マダム・ワトソン　My Style

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連載５８８回 　　　　　　 時代は変わり、 変わらないものは、 ここに存する。 第１１話 「ドリアングレイの証言」 木村里紗子のプロフィール マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。 大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。 著書「シンプル＆ラグジュアリーに暮らす」（ダイヤモンド社 紙の本＆電子書籍）（2006年6月） 「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 （電子書籍2014年8月） 道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。 いろいろなインテリアを考えだすこと。 新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。 外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。 ２０年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。 アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。 好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、Ｆ・サガン、 マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。

彼女の 部屋は ワンルームに 少し毛が生えた 狭い部屋だけど とってもおしゃれ。 年中ちょっとずつ変る。 今は黄いろの壁に黄色と白の ストライプの天蓋カーテンに 白く光るフリルのベッドリネン。 窓は黄色に黒い花の刺繍のカーテンと ブルー＆ホワイトのストライプのカーテン さらにイエローのレースカーテンが ふわふわ揺れてる。 ああ、床？ それは、読んでのお楽しみ！

第１１話　「ドリアングレイの証言」 　　先日、僕の呼び名というか、ニックネームが「ドリアングレイ」に変った。 　　　　　　　　　　　 　それも２、3日間のことだったが。その前はずっと「エイドリアン」が僕の呼び 名だった。それはエイドリアン・モンクという強迫神経症の刑事のもののドラマの 主人公の名から取られたもので、数年、彼女はそのコメディタッチのドラマにはま り、以来、僕のことを「エイドリアン」と呼び始めた。 　　　　　　　　　　　 　その僕の呼び名が、「ドリアングレイ」に変った理由は、彼女の友人が「ドリア ングレイの肖像」というオスカーワイルドの長編小説の話を何かのきっかけで話し 始めたのがそもそもの原因なのだが、そのとき彼女は「ドリアングレイの肖像」は もちろん、オスカーワイルドを全く読んだことがなかったことを恥ずかしく思った のだと僕は推測する。さらにもう一つの理由もあるが、それはおいおい説明すると して、ここで敢えて苦言を呈するとしたら、彼女はもっと自分の個性を大事にすべ きだと思う。僕がそんなことをいう資格はないかもしれないけれど、生きとし生け るものに資格のあるなしはないというのが僕の根本的な考え方なのだから仕方がな い。 　　　　　　　　　　　　 　彼女は実に外部の情報や流行りもの、そして他人に左右される。口では流行りも のに振り回されることとは無縁でいるように言うのだが、その実、流行にはわずか に遅れて流されていることを僕は知っている。それは、「ドリアングレイの肖像」 をすぐにiPhoneにダウンロードして読み出したことでもわかる。 　　　　　　　　　　　　 　僕は、その内、彼女はその小説を放り出すと思っていたが、それがよほど面白い ミステリーだったらしく、2，3日で怖い顔をして、ベッドで読みふけった後、僕 のニックネームはドリアングレイから、またもとの、エイドリアンに戻った。よほ ど、怖い小説だったとみえる。これで彼女は気分屋だとわかってもらえると思う。 　　　　　　　　　　　　 　それはテレビを見ている彼女を見ているとさらによくわかる。「世の中、これか ら、どうなるのかしら？」と眉間の３本のしわに苦渋をにじませた次の瞬間、映像 はグルメ情報に転換して、その３本のしわはたちまちにして平たくなるからだ。そ んな彼女の寒い季節の好物は他の女性の多くも好むドリアで、おいしいドリアを出 す周辺の店は網羅するほどに食べつくしている。特に、キノコや栗、シーフードの 入ったドリアに弱い。そんなものを通販雑誌で見ようものなら、すぐにお取り寄せ をするし、帰りが遅くて、夕食を作るのが面倒な時はコンビニのドリアをぶら下げ て帰ってくる。 　　　　　　　　　　　　 　そしてさらに彼女について証言するとすれば、友人の一人が新しいiPhoneの発 売日に並んで手に入れたとき、「エイドリアン、わたし、３８（サーティエイト） じゃないから」と僕に言った。しかし、2，3週間もすると、だんだんと落ち着か なくなってきて、やっぱり、そのiPhoneを買いに行った。その前に「３８（サー ティエイト）」とは、彼女の年齢を意味していると僕は長いこと思っていた。彼女 は38歳なのだろうと。しかし、去年も今年も、そして事あるごとに「私、３８ （サーティエイト）じゃないから」と言うところから、どうもこれは年齢を意味し ているのではないとわかってきた。しかも、独身の彼女はそれより上の年齢のよう に見える。別にその真意を彼女に問いただすまでもないが、最近やっと、３８ （サーティエイト）とは、ミーハーを意味していることが分かった。