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リサコラム
連載651回
      本日のオードブル

彼女たちの部屋

第11話

「もっと光を」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



ぴかぴかの床に
黒いモダンな絨毯
白い螺旋がポイント
そして、白い木製の
大きな天蓋ベッドと
白いナイトテーブルが2台
ベッドの向こうは深海のような
壁が見えます。
大きな窓には
白いカーテン
さて、ここはどこのリゾートでしょうか?
 







        

第11話  「もっと光を」




 
「先生、今日はご相談があってお手紙をいたします。メール全盛の時代

ですが、こんなことをメールではとても書けないからです。と言ってもそれほ

ど驚くほどのことではないかもしれません。私以外の方にはわからなくてもよ

い問題だからです。なんだ、そんなことなの?と、先生から一蹴されるかもし

れません。それでも構いません。


            



 私は友人ができない、孤立無援な数十年を送ってきました。かといって、孤

立無援が嫌いというわけでもないのです。小学校の、いえ、幼稚園生の頃から

そんな風で、いつも夢みているようなとか、集中力に欠けるとか言われてきま

したから、自分の世界に籠ることは嫌いな方ではありません。いえ、好きと言

っていいと思います。それは今日の本題とは違うのかもしれませんが、先生の

ご著書では、常によき友人や理解者の重要性を強調なさっておいででしたので、

その点では、先に申しました通り、その正反対のダメな部類の人間です。



 私によき友人、理解者ができない理由の一つに挙げられるのは、簡単に言え

ば、『空気が読めない』ということです。しかし、空気が読めないというのは

全くの真実ではないと私は思っております。極端な例ですが、お葬式の際に、

楽しそうな話題をしゃべり出すようなことはしません。それは不謹慎だとわか

っています。ということは、まんざら空気が読めないというわけではないとい

うことがお分かりだと思います。自己弁護のように聞こえるかもしれませんが

空気が読めないわけではないのです。それは、私のこの性質を表す適切な語句

が他にないのだと思います。


            


 しかし、上司、同僚からは空気が読めない人で通っているのは事実です。周

囲からは、「なに?」とか、「はっ?どういうこと?」「意味がわからない」

とか言われることがたびたびあります。それは将棋の棋士のように10手先を

読んだ結果の突飛な発言というような、頭の良さから来るものではもちろんあ

りません。それは私自身が一番よく分かっています。その反対と言っていいと

思います。


            


 私のこの症状のきかっけは、学生の頃、ある本を読んだことから始まりまし

た。以来、『空気を読めない』人種に分類されるようになってしまったのです。


            


 それは、星新一のショートショートの一つでした。そう言うと、その本のタ

イトルは?と思われるでしょう。しかし、タイトルは不確かなのです。細かな

描写も実際の小説とは違うかもしれません。私にとってタイトルも細かな描写

もさして問題ではないのです。と言いますのは、小説の主人公に私が乗り移っ

たかのごとくに心が通じ合えばそれでいいからなのです。


            


 その物語は、通勤電車の中で普通に見かける中年サラリーマンの話です。彼

は毎日、美しい奥さんが待つ温かで美しくて清潔な大きな家に帰ります。玄関

のドアを開けると、いつも変わらずにこやかな奥さんに迎えられます。そして

毎晩、リビングのロッキングチェアなんかに揺られながら穏やかに過ごすので

す。しかし、彼にはもう一つの現実の家がありました。それは、子供が泣き叫

び、散らかった汚く狭い家です。彼にとって、美しい奥さんが「おかえりなさ

い」と言って迎えてくれる美しく清潔な家がもちろん理想に違いありません。

しかし、現実のあまりの厳しさ、切なさのために、そしてその夢の生活を切望

するあまり、無意識の中で現実と見分けがつかなくなり、とうとう、現実と夢

の二つの世界で生きるようになってしまったのです。


            


 私はつまり、その中年男性サラリーマンと同じ状況だと言えばお分かりだと

思います。私は仕事中でも話の途中でも、その夢の世界に行ってしまうのです。

現実の難しい問題から逃れられるその正反対の場所にです。そのため、全く通

じないようなセリフを吐くことになってしまうのです。


            


 私の夢の部屋とは、海底のような深い濃いブルーやグレーの波の壁に、真っ

白なカーテンがかかっている部屋です。部屋にあるものは白い木枠の天蓋のベ

ッド1台とベッドの両脇にそれぞれ1台ずつ置かれた白いシンプルなナイトテ

ーブルだけです。ベッドの上にはぴんと伸びた白いカバーがかかったふかふか

のおふとんと、やはりぴんと伸びた白いピロケースが掛けられた枕がたくさん

並んでいます。床は磨き上げられた天然木で鈍い光を放り、ベッドの下には周

囲に白い螺旋の模様が描かれたモダンアートのような黒い絨毯が敷かれていま

す。私はいつでもその夢の部屋を絵に描くことができます。同封した絵がその

ものです。そしてその部屋のインテリアも変わることがありません。それがま

さに、私の分身ともいえる私の別宅だからなのです。


            


 先生、もうお察しのように、現実の私の部屋はその正反対です。ちぐはぐな

色と形の家具が四角な部屋にいろんな角を生み出している狭い部屋です。その

上、床には雑多なものが散乱しているため、下を見て歩かないと踏んづけてし

まいます。まあ、そのせいで汚れた床を見なくて済むとも言えますが。


            


 ベッドの上にはぴんとしたシーツなどとは無縁の薄汚れた雰囲気でねじれて

丸まったふとんが乗っています。そして10数年洗ったことがないので、最初

の状態はもうわかりませんが、せんべいのようになった枕が一つです。ふとん

の上にはさまざまなものを発見できます。本や脱ぎ捨てたパジャマやクリーム

や化粧水、パソコンまで…、もう気分がお悪くなるでしょうから、この部屋の

話はここでやめて、再び、もうひとつの部屋の白いドアを開けて中に入りま

しょう。


            


 白いドアを開けたとたん、摘みたてのジャスミンの香りがほんのり漂って

きます。私はすぐに少し冷たいその空気を肺一杯吸い込むのです。その空気は

清らかで美しく、耳には穏やかな波の音が入って来ます。そこでは、私はいつ

も優雅にパジャマとローブを羽織っています。


            


 しかし、不思議なことに白いカーテンはいつも閉じられているのです。あの

カーテンの向こうは何があるのか?海なのか、砂浜なのか、森なのか、それと

もバラの庭なのか、私は白いカーテン越しにぼんやりと輝く光景をすぐにでも

見たいという気持ちにいつもかかれます。しかし、いつも、その窓には辿りつ

けないのです。体がそこから先へは動かないのです。


           


 そしてその白い部屋に入る時は、決まって会議中や困った状況、難しい課題

を出された時、そして、上司に叱られている時なのです。そのため、その上司

から怒鳴られたり、説明や反省を求められたりしても、私には何のことだかわ

けがわからず、うわごとのように「カーテンを開けましょうか?」「もっと光

をいれないと」などと言ってしまうのです。だから、『空気を読めない』とは

違うと思っているのです。




   


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
   
    実は私の寝室の模様替え予定の部屋です。
  
p.s. 2  
    星新一の物語はSFのようで、しかしとても現実的。
   学生の頃、とてもはまりました。


  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2019年3月号です。
           
           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             (木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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