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リサコラム
連載133回
本日のオードブル
クルーゾー探偵の冒険


おぼろ月夜の花の宴

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに勤務し、400名以上の顧客を持つカリスマ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
17年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は、夏目漱石、中谷彰宏、F・サガン、マルセル・プルースト
      
  
    「花見、団子、ベッド、あなたはどれがお好き?」
 
 
 
       


クルーゾー探偵の冒険


おぼろ月夜の花の宴





   「わが師、シャーロック・ホームズ氏の元には時折、マスクで顔を隠した

   依頼人がやって来ます。それは、主に身分を隠すためのものであった

   ようでございました。マスクと申しましても、ウイルス対策の鼻を覆った

   実用マスクとは異なります。舞踏会用の目の部分をくりぬいた黒、時には

   ゴージャスな装飾が施された金銀のものでございましたようで...



           



   女性の場合はチュールレースのようなベールを顔にたらしたままで氏に

   面談をする場面がよくございます。その場合は、夫や主人に内緒の行動

   であったり、あるいは表情から、心の中を見透かされないために行うよう

   でございます。

    しかしながら、舞踏会と申しましても日常では、その言葉にお目にかかる

   ことが非常に少なくなってしまいました。氏の活躍の舞台は19世紀ロンドン

   でございます。イカの甲羅でウエストを細く締め上げた女性たちが、膨らんだ

   長いスカートを履き、美しい絵巻を綴ったビクトリア朝なのでございます。

   顔にチュールレースをたらした女性の目には、きっと、こんな感じで映ったに

   違いないと想像するものでございます。


   さらに、日本の平安絵巻の世界に登場する女性たちも、あまり人前に

   顔を見せなかったようでございます。”ベールに包まれた”という表現は、

   あまりぴんとこなくなった今では、ベールが実際にどのような効果をもたらす

   ものなのかを分からなくなったためではございませんでしょうか?しかし、

   欠点を隠すベールのソフトフィルターで、光を調整して、美しく見せる効果

   があることをこの女の寝室でわたくしクルーゾーも納得したのでございます。



      



   王朝絵巻と女が名づけたこの寝室も、カーテンや布ものがまるで十二単衣

   の着物のごとく、幾重にも重なり、ベール効果を狙ったものであることが

   わかるというものでございます。なるほど、女性だけでなく、部屋を美しく見

   せかける秘密が隠されておるようでございます。



        



   そうこう独り言を言っております間に、女は王朝絵巻のしつらえの寝室で

   ソファに座り、なにやらたくらんでおるようでございますね。グラスの中の飲

   み物は、赤ワインにしましては、少々色が濁っておるようでございます。

   それをちびりちびりやりながら、もしや、よからぬことを考えておるのではござ

   いませんでしょうか?おっと、



        



    『王朝の香り』という、タイトルの本でございます。わたくし、クルーゾーの

    黒手帳によりますと、この本は、つまり、源氏物語五十四帖にまつわる

    情景を、現代の京都画壇の日本画家54名が描いたもののようで

    ございます。まさに、現代の王朝絵巻そのものでございます。



     さらに、作家たちが、源氏物語に対するおのおのの思いを込めて綴った

    54のエッセイも一緒に構成されておる、軽妙洒脱な本でございますね。

    女の愛読の書というのもうなずける気が致します。



        



   源氏物語の五十四帖の中で、わたくしが不憫に思いますのは、『末摘花』

   の姫君でございます。美青年で女性好きな光源氏は、例のごとく、前から

   気になったおった、姫君を愛人に致しますが、朝の雪明りで初めてちらと

   見た、その先が赤くなった鼻を、普賢菩薩(ふげんぼさつ)の乗り物と表現

   しております。つまりは、象の鼻のようなという意味でございますね。今なら、

   セクハラになるところでございますが、寒い朝、雪明りにさらされた末摘花は

   あまりにもかわいそうな気が致しました。ベールで顔を覆っておればよかっ

   たのかもしれませぬ。



       



    おっと、女が開いておるページには、桜の木が描かれておるようで

    ございます。
さよう、第八帖の『花宴』でございましょう。なるほど、

    おぼろ月夜に源氏の君と、朧月夜の君との情事の始まりを描いたものに

    違いございません。



        



   花見の宴会の後、ほろ酔い気分の光源氏は、相手が政敵の娘とも知らず、

   屋敷に忍び込むのでございます。



       



   王朝絵巻の寝室、花の宴、朧月夜そして、女の持つ、赤い飲み物、

   これから浮上する、女のたくらみとは、いったい何でございましょう?

   女に歌で語らせましょう。



    



    「おぼろ月夜に寝室絵巻、



        



            絵巻片手に眺むれば、



     



                             野菜ジュースで花の宴」


         





    ではまた、来週金曜日、この貴賓席にてお待ち申し上げております。



                                               
                                       Risaco




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