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リサコラム 本日のオードブル
第33回

リゾートの小箱


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン


        リサコ流リゾートの心得3か条

        1.王様になれ 2.大泥棒になれ 
         3.行く前にベッドを整えよ         

 

       

リゾートの小箱



 「リゾートに行く前にベッドを注文して、お金も払って行きたいんです。」ゴール

デンウィークの前に、メールでこんな注文がやってきました。彼女は、南の島の

リゾート地に行く前に、新しいベッドと夏用の寝具を揃えたいというご希望です。

「6回めのモルディブです。でも私は初心者なのです」と。モルディブはたくさん

の群島からなる、1アイランド1リゾートだから、モルディブに魅せられた“モルデ

ィブフリーク”もたくさんいらっしゃるようです。実は昨年の暮れ、5度目の彼女

のモルディブ旅行の前にも、冬用の寝具一式を揃えたいと、出発の直前にお

届けしたのでした。リゾートから家に帰ったときに同じリゾートの気分が味わえる

ようにと。モルディブから真冬の日本に、まっ青な海と砂浜、海に向かってせり

出したやしの木の絵ハガキが送られてきました。「先日はありがとうございまし

た。日本へ帰ってもリゾート気分が味わえそうです」と。だから今度は、用意周

到な彼女の夏支度です。注文書と一緒に彼女からメールで送られてきたのは

モルディブの透明な碧い海に泳ぐ熱帯魚の写真でした。それを見ながら、お

会いしたこともない、声を聞いたこともない彼女のことを私は考えていました。

彼女は「心身ともに癒されたいに違いないけれど、また、そこでいろんなことを

学んでいるに違いない」と。
                                      


 リゾートに行く前に自宅をリゾートスタイルのベッドルームに整えて“帰ったとき

もリゾート気分をそのまま味わえるようにする”、それはリゾートに行くための賢

い心得だと思います。実は、私もリゾート好きです。13年前、バリ島に本格的

なリゾートができて以来、リゾートで至福を味わいつくすことを覚えました。部屋

は、独立したコテージです。門をくぐると熱帯の植物が美しく植えられた庭につ

ながり、その先には、アウトドアリビングと小さいプール、その先が海。大理石の

広いバスルーム、巨大な天蓋ベッドにまっ白いベッドリネン。海に流れ落ちるよ

うな設計のプールサイドで一日中、小説を読み、ひたすら本の虫になります。

暑さでたまらなくなったら、プールに飛び込み、アウトドアのシャワーを浴びて、

バスローブとタオルに包まり、白いかたまりになる。冷えた飲み物と美しく整えら

れた寝室。真っ白いベッドに滑り込む。朝は、鳥の鳴き声の中で目覚め、アウト

ドアリビングで、糊のきいた白いテーブルクロスで、トアルコトラジャの濃厚なコー

ヒー、さまざまなフルーツの朝食。夕日とともに、リゾートのカクテルドレスに着

替え、波の音の中でキャンドルディナーです。折り目正しいボーイが美しい英

語で、完璧な給仕をします。南の島のビーチリゾートのよさは、昼の開放的なビ

ーチサイドの至福の時間と、ドレスコードのあるレストランで、長い夜を過ごす、

悠久の時。この2つを両方味わえる点だと思います。これを一度経験すると、

はまります。新しいビーチリゾートができる度、バリ、プーケット、ランカウイと毎

年行ってしまいます。だから、日本に帰ってきたとき、自宅のベッドに落胆しな

いようにと、美しいリゾートのような寝室を作りたくなるのは当然の結果だったの

です。
 


 アジアンリゾートがブームになって以来、国内のホテルにも新しい動きがあっ

たと思います。シティホテルがリゾートホテル化してゆきました。ベッドルームも

不衛生なベッドカバー式ふとんや毛布から、すべてカバーリングしてしまうやり

方に、ほとんどのシティホテルが変りました。バスルームはユニットから、シャワ

ーブースつきの広いバスルームへと。どのホテルもアジアンリゾートブームにの

って、泊まるためのホテルから、高級なスパを併設し、癒されるラグジュアリー

な空間とサービスを提供する場へと変貌していったのが、この10年の動きだと

思います。シティホテルは宴会やベッドを提供するだけの場ではなく、リゾート

