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リサコラム
連載402回
      本日のオードブル

時はやさしく、時につめたく

時をめぐる
約14のストーリー

第2話

「8人目の叔母」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)は
2013年12月で7刷)
Kindle版は2013年12月発行。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。外国語を学ぶこと。
そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、他たくさん。



3階のバルコニーから入れば、
そこは、南からの風も通る、明るい家事室。
白い四角な窓枠の窓には、
もちろん遮熱&UVカット効果のあるシェードを。

そして収納、キャスター、、コンセント付きの
木製アイロン台。

正面に見えるベッドリネンの収納庫は
実は奥のベッドルームからも
取り出せる、双方向収納壁になっております。

左手はガラスの壁のバスルームです。
手前は天井からガラスのタオル収納棚あり。
でもタオルに見えても、実はバスローブも畳んで
収納されているんです。

掃除、洗濯、アイロンがけがズムーズこの上なく。
リフォームをお考えの
ちょっとエンスーなあなたさまにご提案の
家事室&バスルームなのです。

 
      
  





      


第2話

「8人目の叔母」





 「テーマ:夢を見つけよう」ポスティングチラシのような陳腐なキャッ

チコピーの垂れ幕で、名札を付けられた私は演壇に登ると下を見下ろした。


            



 初夏の風がふわりと入る昼下がり、掃除の行き届いた講堂の中に衣替え

した白と濃紺の風景を目にするのは新鮮で心地よかった。白と濃紺の青少

年は大人しく私の話に耳を傾けてくれているようだし、
今日もシナリオな

しでも首尾よくゆくだろう、きっと。


 しかし昔の私なら、演壇の上の偉そうな人間など無視して、一番後ろで

ふて寝をしていたはずだ。それから考えれば今の子供たちはずいぶんいい

子になったものだと思う。しかしそんないい子たちの中にも、きっと数人

は昔の私のようにワルもいるはずだ。私は右から順を追って、私の面影に

近いワルを探した。そしてしめしめという顔を笑みで隠した。



            




 土曜日の午後、講堂に集まったのは約7、80人。まずは、質問から始

めて相手の関心を引き、こちらにぐっと主導権を持ってくる。これが常套

手段。これでいこうと決めた。


 「昨晩、夢を見たひと~」私は自分の右手を高く上げなら、演台から前

に数歩出ると、マイケル・サンデル風に右から左へと蛇行しながらゆっく

り歩いた。バラバラと手が挙がった。こんな時、ワルは絶対に手など挙げ

ない。



            



 「窓の近くのメガネの君」と私は指差した。「どんな夢を見た?」相手

はまさか発言を求められるなんて思ってもいなかったらしく、あたふたし

ながらも、「どこかに拉致される夢を見ました」と言った。「どこに?」

「わかりません。あの、それって、もしかして現実逃避したいという願望

でしょうか?」「まさにその通りだと思う。はい、じゃぁ、一番前の君」

私は夢判断の専門家じゃないから、そんなことはわかるわけないさと胸の

中で呟いた。


 「『夢』と『夢』は同じものではないと私は思うんですが、どうして同

じ言葉を使うんですか?」「ああ、いい質問だよね。誰か答えられる人は

いるかな?」答えに窮した時はこれに限る。優等生風の女子生徒がすっと

手を挙げると発言を求めた。「私は寝るとき見る夢は過去にあったことの

反芻で、もう一つの夢は単なる願望を表すと思います」「なるほど、単な

る願望か」「他に意見のある者は?」「寝るときに見る『夢』と実現させ

たい希望とか願望とかをいう『夢』とは本来違うことはないと思います。

潜在意識にある願望をすべて『夢』と言うのだと思います」こんなこまし

ゃくれたことを言うやつはなかなか見込みがある。



             



 「よし、それじゃ、昨日の夜、夢を見なかった人は何人いるかな?」


またばらばらと手が挙がった。私はどちらも手を挙げなかった生徒の顔を

しっかりと覚えた。


 「それじゃ、今日は私の叔母の話をしよう。私がわざわざ取り上げよう

とするんだから、変わった叔母に違いないと思った人は正解だ」


 私はもったいをつけるために、1、2、3、と8まで数えながら目を閉

じた。


 8
秒間の夢を見た。



            



