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リサコラム
連載571回
      本日のオードブル

彼女のアイデア


第1話


「私の民泊、
いかがでしょうか?」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



緑いっぱいの
景色に合うのは
やはりホワイト、
鮮やかなグリーン。
そしてブルーですから、
気取らない自然な色を使って
南フランス風の部屋を作りました。
ワイン蔵にあった古い石の壁もアイアンの
キャンドル型のシャンデリアもすてきでしょう?
白に少しだけ
ベージュ、
グレーを
混ぜた
家具や
猫足の
シンプルな
ティテーブル
雰囲気でしょう?
この私の民泊、いかがでしょう?


 
      
  





        


第1話  「私の民泊、いかがでしょうか?」



 「こんにちは、初めまして、」彼女はiPadを通して私に向かって話しを始めた。


             


 彼女はこの女性専用の民泊のオーナーで、宿泊したいゲストの要請に応じて部屋

の様子をライブで見せてくれるとのことだった。私は興味津々で画面に向かった。


 「あの~お顔が大映りになっておられますが」彼女は親切にも私にアドバイ

スをくれた。


             


 「失礼しました。あまりに素敵なお部屋のようなので、つい、すみません」

「いいえ。ありがとうございます。そう言っていただくとうれしいです」彼女はい

かにも慣れた雰囲気で画面の私ににこやかな笑顔を向けた。


 「本日はよろしくお願いいたします。それではイントロは省略いたしまして

小さな白いエプロンを腰に巻いた彼女は、家事中の、いや、仕事中らしく、手には

ふきんを持ったままで、画面の中の私にお辞儀をした。私も慌ててぺこんと頭を下

げた。


             


 「お泊り頂くお部屋はこのお部屋そのものではないのですが、まったく同じと考

えて下さって結構です」「わかりました」私は期待に胸が高鳴った。


 「まずは、このお部屋の向こうのベランダからは富士山が、」「えっ?見えるん

ですか?」「はい。お天気の良い日であれば、」「なるほど」「いえ、がっか

りなさらないでください」彼女は慌てることもなく、「こちらをご覧いただけます

か?」と、彼女はベッドと反対側のデスクを見せた。「デスクも椅子もこの地域産

でこの部屋のために製作したオリジナルです」と言ってから、デスクの上のパソコ

ンのモニターを示した。


             


 「万一、曇りや雨の場合のために、晴れた日に撮影しました富士五湖と富士山が

このように。さらに近くにはぶどう園もたくさんございまして、お貸出しでき

る自転車もご用意しておりますので、これからの季節にはサイクリングもお楽しみ

頂けますよ」「そうですか。それで、もしかして、お部屋のワインは無料で飲める

とかですか?」私は情報として知ってはいたが、念押しのために聞いてみた。


             


 「ええ」彼女はティテーブルの上に乗っていたワイン開けるとグラスに注ぎ、

私の方に差し出した。「この近くで一番と言われるワイナリーのものです。微発泡

性の巨砲ワインです。冷やして飲むとほんとうにおいしいですよ。このワインは1

本、冷蔵庫にございます。アルコールがダメな方にはぶどうジュースもご用意いた

しております。冷蔵庫の中はコンプリメンタリーでございます」「なるほど、いい

ですね」「はい。しかし、一番の人気はなんといっても、このお部屋自体です。も

ともとはワイン蔵だったため、その名残がこちらに」彼女はワンボトルを元の

テーブルに慎重に置くと、手前に進み出た。


             


 「これがその名残で、100年以上昔に作られた蔵の跡です」そう言うと、トン

トンと調子までつけて石積みの壁を触った。「ふ~んなかなか風情がありますね」

私は半分お世辞を込めたつもりだったが、彼女はとても喜んだ風で、「そうでしょ

う!」と言うと、ぴょんと後ろ飛びでベッドの前に行くと、また説明を始めた。


             


 「最も人気がございますのは、このお部屋のベッドの寝心地なのです。クイーン

サイズで、ベッドはもちろん、寝具もベッドリネンも世界基準の5つ星ホテルに引

けを取らないものです」「世界基準?民泊で、ですか?」「はい。さらに、連泊な

さる場合は、寝具まですべてお洗濯済みのものを使用いたしますので、洗い立ての

寝具で清潔に気持ちよくお休み頂けます。それでたいていの方は2泊以上なさいま

す。まあ、それが一番の自慢でございますね。」


             


