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リサコラム 本日のオードブル
第32回

名探偵モンク

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン

  
   「警部、失踪は10時30分前後なのに、
     見てください、イラストに色が塗られています。」
   「モンク、犯人はよっぽど神経質なやつだな」              

 

       


名探偵モンク




 「ほぉ、モンク的ですね」お客さま用に定期購読しているSEVEN SEAS(セブ

ンシーズ)という雑誌を、発行月順にきちんと並べかえていた店長を見て、私

はそう言いました。マダム・ワトソン用語では、“モンク的”という表現をされたら

ほめ言葉になっています。アメリカで大人気のドラマ、日本でも“名探偵モンク”

というタイトルで長く放送されているコメディタッチの推理ドラマです。その主人

公“エイドリアン・モンク”がその人です。サンフランシスコ市警の顧問探偵として

親分肌の警部と、ちょっと間抜けで見当違いの推理が得意な警部補とともに、

すべての殺人事件を担当。元、警察官の彼は、最愛の妻を未決の事件で失

ってから、心の病を抱えてしまいます。しかし、他の女性と付き合うこともできな

い、孤独な探偵として描かれています。頭脳明晰、天賦の才として与えられた

抜群の記憶力、すぐれた観察眼による推理力ですべての難事件を鮮やかに

解き明かします。しかし、彼には、他の人からは“性癖”ととられる、多くの難点

があるのです。それが彼に特筆すべきキャラクターを与えています。
       


 彼は毎朝、歯ブラシにやかんの熱湯をかけて消毒します。極度の潔癖症で

対人恐怖症の彼はなかなか握手もできません。除菌ティッシュはどんな時で

も携帯。高所、閉所恐怖性でエレベーターにも地下鉄にも乗れず、子犬を怖

がる臆病な子供のような性質。天井に掃除機をかけ、強度の整頓症のため、

すべてが左右対称でないと落ち着かない。石畳の道を歩くときは、割れた石の

形に足を合わせて歩き、階段は数を数えながら歩く。クリーニングは分けて2

度洗いを要求するため、料金表には、Mr.MONKと別料金が表示されていま

す。そのクリーング店の従業員は、洗濯中になくなったシャツのボタンを新しく

付け替え、X印に縫い付けます。ほかのボタンはすべて=印に縫い付けられて

いるのに、そのボタンだけがX印に縫いつけられていることが、彼にとっては大

事件なのです。道行く人がそのボタンに注目している気がして、外を歩けない

と言って、アシスタントの女性を困惑させます。40代後半の彼は、女性アシス

タントと一緒でないと行動もできません。寂しがり屋で、彼女曰く、
無限大の

神経質な性質“。唯一の心のよりどころは心理カウンセラーのクローガー先生。

先生の待合室で目の前に並んでいる雑誌が、不ぞろいであることに気が散りま

す。彼は、その雑誌の大きさを揃えて、左右対称にならべ変えます。すると、

隣に座っていたBさんは、その雑誌をジャンル別に並べ直します。モンクはや

はり我慢できず、また左右対照に並べ替えると、さらにBさんは、その雑誌を又

同じようにジャンル別に並べ直す、似た2人はそれを繰り返すのです。最後は

「地獄に落ちろ!」とまで言い合うほどの大喧嘩になります。普段は物静かで

大きな声を出すこともない紳士で臆病な彼が、子供のけんかのように興奮す

る時はこんな時です。そこにクローガー先生がやってきて、「私のオフィスだか

ら、そんなことはどうでもいいんです」と仲裁に入ります。頭脳明晰な名探偵と

寂しがり屋の潔癖な子供が一緒になったような個性。クローガー先生が旅行

に出かけると、毎日、先生の家の前で、帰りを待ち続ける彼は、やはり、誰から

も愛される存在でもあるのです。
                                 


 そんな人は実際にはいないだろうと思っていたら、見つけたのです。「主人の

シーツの、かかとのところだけが擦れて薄くなるんです」と、シーツを買いにこら

れた女性の顧客の方。「えっ、どうしてですか?」と聞くと、「彼はかかとがすっ

ごく、がさがさで、それでもって、まっすぐに寝るもんですから、その部分だけが

こすれて、シーツがどれもだめになるんです。彼の部屋は、常に同じものが同

じ場所にあって、位置が変ることがないんです。」「タオルは四隅を持ってパン

パンとたたいて乾かし、きっちり四隅を合わせてたたみます。朝、出かける前に

ベッドにパジャマをたたんでいくんですよ。」「彼は時間というか、とっても余裕が

ある人なんです。目覚まし時計が鳴ったことがなく、鳴る前の“かちっ”という音

で目が覚めるらしいんです。」「靴紐は毎朝、すべて解いてから、ピンピンと伸ば

してから結びなおすんです」と。彼女はそのモンクぶりをげらげら笑いながら話

します。何度もお会いしているのに、実は一度もそのダンナ様と私はお話したこ

とがありません。「無愛想とかいわれるんですが、本人はそんなつもりはなく、

ただ、人と接するのが苦手なだけなんです。」「でも、変ってるね~とか言われ

ても平気みたいなんですよ」と。私はすかさず、「ダンナ様にそっくりな人がいま

すから、このビデオ、ぜひ見てください」と、次の機会に“モンク”のビデオをお渡

ししました。一度袖を通したスーツは必ずクリーニングに出すという方、帰った

ときに安らげる部屋にしたいと、完璧なお掃除を入れる方。パジャマを買ったら

クリーニングしてから届けてと言われる方、すべて男性です。
            


 “名探偵モンク”の中のある事件です。美術館から巨大なダイヤが盗まれ、

まず守衛が容疑者として取り調べられました。しかし、結果は“シロ”。そしてだ

んだんと迷宮入りの様相を呈していた時、モンクはある事を思い出します。守

衛が取り調べ室に入る時はガムをかんでいたのに、出る時はかんでいなかた

ことに。そして、取調室の机の裏から、ガムで貼り付けられたそのダイヤを見つ

けるのです。 モンクは過度に神経質で、整頓症のため、他の人なら見逃すこ

とも情報として取り入れるのです。


 靴紐にアイロンをかけるモンクと、靴紐を毎朝、解いて結びなおす人。その共

通点を私は考え続け、そして、その答えを自分なりに見出したのです。神経質

で、潔癖と周りから言われる人は、その反面、実は
余裕のある人“なんだとい

うことです。逆のような気がしますが、今まであげた人たちはすべて、”余裕を

生み出す行為“を日ごろからしている人なのです。心の余裕、時間の余裕、そ

れがなくては、人の心の動きを敏感に察知したり、目では見えないものを心で

見ることはできないと思います。時間がないからできないのではなく、自分に”

余裕“がないからできないんではないかと。
4年前、モンクに出会って以来、常

に同じことを継続する意味が少しわかったような気がしています。


 リサコラムの日の朝9時ごろから、あらかじめ書いておいたリサコラムの校正を

始めます。イラストを鉛筆で描き、それを3ミリのサインペンでなぞります。それ

が乾くまでの10時半から11時くらいの間、一度店内に出ます。そしてまた机

に戻り、消しゴムで消してイラストに色を付け始めます。11時から約2時間半

の作業です。だから、もし午後2時を過ぎても今週のリサコラムがUPされないと

きは、誰かに拘束されているか、事件に巻き込まれていると考えてください。 


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お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。必ずご返事いたします。



                     
                     

木村里紗子 Risaco

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