僕は几帳面な ほうでもないし、ミーハーを定義しようとも思ってはいないけれど、しかし、彼女 はミーハーにちゃんと属すると僕はひそかに思っている。 　　　　　　　　　　　　 　その証拠に、別の友人がモンドリアンというiPhoneケースを買った時も、彼女 はやはり、「３８（サーティエイト）じゃなから」と言っていたが、しばらくする とそのモンドリアンのケースを手に入れた。それは、モンドリアンという画家の絵 を真似した単純なデザインらしい。赤、青、黄が四角な黒枠の中に塗り分けられた 単純なデザインのように僕には思える。僕が推測するに、ピエト・モンドリアンの デザインの復活は、モンドリアン・ルックというオートクチュールのデザインを 1960年代に発表して一躍時の人になったイヴ・サンローランが2008年に亡くな り、その莫大なアートや遺産が注目を浴び出し、モンドリアンが復活を遂げたもの だと僕は思っている。 　　　　　　　　　　　　 　これで、僕の呼び名がつけられるもう一つの理由に、彼女の好物の「ドリア」が 関係していることが容易に推測できるだろう。人は流行っているもの、好きなもの に似た名前の全く別なものに惹かれる傾向があるらしい。アップルが世の中を席巻 すれば、リンゴが売れるように、何の関連性もないのに、名前が似ているだけで 人間の行動が変わるらしいから恐ろしい。 　　　　　　　　　　　　 　それ以来、彼女は部屋の床をモンドリアン柄にしてしまった。彼女は赤、青、 黄、白、黒のタイルカーペットを買って来て、自分でカットして、それを毎晩、 床に貼り始めた。そしてモンドリアンカーペットが完成したとき、彼女はさらに、 モンドリアンを揃えたくなったらしい。 　　　　　　　　　　　　 　「モンドリアン・ルックが復活してるみたいだけど、別に流行ってるからじゃな くて、」と前置きしておいてから、僕にモンドリアン・ルックを無理やり着させ た。 　　　　　　　　　　　　 　それと同時に、「そうか、エイドリアンより、『モンドリアン』の方がカッコイ イよね」というと、僕に、「モンドリアン、お手して。今日から、あなたは『モン ドリアン』よ」と命名した。 　　　　　　　　　　　　 　僕はこの1か月で「エイドリアン」から「ドリアングレイ」になり、「エイドリ アン」に戻り、「モンドリアン」になった。また近いうちに、「エイドリアン」に 戻るだろうと思っている。 　　　 　上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。 p.s.1 　　フランス語では恋人や愛人を意味して、 　　サンスクリット語では、幸せなという意味の、 　　「アマン」というリゾートの代名詞は、 　　アンキラから始まって、アマンダリ、アマンキラ、アマヌサ、 　　アマンガニ、アマンワナ、アマンガニ、アマンサラ....世界中に 　　たくさんのアマンができました。 　　当然、アマンが好きな人が訪れますね。 　　さすが、アマン！。 　　 　　「もの、こと、ほん」は下の写真から。 　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　 p.s.2 　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 　　　　英語版を出版いたしました。 　　　　"Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。 　　　　写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。 　　　　　　　　　　　 　　　　タイトルは、"Bedroom, My Resort” 　　　　Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories: 　　 　Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms 　　　　趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に 　　　　チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに 　　　　E-bookにしていただいたものです。 　 p.s.3 　　　　下は日本語版です。 　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 　　　どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　バックナンバーの継続表示は終了いたしております。 　　書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。 　　どうかご了承くださいますように。

	シンプル＆ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り- 　　　　　　　　　　　　　　（木村里紗子著/ダイヤモンド社　）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。 マダムワトソンでは　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて 　　1,944円にてお届けいたします。 　 　ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 　　　　お申込はこちら→「Contact Us」

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