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リサコラム
本日のオードブル
第26回

 道楽者の条件


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン


        「いつ見ても、ホレボレする、ラインだぜ!」

    「われながら、優雅な曲線だわ。」

                

 

       


道楽者の条件




 薩摩治郎八(1901-1976)という人を知ったのはもうかれこれ10数年前。

フジテレビの“ワーズ・ワースの庭で”という番組でした。大人の粋な趣味人、道

楽者、その遊び方や人生を美しい詩的な映像とコメンテイターのトークでつづる

ユニークな番組でした。薩摩治郎八は、大正から昭和にかけての時代、19歳

からパリで過ごし、華やかな社交界で活躍した文化人でした。画家のパトロンと

なり、多くの芸術家を支援したことでも功績を残しています。そして驚くべきこと

に、今のお金で約600億円も使った真の道楽者だったそうです。月のお小遣

いが、なんと3,000万円。今の東京、神田駿河台には、かつて薩摩家の広大

な邸宅があったそうなのです。幕末に横浜で綿製品の輸入商となり、日本橋

に本店をおいた“薩摩商店”は、薩摩治郎八の祖父が一代で巨万の富を築き

上げたものでした。薩摩治郎八は、日本政府の要請で、私財を投じ、日本人

留学生や芸術家の宿泊施設、”パリ日本館”を建設します。この功績で彼は、

レジオン・ドヌール勲章を受けることになり、“東洋の貴公子”と呼ばれることと

なります。しかし、戦争の機運が近づく中で、実家の薩摩商店が倒産。彼は、

パリを後にし、浅草にたどり着きます。当時、踊り子だった利子さんと結婚し、

彼女の地元の徳島でその華やかで、波乱万丈な生涯を終えることとなります。



 パリを愛し、芸術を愛し、平和を愛し香水を愛した、そんな道楽者が昔の日

本にはいたのです。彼とともに、ヨーロッパ中を旅したのは、ルイ・ヴィトンの大き

なスーツケース。その留め金も緩んでいない、堅固なバッグには、愛用してい

た、ニュイ・ド・ノエル(NUIT DE NOEL)の甘く切ないかすかな香りが残って

いるそうです。ルイ・ヴィトンのバッグはそんな昔から、道楽者の美しき道具で、

そういう人たちに愛されたバッグだったそうなのです。


 実は、私の出た大学は、卒論は必須ではなく、ほとんどの学生は、卒論を選

択しませんでした。かねてから、好きで研究していた“19世紀のイギリスビクトリ

ア朝文化とコナン・ドイル”を書きたくて、担当教授にそう伝えると、「それは、イ

ギリス人だろう。君はフランス語学科だよね」「もちろんですとも。ジョルジュ・サ

ンド(男装癖のあった、19世紀のフランス人女流作家)との接点を見つけまし

たから..」とやっと許しを得て、1年がかりでやっと締め切りに間に合って書き

上げた時、卒論にエントリーしていた学生は学科の中で、私一人でした。当然

です。たったの4単位でしかなかったからです。また原稿用紙100枚分ほどで

いいのに、300枚も書いてしまいました。タイトルは、“反逆者たちの魅力学”。

読んだ先生は「読みやすくておもしろい。しかし君のは、論文じゃない。エッセ

イだ。でも、2人分以上書いているから許そう」と。だから、昨年、「コラムを書

いて」といわれたときは、そうか、あんな風に書けばいいんだわ、とすぐに納得し

ました。今、目の前にある卒論というものに熱中していた当時、損得考えない

道楽者になっていたのだと思います。


 道楽と言えば、着道楽、食い道楽、旅道楽、車道楽、つり道楽、今までそん

な道楽者が道楽といわれていました。考えてみれば、サラリーマンの私も道楽

者でした。寝道楽、寝室道楽、掃除道楽、アイロン道楽、ベッドリネン道楽、パ

ジャマ道楽、タオル道楽、本道楽、ホテル道楽、などなど。
でも、最近もうひと

つ、道楽を見つけました。“リサコラム”という道楽です。


 この“道楽者”という言葉には、優雅なデカダンがありますが、でもそれはお

金もちでなくてもその条件さえ満たせば、実は、誰もがなれるものらしいです。

“ワーズ・ワースの庭”の番組の最後は、道楽者の条件をこう定義し締めくくっ

ていました。“1.身軽であること 2.反~省しないこと 3.自由~であること


そして私が考える道楽者の条件は、1.熱中できること、2.既成概念から、自

由であること 3.常に楽しむために人生はあると考えられること。
          


 そう思っていたら、ある日、駐車場に止まっていた、巨大な翼(ウイング)の付

いた車を見て、私は「どうして、こんなものが必要なのかな~?」と隣にいた店

長に意見を求めました。すると、「それは、キムラさんのヘップバーン・ボードと

一緒ですよ。どちらもなくてもいいもんでしょ。」そのクールな断罪を受けて、私

はもうひとつの条件を道楽者の定義に付け加えることにしました。


 ”
他人の道楽に寛容であること“です。





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また、来週の金曜日、お会いしましょう。 

                     

木村里紗子 Risaco

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