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リサコラム
連載622回
      本日のオードブル

2023年ある素敵な街に

第2話

「余裕の街に住む人」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルーの
ストライプの
壁のリビングには
クローゼットの白い扉と
廊下につながる2つの
白いドアが
あります。

そこには
リバーサイドに
ある美しい2つの街の
様子がリアルタイムで
映し出されています。

時は、
2023年。
今から5年先の未来。
ほんのドアのすぐ向こうは
こんな感じです。


 







        

第2話 「余裕の街に住む人」



 「第一印象ではどちらの街がお好みに近いですか?」


           


 Miki
の電話から穏やかな女性の声が聞こえてきた。「う~ん。そうですね。

どっちも素敵で、どちらもよさそうで、よさそうで。すみません。まだ、決め

られないんです」Mikiは少しイライラした声で答えた。


           



 「画像の受信状況はいかがですか?」Mikiはリビングの壁クローゼットの

扉とドアに映した映像をソファに座ったままで眺めていた。電話のスピーカー

から聞こえてくる女性の声はリゾートホテルのコンシエルジュのようなふくよ

かで穏やかな品があった。


          


 「大丈夫です。きれいに映っています。」「そうですか。Miki様のご希望

の条件で探しましたところ、この二つが候補として挙がってまいりましたので」

女性はさらに余裕のある声で応じた。Mikiは反対にせっかちに応じた。

「ええ。そのようですね。しかし二つの街ともよく似ていますね。二つの場所

は近いんですか?」「いいえ、かなり離れています。距離で言いますと、

10,000kmほど」Mikiは近寄って画像を交互に見比べた。「そうですか。

なるほど、地球規模の投資会社さんならではですね。まあどちらも好きです。

アマルフィコーストみたいな丘陵地で。海ではなくリバーサイドですけど。

建物の色も鮮やかだし、緑も多くて、散歩するにも素敵そうですね」「ええ、

右の街は古都と言われるほどに古い歴史ある街ですが、左は最近できた街で

す。」Mikiは少し落ちつた様子で、ふふふと笑った。


            


 「そうなんですね、おもしろい!」「それに、右の街はおよそ1000年前か

らある城壁の街でした。丘の中腹に今でも当時築かれた城壁の跡も残ってい

ます」「ほう、城壁の街?それはすごい」Mikiの声はピンポン玉のようにポ

ンポンと弾んだ。「でもぉ、そんな場所なら観光地でしょうけど、住むには、

ちょっと不便?」


             


 「はい。ご指摘の通りです。右の街は2001年の世界遺産登録以来、ずっと

新たな建物を建てることができなかったのです。世界遺産に登録された街は観

光地としての知名度がぐんと上がりますが、観光化によってそこで生活をして

いた人々の静かな生活が一変しました。その恩恵を受けた方ももちろんおい

でです。この街も10年間はまだよかったのですが、年々高齢化しますし、

もともと高齢化していたため、さらに年々空き家が増えてきました。世界遺産

ですから、簡単に取り壊しも、増改築もできないのです。そしてとうとう廃墟

の世界遺産の街になったというものです」


             


 「廃墟の世界遺産!そんなことがありえるのでしょうか?」Mikiは興奮し

た声を上げた。「当時はそんなことは予測していなかったと思います。世界遺

産に登録されたのですから、ますます発展すると。しかし、観光地化によって

見知らぬ人々が生活道路に入り込むことになり、時に犯罪も起きます。さらに

絶壁の街の不便さは変わりません。つまり観光化されたからと言って住人の暮

らしが豊かになるわけではないのです。若い人たちは都会の「便利な」街に仕

事を求めに出ます。そしてさらに若い人口は減り、空き家が多い建物になり、

いわゆる、幽霊ビルも出て来たのです。そうなると、その現象加速します」


               


 Mikiはしばらくじっとモニターの画面を見ていたが、「でも、街には明か

りが灯っていますよね」と言った。「ええ、今、街再生が始まって2年が経

ちます。自治体が空き家を買い取り、一部屋1ユーロで販売したのです!」

「それはどうゆうことですか?1ユーロというのは?つまり、無料ということで

すが、実際には改装費用を100万から200万円払わなければなりません。

しかし、それにしてもお得なお買いものです。そうして国内、海外からの観光

客に別荘として販売したのです。空き家の改装で地元の仕事が増え、観光地

が定着して来ました。そして2年後の今はこうして、街にまた明かりが灯るよ

うになったのです」


            


 「なるほどね~。しかし、世界遺産の街がそんな状況になっていたとはね。

町並み保存とは住民のためではなくなっているということですね」Mikiは二

つの街をモニターの画面で交互に見比べながら考え込んだ。そして10分ほど

も思案した後で、「それでは、もう一つの街は?」とやっと切り出した。


            


