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リサコラム
本日のオードブル
第30回

おやつの女王


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン

 
       「グリーンの女王様からお電話です。」
    
 「今、ピンクの女王様のお相手してるから、
            ラ・フランスな王子につないで頂戴!」
                

 

       



おやつの女王




 その昔、マダム・ワトソンには“おやつの女王”と呼ばれたスタッフがいました。

一人っ子で大きな家に住むその彼女のお父さんは元プロ野球選手でした。

ある日、男性アルバイトスタッフが彼女のことを私に漏らしました。「“おやつの

女王”がやってきてからは、自由におやつが食べれなくなってしまった」と。お

昼休みや休憩時間にお客さまからいただいたおかしなどを彼女が自分のロッ

カーに全部保管していているから、「1つのおかしを食べ終わらなくては、次を

出してくれないんですよね。だからもう、誰も食べなくなったお菓子もなくならな

いと新しいお菓子を出してもらえないんです」と。それを知って私は大笑いして

しまいました。まだ20歳の彼女は管理のカリスマでした。カウンターの引き出し

はすべて彼女が整理整頓していました。彼女がしたディスプレイを誰か他のス

タッフが直そうものなら、次の日には元の状態に戻っていました。暇を見つけて

は、LAZY SUSANのステイショナリーの箱を包装し、すぐにお客さまに渡せるよ

うにするシステムを作ったのも彼女でした。寡黙な彼女とはほとんどしゃべった

記憶がないくらい、黙々と仕事をこなしながら、誰に指示されるでもなく、自分

好みのシステムに整えていたように思います。朝、出社したら、彼女は新聞に

ホッチキスを3箇所とめます。「Kさんが新聞を読んだ後は、ぐっちゃ、ぐちゃで

すよ!」と。裏が白いチラシはメモ用紙に同じサイズにカットし、それ以外のチラ

シは折り紙式に折って、食べがらのゴミ箱にします。お昼に食べたカップラーメ

ンの残りの汁を排水溝に捨てず、小さいビンを持ってきては、それを持ち帰り、

自宅の庭にまいていました。今で言えば、ブランドの服を着たすばらしい“エコ

人間”、ってところでしょうか?そんな無口な彼女が一言、「仕事は楽しい」と

言うと、迫力がありました。その独特の美学を持つ“おやつの女王”は、10年た

った今でも私に強烈な印象を与えてくれた人として、新人が入ったら、必ず教

えては、話題にします。
                                        


また、こんなスタッフもいました。朝の掃除のとき、その彼女のそばを通ると、 

♪あるう日、森の中、熊さんに出会った。花咲く森の道、熊さんはに出会った.

..スタコラ、サッササノサ、スタコラ、サッササノサ
..♪必ずこんな歌が聞こ

えてきます。彼女の父は、全国チェーンの飲食店を統括する上場企業の社長

さん。誰もが知っている麺のファーストフード店です。「だって淋しいんだもん!

黙って掃除するなんて」、となるほど、ごもっともです。それにつられて、別のス

タッフも一緒に歌を歌います。あっけらかんとした彼女は、いつも些細なことで

笑い、失敗しても、「しかられているとき、心の中で歌を歌っていると、ちっとも

悲しくならないよ」と、一向に気にする気配がありません。彼女は“歌う女王”で

した。でも、彼女はお客さまからの戴き物は、必ず、「人には、一番いい物をあ

げなさいって言うから」と、自分は、ちょっと形の悪いものや残り物をもらってい

ました。“おやつの女王”と“歌う女王”、彼女たちは育った環境がちょっと特異

なためか、独特なおもしろい個性を持っていました。
                   


ダブルフリルをたっぷり寄せて、リボンに、ビーズに、レースにと、デコレーション

満ン点のお部屋が好きな方、フリルは絶対嫌い、シンプル、モダンでなくては

だめという方、まっ白好き、ピンク好き、パープル好き、グリーン好き、直線嫌い

に、曲線嫌い、チェック好きに縦ストライプ好き、猫足好き、アイアン好き、ゴー

ルド好き、シルバー好き、....お客様の数だけ好みがあります。私の顧客の

ご姉妹は、お姉さんが白好き、妹さんが黒好き。どちらも経営者で、自分の趣

味は譲りません。お姉さんのお家のリフォームのときは、純白な紙クロスを貼り

ました。ビニールクロスはあっても、純白な紙クロスで、しかも純白な柄が入っ

たものって、これがなかなかなくて、それにもちろん純白のカーテン。素材違い

のデザイン違いで4重に重ねた窓辺を作りました。すると、純白な床に純白な

鏡面仕上げの建具、家具に囲まれ、まばゆいばかりの純白の世界が出現しま

した。黒好きの妹さんは、もっと大変です。真っ黒のベッドリネン、カーテン、キ

ッチンマット、タオル、ティッシュケースカバー、ゴミ箱、部屋着、パジャマ、下着

贈り物のエプロンにいたるまで無地の真っ黒を探さねばなりません。どちらも10

年以上の長いお付き合いの私の顧客です。そのお二人が一緒に来られたとき

はケンカになります。私は急いで、白いブラウスに、黒いスカートをはいて中立

の立場を取るしかありません。「あんな真っ黒けの部屋、どうかと思うよね~、

木村さん!」「お姉ちゃんのあんな真っ白けの部屋、私はぜんぜん、落ちつか

ん!」と、こんな具合だから、“真っ白な女王”と“真っ黒な女王”の間に挟ま

れて、こんな私もけっこう苦労しているんです。
                       


木村さんは“100通りの顔を持っている”という店長。でも、500人は500人の

個性を持っています。私はこんな女王たちの個性を生かすためには、500通

りの顔がいるのです。この方は、自分にはどうも合わないとか、この方は、嫌い

だなとか、そんなことは言ってられない日々です。好き嫌いではなく、その彼

女たちの独特の美学を少しずつ盗んでいくのです。おやつの女王のように、自

分の世界を作り上げ、譲らない強さも、歌う女王のような、自らを楽しくする技

を編み出すことも、色によって自分の個性を貫く生き方をも。だから、私は、ま

ず自分をニュートラルにするのです。ニュートラルなら、その時々でどんな色に

も染まれます。すると、どんな方とも話が弾みます。どんなご趣味もいいと思え

るし、どんなこだわりにも「すばらしい!」といえます。               


リサコラムの読者さまには、毎週感想文を寄せると宣言されている、“感想文

の女王”がいらっしゃいます。そして私が好きそうな本を、知っていたかのよう

に贈ってくださる“ホスピタリティの女王”。“上等なため息”なんていう格言を

つむぎだす、“格言の女王”も。かわいいハガキや美しい手紙をよく送ってくだ

さる、筆まめな“手書きの女王”も。
マダム・ワトソンのスタッフにも、ブランド物と

100均を絶妙なコンビネーションで駆使する“100均ブランド王子”も、手作り

で何でも作ってしまう、“クラフトの女王”も、無料エステで癒してくれる“フェイ

シャルの女王”、”コンフォーターケース”を、”カンファタ...“と発音する、”英

会話の女王“も。
そして、今回は、私は登場しないんですか?という、“ラ・フラ

ンスな王子”も、もちろん。だから、私は自分で考え出すこともなく、多くのすば

らしい女王、王子たちのいいところを盗んでいるだけなのです。



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木村里紗子 Risaco

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