MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
本日のオードブル
第46回

そうめんは、固めに

  
ゆでて、柔らかく

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン


   
  ”君、わかってるよね”

    ”もちろんですとも、フランシスさま、
        ベーコン抜きのやわ麺でございますよね”

 

        

そうめんは、固めにゆでて、柔らかく



  たっぷりの沸騰したお湯に、2人前なら3束を、1人前なら1束から1.5束の 

手延べそうめん。パラパラとほぐしながら、なべに入れたら、やさしくかき混ぜ、 

白い泡が盛り上がる再沸騰まで目を凝らして待ちます。泡が盛り上がってから 

ジャスト45秒。間髪いれずに一気にざるに上げ、勢いよく水にさらし、ぬめりが 

取れるまで手でもむように洗う。 ここまで一気に行い、しっかりとざるを振って、

水を切る。                                      


 麺は固めに限る、 一気にのどごしで味わうのが通。 ゆですぎた麺なんぞ、  

食するに値しない、それは子供の食べ物だ、などと、麺のゆで方を厳しく言わ  

れる家庭に育ったにもかかわらず、私はちょっとやわらかい麺が好きです。   

行きつけのパスタやさんで、 「ソース半分ベーコンぬきで」、いつもどおり注文を 

出すと「麺はやわ麺で?」と聞かれます。 「あっ、そう、お願いします」振り返り 

ぎわに「やわ麺で!」と大きな声でキッチンに向かって指示が飛びます。すると 

まわり数人のお客さん、「パスタはアルデンテに決まってるんじゃないの?」と無

言の抗議の目を私に向けます。そう、歯ごたえが残る触感です。 


 イタリア人のジローラモ・パンチェッタさん言われるように「さらに、茹で上がって

から食べ終えるまでの時間が、またパスタの勝負」なんだそうです。パスタに限ら

ず、なぜかほとんどの麺・リゾットのようなものまで、ちょっとなかに芯が残るくらい

固めで、あまりしっかりかまずに味わうのが上級者とされています。だからやわら

かめが好きな私は麺の初級者ということに落ち着きます。それは、ワインリストを

見せられて、甘めの軽いワインは初級者ぽいから、渋めのずっしりとしたワインと

書かれている方を選んでしまう、そんな感覚に似ています。            



 「よく”ワインの初級者には甘口を、中・上級者には酸味・渋みの強いものを”

