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リサコラム
連載602回
      本日のオードブル

愛おしいひとびと

第4話


「ある晴れた日に」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




広い窓、高い窓、
ゴージャスなカーテン
そこから見える景色も取り込んで
私のインテリアにする。
朝焼けもいいけど、
夜景もいいから
西向きの
窓もいい。
ソファから
眺めるもの素敵。
でも、その風景を含んで
さらに遠くから眺めるのも、
そんな光景を想像で感じるだけでも素敵。





 







        

第4話 「ある晴れた日に」




 
「まあ、こんな時間!ごめんなさい、私ったら!もう失礼しなくちゃ」ちら

っと腕時計を見た母はゆっくりと、大きなソファから立ち上がりました。

「あら、そうお?まだいいでしょう?もっとゆっくりしてらしてよ。ねえ、

お茶の代わりはいかが?」母の同級生でこの新しい家に越してきたばかりの

葉子さんは母を制するようにソファに手招きしました。


            


 「いえいえ、こんなに長居してしまって、お夕飯の支度の時間まで。ほんと

ごめんなさいね、つい、」母は葉子さんに微笑むと、次に私に向かって、

「瑠未さん、お暇(いとま)するわよ」と優しく呼びかけました。


            


 母が「瑠未さん」と私を呼んだのはそれが最初でした。それまでは「瑠未」

と呼び捨てか、ちゃん付けでした。さらに、「お暇する」という言葉もその時

初めて聞きました。私はとっさに理解できませんでしたが、もちろん雰囲気で

わかりました。それより、初めて聞く穏やかな母の語調にびっくりしたので

す。その時、私は、葉子さんの娘さんで私と同い年の玲奈さんとソファのある

大きな窓際でアメリカの生活の写真を見ながら話し込んでいました。今のよう

なタブレットがない時代で、写真はプリントしたものでしたが、それは私にと

って、とても刺激的な感じがしました。


            


 その当時、
私も玲奈さんも同じ小6でした。さらに玲奈さんは2歳までしか

日本にいなかったため、日本語が多少たどたどしく、しかしその話し方も面

白くて、時間を忘れて話に興じていたのです。それは、この家に越してくる前

10年間ほど、ご家族はアメリカに住まれていたからです。


            


 当時、私たちは『普通の』と言っていい3LDKのマンションに暮らしてい

ました。家族4人で住むには多少手狭な部分もありましたが、私も弟もひとり

ずつ部屋をもらうことができ、不自由な思いをすることもなく、自分はごく普

通の家庭の子供であり、中流的な意識でいました。


 そんな折、母の幼稚園時代からの幼なじみの、葉子さんという方がこの街の

私たちの家の近くに、越して来られることになったのです。それを知った母は

大喜びで、連絡を受けた約1年も前からずっと楽しみにしていました。


            


 葉子さんご一家は日本での新たな暮らしを新築のお家で始めるとのことでし

た。その家は元々、葉子さんの弟さんが住まれていた家で、昔の洋館風の作り

で擬洋館と言われるものだったそうです。そして、葉子さんご一家が戻って来

られるということで、急いでその家を建て替えることになったのです。


 その場所は小高い丘になった、いわば高級住宅地でした。小さな建て売りの

住宅も最近立ち始めてはいましたが、多くは大きな家でそして広い庭のある堅

固な外壁に守られた家ばかりでした。


            


 それから私の母は毎日葉子さんの話を始め、会える時にはどんな服を着てゆ

くのかとか、そんな話も始めました。まだそのお家が建つ1年も前からです。

葉子さんのご家族はずっとアメリカに住んでいたため、子供たちはほとんど日

本語がしゃべれないだろうから、アメリカンスクールに通わせるのだろうと母

は思っていたようでしたが、しかし、春から私たちと同じ公立の小、中学校に

通わせて、日本人として育てていくのだと葉子さんから送られて来た絵はがき

には書かれていました。


 葉子さんは私たちと同じ4人家族でさらに子供たちの姉の玲奈さんは私と同

じ学年で弟のほうも1つ下の学年と言うことで、親近感も湧き、小6の私は

ワクワク、そして日に日に、母親譲りの好奇心が膨らんでいきました。

さらに偶然にも葉子さんの家はちょうど私たちの住む小さなマンションの

ベランダから建築中の家の形はぼんやりと見ることができました。


            


