに化粧を落としてもまた、翌朝には化

粧を塗りこみ、また、落とす”そのストレスもあります。         



 顔を洗って化粧水もつけないでいるようになると、自然に顔から、油分、水分

が出てくるのか、しばらくするとまったくつっぱり感がなくなり、首と顔の皮膚の

差がなくなってきました。ノーメイクの顔でもいけるかな?と感じたのは、ある方

から、こういわれた時です。「お顔にすごく透明感があるけど、何をつけられて

いるの?」その方のお屋敷には、数百万円の絵やリトグラフがたくさん掛けられ

床にはやはり高価なペルシャじゅうたんが何枚も敷かれています。その彼女か

らそう、尋ねられたのです。私はうれしさのあまり、「いえ、実は洗いっぱなしで

化粧水さえつけてはいないのです。簡単なことなのですが、化粧をやめたら、

しなくてもなんだか見れる顔になってきました」。と答えました。もちろん非常に

びっくりされました。すべての方や、すべての職業の方にノーメイクがいいとはい

えませが、確実に私のストレスの1つはなくなりました。以来、お客さまの前で

顔の状態を気にすることなく自然に笑顔を作れるようになりました。夏は、豪

快にタオルで顔の汗をぬぐうことができるようになりました。そして化粧品にかけ

ていたお金はベッドリネンやタオル、パジャマ代になりました。
            


 女性バトラーのノーメイクの笑顔は、“すべてを優しく受け入れます。飾りのな

いほんとうのサービスをあなたに提供し、あなたとともに楽しみたい。”と言うメッ

セージに私は受け取りました。これが私の1つの改革の始まりでした。まさに、

“ポスト・イアゴ・ハック、プロクター・ハック“(この後、これゆえに)のカギ穴の1

つのカギだったのです。 






リサコラムに関する、ご意見、ご感想はこちらまで。→

 お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。必ずご返事いたします。

また、来週の金曜日、お会いしましょう。 

                     

木村里紗子 Risaco

* PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.