と いうが、これは根本的に間違っていると思う。だいたい何を基準に初級者だ

の 中級者だのというのだろうか。ワインに対する造詣の深さ?それとも、どれほ

ど ワインを飲みなれているか?それは世間の勝手な思い込みというもので、ワ

インを飲むのに初級者、中級者、上級者なんてない。」と言うのは、ソムリエの世

界的第一人者、田崎真也さん。(『ソムリエを楽しむ/講談社』)1995年、彼

が世界最優秀ソムリエコンクールに日本人で始めて優勝して以来、ワインブーム

が始まったとまでいわれます。サントリーの赤玉ポートワイン、レゼルブ、ポルトガ

ルのマテウス・ロゼ(微発砲性のロゼワイン)くらいしか酒屋さんに並んでいなかっ

た時代から、一気にディスカウント酒屋さんにまで、数多くのワインが並ぶ状況を

作りだした田崎さんの功績は多くの人が認めるところだと思います


 12年前のソムリエコンクールの様子を始めてテレビで見たとき、こんなに美しい

フランス語を話す日本人男性がいるんだと初めて知りました。しかし彼は大学で

フランス語を専攻していたわけでもなく、しかも割烹の皿洗いからたたき上げ、 

ソムリエという職業が確立されていなかった日本から、自費でフランスに行き、

独学で学んだことを知り、いっそう、私は大ファンになってしまいました。    


 “苦みとは痛みに近い感覚”、“決して快適な感覚ではない”と彼は表現しま

す。「現代においては、本来快適でないはずの苦味が肯定的にとらえられ、まっ

たく苦味がないよりも、ほろ苦い味のほうが好まれる傾向にある」と。しかしその

風潮に流されず、味覚を麻痺させてはいけないと。田崎さんがテレビ番組の最

後で、「今となっては、ほんとうに甘いワインが飲みたいですね」と言ったとき、実

は“甘い”という言葉は、砂糖の甘さではなく、もっと奥深い意味があるように感じ

ざるを得ませんでした。本来、言葉自体に意味はなく、人が勝手に意味を与え

られるものだし、与えてしまったものでもあるからです。               


 “sweet”の対極にある“bitter”インテリアでも、ピンクやクリーム色などのやさ

しい色合い、フリル、レースをたっぷり使ったインテリアを“甘い”と表現します。甘

い=やわらかい=やさしい=わかりやすい=子供じみた、と否定的な意味合い

も使われます。“詰めが甘い”、“世間はそんなに甘くない”、“甘ちゃん”、それ

に反して“良薬は口に苦し”、“コクと苦味の”、”苦みばしった“などという表現は

クール=通=厳しさと、カッコイイ大人言葉として使われます。しかし、先日BS2

でドラマ”エリザベス1世―愛と陰謀の王宮“を見たとき、”かわいらしい“とフリル

を嫌う男性は、フリルに対して描くイメージが”梅干を見たら唾液“ではないか、と

考えました。ゴージャスなインテリアの王宮の舞台は、日本の織田信長、豊臣秀

吉の時代です。その中で哲学者”フランシス・ベーコン”が身に着けるフリルたっ

ぷりの立ち襟をほかの貴族の男性がねたみ、うらやむシーンが出てきます。首の

回りを覆うギブスのような立ち襟のフランシス・ベーコンは、教科書にも出てくる

有名な肖像画です。当時のイングランドでは貴族の富と地位の象徴として描か

れたフリルが、いったいいつから、”かわいらしい“ものの代表になってしまったの

だろうと考えてしまいました。そしてふと見ると、お店に活けてあった”たにわたり“

という植物がフリルそのものの姿をしているものを発見し、もしかしたら、自然界に

存在する形だったものを人間がまねて作ったのかも知れないと思い至った次第

です。自然の造詣がデザインのモチーフになるのは古代から数多く行われてき

た自然なことです。


 「ワインというと”異文化のもので難しい“と思ってしまう。これは、ワインのイメー

ジが未だ西洋文化へのコンプレックスをひきずっているからではないだろうか。」

という田崎さんの言葉は、”ワイン“は”インテリア“にも、そのほかのものにも置き

換えられると思います。”かわいい、甘い“と表現されるフリルが決してインテリア

初級者のものではないことを再認識させられた”エリザベス1世“は、とてもすばら

しいドラマでした。                           


 さて、脱線が長くなってしまいました。ざるにあげたそうめんは、おおぶりな皿に

乗せ、あく抜きをした適量の糸こんにゃくと混ぜ合わせます。その上に、さっと熱

湯をくぐらせたきのこ類を乗せ、ラップしてレンジでチン。あつあつのところに、昆

布だしとしょうゆをあわせた自家製だしをかけ、熱したごま油を少量まわしかけま

す。刻みねぎに、唐辛子で出来上がりです。麺が透明感を帯び、ほのかな甘さ

とともに、もちもち感を味わえます。糸こんにゃくのおかげで、冷めても硬くならず

手延べそうめんのしなやかさとこしも残っています。そして何よりかさが増えるの

で、“やわ麺”好きなダイエット中の方にもおすすめです。これを味わったら、“初

級者”呼ばわりも気にならなくなりますよ。
                            


































リサコラムに関するご意見、ご感想はこちらまで。                

mmm@madame-watson.com

お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。

必ずご返事いたします。

木村里紗子 Risaco





* PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.