のような気分を味わわせ、その中ずっと過ごさせる場へと変りつつあると思いま

す。


  国内外に新しいリゾートスタイルのホテルができるたび、私は1年以内にそ

れを体験しに行きました。海外は、なるべくビジネスクラスに乗ります。美しいイ

ンテリア、ベッドリネン、タオル、備品、最新の設備、それらを観察するのはもち

ろんですが、一流の場所で働いているスタッフの行動、ちょっとした表情、声の

トーンまで細かに観察し、自分のやり方と比較します。1世紀の歴史を持つ、

バンコクの“オリエンタルホテル”に宿泊した時、バスルームの掃除にクレーム

をつけました。すぐにスタッフがやってきて、掃除をし直しました。その後、ハウ

スキーピング部門のトップの女性が花束を持ってやってきました。そして、どう

か、もう一度私に掃除させて欲しいと懇願します。彼女は最初からバスルーム

の掃除をやり直しました。私は、なるほど、ここまでしないと人は感動しないん

だな、と。ここまでは自分はやっていないな、と反省するのです。クラブフロアが

あるところは、必ずそのカテゴリーの部屋に泊まり、名前を覚えてもらうために、

たくさん会話し、時にはクレームをつけ、調べ物を、レストランの予約をお願いし

たりします。いろんな要求を出して、その反応をよく見聞きし、忘れず、そして

盗みました。私はまさに“大金を払う大泥棒”です。一流を経験するために、

その費用を捻出するために、だから、普段の食事は質素そのものなんです。 

そのときに身についた菜食、粗食が、単純に今のベジタリアンの延長というわけ

です。
                                                     


 先月は4人の女性の寝室を作り、大きな個人医院のロビー、院長室の窓辺

を作りました。イラストを描いてインテリアの提案をしたり、もちろん接客販売も

大事な仕事です。そして私はたくさんのお客さまの指名も受けます。プロ意識

が高いなどという過分なおほめ言葉もいただきます。でもそれは当然の結果と

も言えます。なぜなら、私にはこんな大きな元手がかかっているからです。一

流のピアニストを、プロのバイオリニストを目指す人は、あるいは、ウインブルドン

を目指すテニスプレーなら、一流のコーチや一流の先生に付くのは当然です。

当然大金がかかります。私は、接客の仕事をしてお金をもらっているので、当

然プロでなくてはならないし、一流に近づきたいと思っているから、一流の場所

で働いているスタッフが先生です。だから大金を払って、でも楽しみながら、自

分に投資し、そしてしっかり盗んでいるんです。自分に投資しなさいとよく言わ

れますが、こんなに楽しい授業料の払い方は他にはありません。
          


 “comfort”という言葉には“慰める”という意味があります。ここちよいまさに

”comfortablle”な空間を作ることを仕事としている私たちです。だから、疲

れた人を慰め、癒す、“comfortable”なリゾートで、自分がどんなサービスを

受けたとき心地よいと感じるのか、ラグジュアリーな気分を味わえるのか、それ

が些細なワザでも、たくさん身につけ、自分のものにしないと、他の人にそれを

やってあげることができないからです。
「木村さんは、リゾートみたいな部屋に

住んでいるから、どこにも出かけなくてもいいでしょう。」とよく言われます。でも

アウトプットばかりではだめなんです。インプットも必要なんです。だから、わたし

の部屋のクローゼットルームには、秘密の引き出しが1つあります。中には、旅

先で捨ててこれる古くなった下着や、Tシャツ、短パン、水着、薬、日焼け止め

ビーチサンダル、小さくなるカクテルドレス、それらが野菜保存用のジッパー付

きビニール袋に入って整然と並んでいます。もしも疲れきって、新しいアイデア

にも、リサコラムに行き詰った時、すぐさまその引きだしを引いて、スーツケース

に詰め込み、車で10分の国際線のターミナルから、シンガポールに飛び、そし

てラッフルズにたどり着くためです。そこのスタッフに次に行くリゾートの手配をし

てもらうためです。                                   




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木村里紗子 Risaco

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