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リサコラム
本日のオードブル
第45回

はらり、女ぢから

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン



  
 ”わびしさも、ストールはおれば、アンニュイになる”

                     「でしょ、お隣さん


 

       


はらり、女ぢから



 ホワイトハウスを望む美しい池のほとり。うっすらと、かすみがかった穏やかな

午後、芝生の上に座る長身の美しい女性は、アンドレア・ワイアット。青い芝生

に広げたストールの余裕を指し示して、「ここに来て、座ったら?」つっ立った

ままの男性は、「スーツがしわになる」と、その誘いを断る。かつて彼女の夫だ

ったトビー・ジーグラー、ホワイトハウスの広報部部長。「私だって!」アンディ、

ことアンドレアは美しい横顔を少し傾けて、トビーめがけて、優しくも鋭い視線を

投げる。そうして、「私は、連邦下院議員よ」とほほえみを浮かべる。答えて、

「おみそれしました!」と、トビー。やはり最後には元妻にやり込められる元夫。

アンディがすっと立ち上がると同時に、芝生の上に敷いていたストールはさっと

片手でつまみ上げられ、とたん、それは風を受けて“はらり”と宙を舞い、磁石

のように彼女の手の中に納まったかと思うと、みるみる小さなものとなって彼女

のバッグの中に納まってしまう。ドラマ“ザ・ホワイトハウス”の数少なく、短いア

ウトドアでのシーンです。
                                   


 美しい、女ぢからだわ!もう、せりふも暗記しているほど繰り返し見てはいる

のに、なのに、手品のようにはらりとバッグに収まるまでのアンディのストールに

女ぢからを感じます。“はらり”は、擬態語なのか、音のない擬声語なのか、

この言葉に私は惹かれるのです。頂きものの菓子折りのひもをほどくときも感じ

ます。端正な顔をした老舗の和菓子を包んでいた包装紙が、くず折れるよう

に、はらりとその包みを落として中の箱から顔をのぞかせるとき、あるいは、美し

いサテンのリボンで結ばれたプレゼントの小箱が、リボンの先をちょっと引くことで

するするとほどけて、一本の長いリボンと1枚の紙に変わるとき、美しいと感じま

す。リボンの美しさは、ほどくときの“はらり”感にあるのではないかと、わたしは

思います。リボンの力だけで、紙と箱をつなぎとめる、セロテープが介在しない

接着方法。できればすべてをこんな包装にしたいものだと思う日々です。どうし

ても数箇所セロテープの力を借りることになる大きな箱の場合、後ろめたいよう

な、本当はやってはいけないことをやっているような気持ちになります。風呂敷

に包まれた酒びんがその結び目がほどけると同時にはらりと落ちて、現れるさ

ま、シャンプーのコマーシャルで、髪を束ねた1本のくしを抜くと、長い黒髪が

”はらり”と落ちて、すとんとストレートヘアーに戻るシーン。『パリの二人』という

オードリー・ヘップバーンの主演の映画でも、タイピスト役の彼女の“はらり”をみ

ることができます。ホテルの寝室の鏡の前で、複雑に見える高く結い上げられ

た髪の毛から、1本のピンをはずすことで、マロンググラッセ色の髪の毛がはらり

と落ちるシーン。どれも美しいです。
                               


 また、きちんと着れば、帯じめと腰ひもだけで接着している布同士が、ずれる

ことなく長時間その形をとどめられる和服。そして、その紐を解くことで“するす

る、はらり”と足元に落とすこともできます。そこにはファスナーやボタンといった

物理的に両者をくっつけるものは存在しません。それ以前に、手縫いで作られ

る着物自体がほどけば簡単に反物になるという不思議な衣服です。「リサイク

ル」という言葉もない時代から、再利用の達人だった昔の日本人の知恵と美

意識を感じます。


 「アオザイですか?すてきですね~!」と60代くらいのお客さまに尋ねると、

「母の古い着物よ」「長じゅばんを解いたのよ」という返事が返ってきました。

付け焼刃ではない“はらり”とした女ぢからを感じます。だから、その残りで作っ

たストールや風呂敷にも同じ精神が宿っているように感じます。

 私は学生のころ、大きさもまちまちな教科書や辞書をきれいなちりめんの

風呂敷に包んで通学していました。当時、ほかに風呂敷学生は見かけたこと

がありませんでしたが、この風呂敷の便利さは常にどの時代でも必ず少数の支

持者がいるのも事実です。
                                      


 また、1枚の布でできたベッドリネンをフラットシーツと呼びます。その1枚でマ

ットを包み、さらに2枚を使って羽毛ふとんのようなコンフォーター(デュベとも

呼ぶ)を上下からサンドイッチして、カバーにする、そんなやり方を採用している

ホテルもあります。さらにもう1枚シーツを使って(アッパーシーツと呼ぶ)コンフ

ォーターカバーの上の襟元に折り返す“着るシーツ”を用意するところもありま

す。それに反して、ゴムの入ったクイックシーツは、ボックスシーツ、フィットシー

ツ、フィッティパックシーツ、とメーカーにより呼び名が異なり、いまだに統一さ

れていないものです。その統一されていないゴム入りシーツの美しいたたみ方

を教えて欲しいと、メールで問い合わせがありました。私は、「シーツの裏、ゴム

の入っているほうから2つの角に両手を入れて、さらにもう2つの角をその角に

手を入れたままもって角をつかんで...」と苦労して返事しました。自分で読

み返しながら、わかってもらえるだろうか?と不安になりました。確かにクイック

シーツとか呼ばれるものは美しくたたむことは難しく、しかもアイロンをかけたもの

でも広げるとどうしてもたくさんのしわができます。だから私は、ラインナップにあ

れば、フラットタイプの1枚もののシーツを選びます。お客さまにもフラット志向

の方が10%くらいの割合で確実にいらっしゃいます。ぴんと張ってメイキングす

れば美しく、たたんで端正、端を引けば、“はらり感”を味わいながら、はがすこ

ともでき、たたいて干せばさらによし。1枚もののシーツもストールも美しさは、こ

の同じ“はらり”にあると思うのです。
                               


 つまり、私も含め不足しがちな“女ぢから”は、“はらり感”のある、たった1枚

のストールで補うことができるということです。スリーブレスの1枚仕立てのワンピ

ースや細いストラップのスリップワンピースにビーズやオーガンジーのストールを

羽織れば、夏でも冬でも国内でも海外でも関係なく、おしゃれに食事ができま

す。リゾート系シティホテルで過ごすときも、ライトウールの大きめのストールを

羽織れば、たとえひとりの食事でも、“わびしさ”が“アンニュイ”に変わるから不

思議です。8つにたたんで、ジップロックに入れたら、ブリーフケースにそのスト

ールの薄い袋を滑込ませ、だから、替えのジャケットを持たずに、私は出かけ

ます。        




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木村里紗子 Risaco





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