 「へ~、確かにそれはすごいことですね。一流ホテルでもそこまでやるところは

ありませんよね」「ええ、あま、出来ませんでしょうね。僭越ながら、常に5スタ

ーを頂いております」彼女は襟元のフリルにまで自信をみなぎらせて、続けた。


             


 「とにかく寝心地が最高で、快眠できるとお客様からはご好評をいただいており

ます。なので、つい朝寝坊してしまうかもしれませんけどね」彼女は「ふふふ」

と笑った。


             


 私はまたモニターに顔を近づけていたことに気づいて、パッと離れた。「ああ、

ほんとうに、素敵で」彼女は私のさらなる感想を待っているように思えたが、

思いつかなくて、「この民泊はどうして始められたんですか?」と職業的な関心か

ら質問をしてしまった。しかし彼女は想定内の質問という様子で答え始めた。


             


 「はい。私のこの実家も昔、ワイン造りをやっていたのですが、すでに2代前に

人手に渡っています。しかしその時、残ったこの場所に私が帰省して住み始め、

そして空いた部屋を利用して民泊を始めたのです。まあ、お小遣い稼ぎと言えば

なんですがインテリアと海外旅行に興味があったもので、ホテルをいろいろと

泊まり歩き、そして、自分の趣味で何とか作り上げた部屋なのです。ベッドの下の

この部分のスカートは」彼女は白とブルーのコントラストが美しいじゅうたんの

上に這いつくばった。「おわかりでしょうか?この部分をベッドスカ―トと呼びま

すが、裾につけた小さなフリル、かわいくありませんか?」彼女はこの民泊ルーム

にあらんかぎりの愛着を披露した。


             


 「なるほど」私は平凡な返事をした。「宿泊料金は確かにかなり高いと思われる

かもしれませんが、センスと清潔感ではどの民宿にもホテルにも、負けない自信が

あります」


             


 「あの~、それでは、ぜひ、お願いしたいのですが」私は丁寧な口調で言った。

「ありがとうございます。しかし、残念なことに、今は1部屋しかないもので、

この先1年、満室なのです」「えっ、1年先まで?さっきは、この部屋とは別の

部屋があると言われませんでした?ここはサンプルルームってわけですか?」私は

不思議に思った。


 「実は、ここは私の部屋なもので、お貸しするのが難しいのです」「えっ?ここ

はあなたのお部屋なんですか?こんなホテルみたいな部屋が?」「ええ、そうなん

です」彼女は今度はエプロンにまで自信をみなぎらせた様子で、ちょっとつまんで

みせた。


             


 「もちろん民泊を始めたときは、自分の部屋はお見せするようなものではなかっ

たんですよ。まあ、つまり「裏」ですからね。でも、他人様のお部屋をきれいに掃

除だけするだけはなんだか悲しく思えてきて、まったく同じようにインテリアを整

えました。そうしたらいろいろと改善点もわかりましたし、改善を加えるとさらに

人気がでてきて、想定外ではありましたが、ここはプロモーションのためのお部屋

にもなってしまいました」


             


 「なるほど、いつも満室だから、見せられないってことですよね?」「その通り

です。だから、まったく同じ私の部屋をお見せして、ご予約を取ることになって、

それで、ありがたいと申しますか、申し訳ないと申しますか、常に満室でまあ、

自分で言うのもなんですが、何事もちょっとしたアイデアということですよね、

それがうまく好循環のレールに乗れば何事もうまくゆくのではないかと、そんな風

に思いますね」彼女は軽やかに笑った。


             


  「それでは、本日はこれで失礼いたします。また来年のご予定が決まられまし

たら」彼女はワイングラスを私の方に向けると、「ぜひ、来年以降、お待ちい

たしております」と言ってから、パチリと「切る」のボタンを押した



   


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
   
新シリーズをはじめました。
  たくさんの方に接するうちにいろんなアイデアを頂戴しております。
  ほんとうにヤクドクだというものですね。

p.s.2
   「ラジオ仕事学のすすめ」で、
  民泊のシステムを知り、とても興味深く思いました。
  ほんとうに世の中にはアイデアが充満していますね。

p.s.3
   いつも一番上のイラストの下のコメントは苦心して
  文字がいろんなイメージを形作るようにしています。
  今日は一回で偶然にもランプの形になりました。
  こんなことは滅多にありません。



  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
             


p.s.4
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
    英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.5
    下は日本語版です。
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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