リサコ３０分クッキング第九回

サーヴァントとなり、ホストとなりゲストとなり



　　　　「新年もすでに、９日が過ぎようとしております。1ヶ月前は、クリスマス

　　　　カード書きに精を出しておりました。それから、インテリアのプランニングに

　　　　現場仕事にと日を過ごし、クリスマスプレゼントラッピングマシーンになり、

　　　　福袋を作り、年末の除夜の鐘は、職場のバックヤードで迎えました。

　　　　しかしながら、一昨年よりは少々進歩いたしましたのは、

　　　　一昨年の除夜の鐘は、知らぬ間に、コンビニの店内で迎えましたことを

　　　　思えば、まだ、ゆく年とくる年の境を意識して迎えられたことでしょうか。

　　　　さて、わたくし料理人が取りい出しましたるは、なにかと申しますと、



　　　　　　　　　　　　　



　　　　　「洗面室の棚の上に時々置かれます代物でございまして、

　　　　　ガラスのふたは、チーズドームと呼ばれます、チーズの乾燥を

　　　　　防ぎながら、チーズを見た目よく保存するものでございます。

　　　　　では、前置きが長くなりましたが、早速、ふたを取ってみましょう」



　　　　　　　　



　　　　　「新年と同じく、あけてみなくちゃ、わからない。さようでございます。

　　　　　お客さま用に用意しております手拭タオルでございますね。


　　　　　小さく、くるくると丸めましただけのことでございます。

　　　　　ふたを閉じて、またクローゼットにしまえば、ホコリよけにもなり、

　　　　　チーズドームのふたもなかなか便利な小道具でございますね」



　　　　　　　　　　



　　　　　「では仕切りなおしまして、『ようこそ、いらっしゃいました。

　　　　　こちらのタオルをお使いくださいますように』とキャンドルでも灯して

　　　　　お客さまに指し示せば、感動されること、間違いございません。

　　　　　簡単極まりないおもてなしでございますね。”おもてなし”といえば、

　　　　　一番に思い出すのは、バリ島のアマンキラから、空港に戻るとき

　　　　　の出来事でございます。短い休日を十二分に満喫し、片道２時間の

　　　　　道のりをロードレースのごときリムジンに揺られておりました。しかし、

　　　　　民族衣装でお祭りに向かう人々の群で、渋滞に巻き込まれ、わたくしは

　　　　　ケイタイでなにやらまくしたてる運転手に自分の運命をいやおうなしに

　　　　　ゆだねておりました。もう、出発の時刻は迫り、望みは飛行機の出発が

　　　　　遅れる他に術はなく、不安な気持ちはつのり、しかし、どうにかやっと

　　　　　間に合いましたのです。

　　　　　空港に降り立つと、そこには、チエックアウトしてホテルを後にしたはず

　　　　　なのに、同じ衣装を着たアマンキラのホテルスタッフが出迎え、

　　　　　さっさと、荷物をX線に通すと、日本語にて、搭乗手続までをも

　　　　　付き添ってくれるではありませんか！これには、正直、参りました。

　　　　　彼は、平然とした顔で、航空会社の搭乗手続き窓口に置いてある、

　　　　　キャンディの入った”つぼ”をうやうやしく両手で持ち上げますと、

　　　　　上手な日本語で「どうぞおひとつ！」とまで申しました。

　　　　　他人の用意したあめ玉までをも、うまく利用したホスピタリティ満載の

　　　　　サービスで、”ホテルは、チエックアウトした後で真価が問われる”

　　　　　これを身をもって体験した、出来事となりました。



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　　　　　「”ホスピタリティ”とは、おもてなしの心、癒しを与える行為、

　　　　　やさしさ、思いやりと、和やかな言葉が並びますが、なかなかに

　　　　　とらえどころのない精神及びその派生物でございます。



　　　　　　　　　　　　　


　　　　　「このように、ティッシュを三角におれば、ホスピタリティかと

　　　　　言われれば、そうとも申せますが、たかが３秒足らずで出来る行為で

　　　　　おこがましい命名でもござます」



　　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　　「ホスピタリティとは、なにかと考えるに、そのようなシーンだと感じた

　　　　　臨床を総じて考えるしか他にありません。わたくしなりに出しました

　　　　　結論といいますと、つまりは、ホスピタリティの反対語を考えると、

　　　　　合点がゆくのではないかと思いました次第でございます」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　「”いじわる”漢字であてますと、”意地悪”。これが本日の主役、

　　　　　”ホスピタリティ”の反対語ではないかと思うのでございます。

　　　　　つまりは、”いじわる”の対極にあるものが、”ホスピタリティ”、

　　　　　あるいは、”ホスピタリティある行為”ではあるまいかと」



　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　　　「ゆえに、いじわるの正反対をやれば、それが”ホスピタリティ”、

　　　　　あるいは、”ホスピタリティある行為”と、とられると確信したわけで

　　　　　ございます。言葉も行動も、そのような精神にあふれる人間になる

　　　　　にはやはり、数多くの場を踏まねばならないでしょう。

　　　　　しかし、わざわざ、リムジンに揺られて、さすらいの旅人気分に

　　　　　ならずとも、自宅にて、訓練は出来ることもございます」



　　　　　　　　　　　



　　　　　　 「答えは、自分をまずやさしく、もてなすことでございますね。

　　　　　資力ある方々の中には、全ての”ホスピタリティあるの行為”を他人に

　　　　　ゆだねる方もおいででしょう」



　　　　　　　　　　



　　　　　　　しかし、そこまでの資力あたわざる、わたくしも含めまして、

　　　　　そちらさまの向きにお勧めいたしますのは、やはり、自らが

　　　　　”サーヴァントになり、ホストになり、ゲスト”になり、

　　　　　”招き、もてなし、お世話し、そして、それを心たのしく享受する”

　　　　　これが一番の経済＝エコでございます。



　　　　　　　



　　　　　「仕事で失敗した日も、辛いことがあった日も、心躍らせながら、

　　　　　家路へつける、その道が花咲く小道となるために、自宅では

　　　　　”サーヴァントになり、ホストになり、ゲスト”になりホスピタリティある

　　　　　人間になるための訓練を重ねておる、わたくし料理人ででございます」



　　　　「ではまた新年１６日、この時間にお集まりいただけますように」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　



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