 「この街は右の世界遺産の街のような街を真似て作られた、いわば、模倣の

街です。いわゆる、ハウステンボスがオランダのユトレヒトの街を真似て作っ

たような、そんな街でしたが、一度、破綻しています。それで今、再開発がさ

れている街なのです。世界中にそんな街はたくさんあります」「ああ、ハウス

テンボスみたいなね。1000年続く街として、最初は話題になって、よかった

ですよね。排水を一滴も海に流さないという水処理施設の整ったすてきな街で

したね。しかし、運営会社が破綻すると街はやはり活気を失いますよね」


          


 「ええ、たしかに。それは言えますが、しかし、引き継いだ企業がうまく運

営できているのであれば、」Mikiは女性の声を中断した。「でも、やはり、

負の遺産というか、人々に残る負のイメージは消すことは難しいですよね」

女性は少し間を置いてから、「時が解決するまで待つことになります。人々の

記憶が薄れ、世代が変わるのを待つことですね」と穏やかな口調で答えた。


            


 Mikiは二つのモニターの前をいったり来たりを繰り返した。「つまり地域

再生を目指している名誉世界遺産の街に投資するのか、あるいは、そんな街を

模倣した一度破綻した観光の街に投資するかということですね」女性は変わら

ず朗らかな声で応じた。「ええ。さようでございます。しかし、Miki様、

2023年から始まった地球規模の「ふるさと納税」によりまして、その地域の

魅力的な特産品もたくさん送られてまいりますよ」


             


 「実は、それが一番の楽しみで。恥ずかしいのですが。でも、わたしみたい

に在宅勤務は、自由な時間で仕事をすればいいのだから、楽でしょと言われる

のですが、フリーの労働者は、『成果』ですからね。成果が収入なんです」

Mikiは照れ笑いをした。「おっしゃることはよくわかります」Mikiは少し興

奮気味に続けた。「それに、私には、ふるさとのような場所がないのです。

転勤族の父の元で世界中を点々として、日本にやっと帰ってきたら、また国内

で点々でしょ。私自身はこうして在宅ワーカーだから、仕事があれば、納期が

ありますし。休んだだけ収入は減りますしね。でも、もちろん、仕事は好き

ですよ。だから時々、自分の投資先のふるさとの様子を好きな時にモニターで

観られたらうれしいです。こちらとは時差があるから、違う時間帯で動いてい

る街を見られるのも楽しいし」


            


 女性は、Mikiの言葉を受けて、さらに朗らかな明るい声で応じた。

「ええ。Miki様のように在宅でお仕事なさっておいでの方が時に旅行気分に

浸れたら、私どもにとってもとてもうれしいことなのです」しかしMikiは次

第に不安な気分になって部屋の中をウロウロし始めた。


            


 「あの、すみません。お時間を取って。でも、ますます迷ってきました。

新しい街はもちろん魅力があるし、古い街はその歴史を守ってもらいたい

し、」「Miki様、今ならお試し期間で、3週間、二つの街を見守っていただ

けるサービスがございましてね、その間に投資先をお決めいただけます」

「あら、そうなんです?うれしいけれど、そんなサービスがあるなんて」

「ええ、2020年代はお客様に余裕を与える時代なのです。せっつくような営

業スタイルを取っていたのは過去の時代です。今は『猶予』と言うのがキーワ

ードなのですよ。ごゆっくりどうぞ、ということです」


           


 「なるほど、人生も長くなりましたし、30分以内に注文をしたらこれサー

ビスしますみたいなテレビショッピングにも実際、疲れてきてまして。もう、

ストレス感じながら買い物するのも、せっつかれて生きるのは嫌ですね。自分

の時間をどの程度、自分で管理できるかが賢い生き方だと、最近思っている

のです。だから、うれしい。ありがとうございます。それじゃ、二つの街を見

比べながら、どちらに投資するか、あるいは両方かを決めたいと思います」

Mikiは礼を言うとゆっくり静かに電話を切った



   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
  
   今、ヨーロッパの古い街で、丘陵地の空き家を1ユーロで
  観光客に別荘として売る動きがあるそうですね。
  これは最高の方法ではないでしょうか。
 
  そして、さらに、
  地元の古いお家を次々に買って
  自分たち(主にご主人様)で改装なさり、
  再生されておられる
  midori様とご主人様のお話しを伺い、感動して
  こんな未来の物語を書きました。
  古い家をきれいにして大事に住むということは
  これからのトレンドとして増えてゆくことだと思います。
 
 

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、
           
            


  p.s.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             (木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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