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	第２９回チャーリー・ブラウンとルーシー、そしてマシュマロ

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル＆ラグジュアリーに暮らす”（ダイヤモンド社）（06年6月）がある。

道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン

　
　「誰か、チャーリーをやりたい者はいるか？」
　　　　
　「はい、先生、私が適任です。身もｺｺﾛもﾌﾞﾗｳﾝですから。
　　　　　　　　　　　　　　　　

チャーリー・ブラウンとルーシー、そしてマシュマロ

　飛んでくるミサイルを打ち落とす迎撃ミサイルの実験をする度、“今度は成功

しますから”と、いつもバートレット大統領をシチュエーションルーム（軍事面の

緊急会議をする部屋）に呼ぶ、首席補佐官のレオ・マクギャリー。「どうせ、もう

すぐ誰かがやってきて、失敗したと言うんだろう」と、大統領。ドラマ“ザ・ホワイト

ハウス”（原題“Ｔｈｅ　Ｗｅｓｔ　Ｗｉｎｇ”）の１シーンのイントロです。「ペンタゴンが

ルーシーなら、君はチャーリー･ブラウンってとこだな」と、大統領。その実験の

たびに、標的のミサイルを打ち落とすことができず、必ず失敗してしまうからな

のです。「国防総省がミサイル防衛の予算を増やしてもらおうと、迎撃ミサイル

実験を君に見せるが、いつも失敗する。」「チャーリー・ブラウンが（アメリカン)

