リサコ３０分クッキング第八回

1年のKは元旦にあり



　　　　「２００９年、始まりましたね。
　　　　
　　　　クリスマスが終わって、まだ１週間しか経たないのに、

　　　　日本中の街中の風景は様変わりし、いきなり『文明開化』とは

　　　　かくありきか？と想像するような、洋物から和物への転換を

　　　　いたしておりますね」



　　　　　　　　



　　　　　「家庭では穏やかなお屠蘇ムードが続く中、テレビ番組は

　　　　　年末とは打って変わって、幸せな風景を映し出しております」



　　　　　　　　



　　　　　「静かなお正月、穏やかで幸せな予感に満ちた新年にふさわしい

　　　　　料理番組の始まりと致したく存じます」



　　　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　「しかし、”一年の計は元旦にあり”と申しますとおり、わたくし料理人も

　　　　　２００９年の計を誓い、新たなる思いに粛々と致しております」

　　　　　「では、あらためまして、日々、今日が新年の思いで、

　　　　　恭賀新年、新年開けまして、



　　　　　　　　　　　　　


　　　　　「おめでとうございます。えっ？”開けまして”ではなく、”明けまして”

　　　　　だというお声が今、かかりましたが、そうでございました。

　　　　　しかし、明けるは開ける、空けると音が一緒で、意味も通じていると

　　　　　わたくしは思うのでございます。ご説明が遅れてしまいました。

　　　　　これは、料理人がやはりこよなく愛します、”ふとんクローゼット”

　　　　　でございます」



　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　「ふとんというものは、ほおって置けば、自らのかたちをすぐにこわして、

　　　　だらしない姿に変わるものでございます。冬の時期は収納物がまだ、

　　　　夏用の薄い羽毛ふとんのため、おのおの羽毛ふとんの覇権争いも

　　　　沈静化してはおりますが、これが冬となりますと大変なことになります。

　　　　押入れなどに、数枚畳んで押し込もうものなら、１枚取るたびに、

　　　　白いかたまりは、雪崩を打って引き出した方の上に落ちてくることで

　　　　ございましょう。押入れとは、言いえて妙でございまして、”押して入れ”

　　　　れば、必ずや、”崩れて落ち出る”運命になります。それを防ぐには

　　　　棚板で仕切りをつけ、羽毛ふとんおのおの覇権争いに決着をつける

　　　　しか、雪崩を防ぐ術がございません」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　「”ふとんクローゼット”を”デュベクロークなどと呼べばもっとセンスよく

　　　　　聞こえはしますが、わたくし料理人は、おしゃれである前に、

　　　　　そのおしゃれが実用性を引き連れたものであるかを重視いたします。

　　　　　デュベクロークなどと申しましても、どなたもピンとこられないのでござい

　　　　　ますため、このような、ダサイ名称で呼んでおります。

　　　　　また、ふとんクローゼットの下には、このような引出しを設けております。

　　　　　ここはヌードのクッションを収納する引出しでございまして、見れば、

　　　　　このようにスペースが空いておりますね。空けるということは、つまり、

　　　　　余裕を持たせる、あるいは、不測の事態にも対応できる用意とでも

　　　　　申しましょうか...」



　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　　　「クッションとは一般には、すべて室内に出ておるものでございますが、

　　　　　　わたくしは、このように１０数種類のピロー、クッションを持って

　　　　　　おりますため、コーディネートによっては、スタンバイ中の役者も

　　　　　　おるのでございます」



　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　「役者は、やはり、お声がかかればいつでも身軽に登場できる心構えが

　　　　必要でございますため、このように大事に収納する空間を設けて

　　　　おるのでございます」



　　　　　　　　　　　　



　　　　　　 「つまりは、料理の素材を材料にし、それをいつでも使える状態に

　　　　　スタンバイさせておく作業と同じであるといえますね。ねぎも、

　　　　　しらたきも、きざんだ人参も、きのこ類も万能素材が交じり合うことなく

　　　　　ケンカすることなく、収納することと似ているような気が致します。


　　　　　さて、『一年の計は元旦にあり」。今年はどんな計をお立てになれ

　　　　　ましたでしょうか？では、あなたさまの美しい、美味しい暮らしのために

　　　　　時には、手となり、足となって、コンシエルジュのごとき身軽さで

　　　　　スタンバイしております、わたくし共、インテリア料理人たちから、

　　　　　１名欠席ではございますが、恒例の新年のご挨拶をさせて頂きたく

　　　　　存じます」





　　　　　　　　　　



　　　　　　　




　　　　　「始まりました、あなたさまの２００９年をすばらしい日々に

　　　　　するお手伝いを致しますため、わたくし共料理人たちは粛々と

　　　　　淡々と挑戦し続ける日々を送りますことをここに誓います」



　　　　　ではまた新年９日、この時間にお集まりいただけますように」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　




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