 私は学校帰りにその小高い丘に登っては葉子さんの家がどんなふうに出来つ

つあるのか、毎日のように見学するようになりました。そのうちに玄関のドア

が付き、中が見えなくなってきました。私は足場の悪い場所からこっそり中を

覗いたこともありました。いよいよ周りにお庭もできて完成に近づいてきた

頃、私は学校帰りに見に行くと、きれいな女性と男性が家の中を見学していた

ことがありました。私は急いで家に帰ると母に報告しました。


            


 それからいよいよ、葉子さん一家がアメリカから引っ越してくることになり

ました。母はしかし、意外なほどあっさりした感じでした。1年も前からわく

わくしていたのに、どうしたものかと、不思議な感じを受けました。そして、

それから春休みに入ってしばらくした頃、葉子さんから母に電話が入りました。


 母はとても懐かしい声を上げて、20年ぶりの再会をとても喜んでいる様子

でした。そして母と私は葉子さんから新居にお招きを受けることになったの

です。1週間後の日曜日がその日でした。


             


 母と私は急いで着てゆく服を買いに電車で隣街に行きました。1日がかりで

お店を回った挙句、あまり派手な服はダメよねと言いながらも、派手好きの母

はハイビスカスのようなバラのような花が一面にプリントされたブラウスを買

い、私は反対に地味なベージュのチュニックワンピースを買いました。そして

1週間後、いそいそとお招きに上がったのでした。


            


 まずは玄関のセキュリティにびっくりし、そして、玄関のチャイムにびっ

くりし、玄関の大理石にびっくりし、さらにスリッパはありませんから、土足

で結構ですよと言われたことにもびっくりしました。私たちは土足では上がれ

ず、靴を脱いでその美しい床に裸足で上がりました。そして、広いサロンのよ

うなリビングに入ると、何より大きな窓にびっくりしました。そこには、結婚

式場にあるようなゴージャスなカーテンが掛けられていました。そして何より

驚いたのは、その広い窓から私たちのマンションさえ見える大パノラマが広が

っていたことでした。


            


 それから母は銀のポットから注がれるコーヒーとケーキをいただきながら

昔のアルバムをめくり、時間を忘れて話し込んでいました。時折、母の甲高い

笑い声を何度も聞きました。そんな品のある笑い声を聞いたのはきっとその時

が初めてだったと思います。


            


 
「瑠未さん、お暇するわよ」母は生返事の私にまた声を掛けました。しか

2度とも穏やかで上品な声掛けでした。私はその母の変貌ぶりにも驚きま

した。そして、私は「また遊びに来てね」と懇願するような玲奈さんと葉子さ

んに後ろ髪を引かれる思いで大理石の広い玄関の階段を降りました。


            


 母は小高い丘を降りて私たちの家に帰る間、黙ったままでした。私がどんな

に興奮してしゃべっても、「そう」と言う感じでうなずくだけで、さして興味

を寄せませんでした。そして、マンションに帰り着くと、急いで玄関からベラ

ンダに直行したのです。母は急いで洗濯物を取り込んだのです。私は、あの大

きな窓から私たちのこの部屋が見えることを思い出しました。


            


 私はそれ以来、晴れた日の夕焼けを見るとき、オレンジの夕日に染まった母

の顔を時折思い出しては、吹き出すのです



   




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
 どんな素敵な家なお家にお招きに上がっても、
 どんな素敵なホテルに泊まっても、
 そこに住めるわけではないなら、
 やっぱり自分の家が一番と思えるように
 自分仕様で素敵に暮らせればいい。
 そう思っています。
 


  「もの、こと、ほん」は下の写真から、
           
            


p.s.2
   
 E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   
 英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    
E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
  
 どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。






シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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