 「小学年の時、私は叔母の仕事を始めて知ったんだけど、それは友達

の家に遊びに行った時、勝手口と間違えてベランダからドアを開けて入っ

て、そしたらそこに叔母がいたからなんだ。叔母はそこで洗濯かごを抱え

ていた。部屋には大きなアイロン台があって、そこでアイロンをかけよう

としている感じだった。叔母は驚いて私の名前を呼ぶと、こっちにおいで

と手招きをした。叔母は私の友人の家で働いている家政婦だったんだ。


母は少しの間だけ仕事の手を休めて私を中に案内をした。アイロン台の向

こうにはアイロンのかかったシーツがきちんと並んでびっしりと棚に納ま

っていた。さらにその横は風呂場、つまりガラスの扉のある広いバスルー

ムだった。その時の僕は今まで見たこともないような光景を見た。


 バスルームの壁全体にガラスの棚があって、全部白いタオルがびっしり

と整列していたんだ。友人は「タオル屋さんだとは知らなかった」と叔母

に言ったら叔母は笑って、「売ってるんじゃないのよ」と言った。「それ

じゃ、使うため?」と聞くと、「それもあるけど眺めるためよ」と。ここ

に並んでいるタオルもシーツも眺めるためにもあるんだと言うんだよね。

そんなものを眺めて何が楽しいんだろう?と私はその時、全然わからなか

った。


 叔母が言うには人にはそれぞれ自分の理想みたいな夢みたいな“象徴”

というものがあって、それを心の目も使って眺めているとやる気とか何か

を成し遂げようとする意欲を沸かせられる人たちがいるのだと、彼女はそ

う説明をした。



            



 「人によってはそれが車とか、家とか庭とか、宝石とか、音楽とか、英

雄みたいな人とかいろいろあるけどね」と。つまり、この家の主人はぎっ

しり並んだシーツとタオルなんかの匂いみたいなものがその神聖な象徴だ

って言うんだな。憧れの映画スターのポスターを貼って眺めるみたいにね

と。



            



 それから小2の私はくんくんと犬みたいに鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。

まあ、いい匂いがしたね。新鮮な匂い、それは腐った匂いの反対の匂いだ

ね、つまりはそんな匂いを感じるものに嗅覚を働かせれば、自分の夢は見

つかると叔母は私に言いたかったのだと思う。ちなみに、その叔母は友人

の家の後妻になって、その後、家ごと全部相続して、今では優雅な生活を

しているらしい。だから、家に神棚はあるけど、神聖に感じないって言う

なら、別のものが君の神聖な夢の象徴じゃないかな。それを創造すればい

いんだよ。ねつ造でもいい。とにかく自分にとって神聖に感じる匂いのよ

うなものを見つけるか、作り出すことだね。そこからしかインスピレーシ

ョンは得られないと私は、思う」私は垂れ幕を指差してから、「きっとそ

れが夢を見つけることだと思う」と言い終わり演壇を降りようとした時、

一人の男子生徒が手を挙げた。



            



 「あの、先輩」彼は私のことを先輩などと呼んだ。昔の私の面影をして

いるワルだ。「あの、ウィキペディアでは、先輩のご両親には姉妹はいな

いとなっていましたから、叔母さんはいらっしゃらないんじゃないかと思

うんですが、」



  



 「ああ、」私はこんな質問くらいどうってことはないさという感じで応

じた。「そうだ。正確にはね。今、その神聖な叔母をねつ造したばっかり

だから」「て、ことは、今のは全部作り話ですか?」「君もそうすればい

い。夢をねつ造するのは簡単なことだよ。私は今日で、8人目の叔母をね

つ造したところだからね」



  



 20年後、ここの演壇に立っている後輩のワルが出てくることを願いな

がら、私は堂々と先生方の脇を通って外に出た。そしてもちろん、背中で

ガラス窓が割れんばかりの初夏のあられみたいな拍手を浴びながらね。






   *上のイラストから「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

  
   * 「リサコラムの部屋」は10(最後に0)の付く日の連載です。
      時々変更させて頂きます場合はNEWS欄でご案内致します。

p.s.1
 
  自分のことをつい書いているな?と思っている方、正解です。

p.s.2
  また、リサコラムでこれ、好き!というタイトル(漠然としたもので結構です)
  ございましたら、ぜひ、お教えくださいますように。

  AAA、N氏の場合、狐狸相談室、初期のコラム、いろいろご意見を頂戴致しまして
  ありがとうございます。

  必ずご返信致します。下のイラストをからメールの文面に入って頂けます。


                      


  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

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