フットボールのボールをけろうとするが、ボールを押さえていたルーシーはいつ

もその寸前でボールを引っ込め、チャーリー・ブラウンはしりもちをつく。今度こ

そ、そんな意地悪はしないからと毎回チャーリーを説き伏せるが、そのたびに

裏切り、ボールをけろうとする寸前でボールを引っ込めては、チャーリー・ブラ

ウンはしりもちをつく。」そして、迎撃ミサイルは、飛んできた標的ミサイルを捕ら

えきれず、やはり今回も失敗してしまう。はずした距離は、２５４ｋｍ！「大気圏

外からすれば、２５４ｋｍなんてたいした距離じゃないさ。」と補佐官のレオに嫌

味を言う、大統領。そして、間抜けで人のいい、チャーリーはいつもこうため息

を漏らすと。「“Pooh！”（やれやれ）」と。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

世界でいちばん有名な漫画”Peanuts”シリーズです。作者のチャールズ・M・

シュルツを知らなくても、スヌーピー、チャーリー・ブラウン、ルーシーはほとんど

の方がご存知でしょう。ルーシーは、ちょっと意地悪で、いつもチャーリー・ブラ

ウンをからかう役として描かれます。小学高学年から、中学生にかけてのころ

谷川俊太郎訳のついた、英和対訳のペーパーバック”Peanuts”シリーズが私

の愛読書のひとつでした。大統領の引用した、よく出てくるこの有名すぎるくだり

を読んでいて、私は、こんな意地悪じゃないから、似てないわとか、頭のいい

マーシーは、男の子っぽくて、勉強嫌いなペッパーミントパティを好きでどうして

“先生”と尊敬するのかな？とか間抜けなチャーリー･ブラウンより、ベートーベ

ンの生まれ変わりと信じ込んでいる、シュローダーが好きだわとか。何で、アメリ

カ人はこんなにもマシュマロを食べるのかとか、しかも焼いて食べるんだな？と

か、こんなジョークがアメリカ人は好きなんだなとか。この”Peanuts”シリーズの

チャーリーとルーシーたちが私の真の友人だった私の子供時代を過ごしたせい

か、先生に答えのない難題を出してからかったり、偽ものの文章を書いては、

その本の題名を当てさせたりとかする、こんな遊びが今でも私は大好きなんで

す、実は。だから、リサコラムの読者さまもこころしてかからねばなりません。　　

フランスでは、“Poisson d’avril”（４月の魚）。しかしその由来はまだ正確に

わかっていないらしいのですが、日本では“エイプリル・フール”。先週号のリサ

コラムを２日延期するのも、不本意でしたが、この絶好のチャンスの誘惑には

勝てず、“コラム･ザ・店長”を書くと予想外の店長宛へラブメールが続々やっ

てきて、当の店長もびっくり。リサコラムに寄せられるメールの何倍ものメールに

私は、この先リサコラムを続けてよいものかどうかさえ、危ぶまれるほど。なの

に当の店長は、花束なしの“グッジョブ！（Good Job！）”を私に与えるのみ

です。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

チャーリー・ブラウン、ルーシー、ライナス、マーシー、シュローダー、そしてスヌ

ーピー氏が繰り広げるような、そんな遊び相手が私には、実はひとりだけいま

す。空メールと思いきや、添付メールを開くと、私の手書きイラストに悪魔のメッ

セージが書いてあったり、メールも電話もある時代なのに、わざわざカタカナ書

きの電報で用件を伝えたりと。ルーシー＆チャーリーの相手役の彼女は、東京

で徹夜続きの仕事を続けながらも、私のこんな遊びに一緒に付き合ってくれて

いました。その彼女から先日、一人暮らしの義理のお母さんの看病のため、ひ

とりでダンナさまの実家の松本にしばらくいることになったという、メールをもらい

ました。私は、チャーリー･ブラウンかルーシーを失ったような思いでした。彼女

に電話すると、その後又すぐに彼女からメールが届きました。「うっかり弱気に

なっちゃたら、メールしちゃうかも、です。松本、何にもない町ですが、南アル

プスやら、上高地やらに囲まれたきれいなところだから、まっ、いっかな。」と。

そんな彼女のマシュマロ度が好きなんです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

マシュマロは、”maｒsh mallow”という葵科の植物で、“沼地のアオイ”と訳せる

そうです。昔は、その根っこのでんぷん質、粘液物質、ペクチン、ショ糖などの

成分をいかして、マシュマロの粘り気のある触感を作りだしていたため、マシュ

マロがそのまま食べ物の名前になったそうなのです。マシュマロは派手さがな

いお菓子の一つでしょう。小指の先くらいの小さいのから、たまごくらいの大きい

のまで、形は楕円か、円筒形です。淡いピンク、オレンジ、ミント、チョコレート色

と色々あっても味はどれも淡い味で同じだったりします。ハワイなんかのお土産

で、同じ形のマシュマロがたくさん入った袋入りを戴くたび、私はチャーリー･ブ

ラウンを思い出します。あの丸っこい頭と、ルーシーに対して怒りをあらわにす

ることなくいつも“Pooh!”と言うことで自分を慰めるところがぴったり合うような気

がするからです。同じ袋入りのお菓子でも、パイや、クッキーやポテトチップスは

床に落としただけで、砕けてしまうし、生クリームたっぷりのケーキは水平にして

大事に扱わないと大変なことになってしまいます。でもマシュマロは、少々手荒

に扱っても壊れることも変形することもなく、指で押しても元に戻ります。見かけ

は、かちっとして見えるマシュマロでも、噛むとやわらかく、独特の触感で、中に

は、中心に果物のジャムや、チョコレートが入っているものもあります。だから、

ついパクパク食べてしまう方もいるでしょう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「別人！別人！」と、雑誌に写っている私の顔を見て、お店の中で大声で叫

ぶ彼女は、化粧品会社の社長さん。１０年以上の私の顧客です。「ホントです

ね。は、は、ははぁ..」私も一緒に大きな声で笑います。普段は化粧をしない

から、別人なのは当然です。この方に限らず、私の顧客には、細木数子さん

みたいな方が大勢いらっしゃいます。中には細木数男さんも。だから、私は、

チャーリー・ブラウンでなくてはやっていけないのです。つまりマシュマロな頭とコ

コロです。ガラスのココロなら、ちょっとした衝撃でもヒビが入ってしまったり、割

れてしまったりしますが、マシュマロのココロなら手荒に扱われてもへこんでしま

うことも、つぶれることもありません。そして、見かけは平凡でも、中においしい

ジャムやチョコレートが入っているかもしれないから、マシュマロな私を見つける

と、つい、私のお客さまは、このマシュマロを口に入れてしまうんですね。そして

噛むとねっとりと独特の噛みごたえとともに、味わいが口の中に広がるんです。

時々予想もしないような、味も出てきます。だから、あなたも、毎回チャーリー・

ブラウンになるとはわかっていても、こんなリサコラムを読むのは、やっぱりね、

やめられないでしょ。

新年度のリサコラムも、マシュマロのように粘りづよく続けます。　　　　　　　　　

だから、どうぞごひいきに。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

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　お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。必ずご返事いたします。

木村里紗子

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