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リサコラム
連載750回
      本日のオードブル

ホテル・ド・ルーヴル

第1話

「新しいアシスタント」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




濃紺の
天井に
反射する
クリスタルの
シャンデリアの光
ブルーグレーの壁
ダークライラックの絨毯
アイボリー、ダークピンクの枕が
競い合うように並ぶ白く輝くベッドと
左右にはシフォンレースの3重奏
奥行き感を感じさせる
ベッドルームは
ロマンチック
ミステリアス
いよいよ
待ちに待った
来客のようです。


 







        

 第1話 「新しいアシスタント」




 静かな部屋の中に軽いノックの音が2回聞こえた。部屋の中に立っていた

小柄なマダムは「どうぞ」とドアに向かって声をかけた。


            


 ぴかぴか光るドアノブがぐるりとゆっくり回転し、27,8歳に見える

女性が入って来た。「失礼いたします」「どうぞ、どうぞ、こちらへ」来客

はちょっと驚いたような表情で一瞬、ドアの前で立ち止まった後、すぐに

部屋の中へ一歩足を踏み入れた。濃いライラック色の絨毯が女性のローヒー

ルを飲み込んだ。


            


 マダムは乳白色のテーブルの透明な椅子を引くと「どうぞ」と言った。

「失礼いたします」女性は遠慮気味に軽く腰を掛けた。「お飲み物は何を召

し上がります?」「いえ、どうか、お構いなく」女性は少し腰を上げ気味に

部屋の奥のマダムに声をかけてから、改めて部屋を見渡した。そしてさらに驚

いた表情で、椅子から立ち上がった。「あの、私、こちらに面接にうかがっ

た者ですが、お部屋を間違えてはいませんでしょうか?」「いいえ、間違え

てなんておられませんよ」「そうですか、よかったです」若い女性は椅子の

背中に置いた小さなハンドバッグを押さえながら椅子にまた腰かけた。


            


 「コーヒーなら、カフェ・ラ・テ、エスプレッソ、アメリカン、紅茶な

ら、アールグレイ、イングリッシュブレックファースト、オレンジペコー、

ダージリン、もちろん、そのロイヤルミルクティでも」「いえ、そんな

お手数をおかけしては」女性は慌ててキッチンに体を向けた。そして、

「何でも結構です」と言い直した。「どうぞ、遠慮なさらず」マダムはシル

バーのポットを持ったままで奥の小さなキッチンカウンターの前で女性に笑

みを返した。女性はすぐに、「それでは、普通のコーヒーをいただけますで

しょうか?あの、普通というか、何でも結構です」と言い直した。「それで

はおいしいコーヒー、すぐにお持ちいたしますね」とマダムはゆっくりとし

た動作で、コーヒーを入れ始めた。部屋中にコーヒーの甘く香ばしい香りが

立ち込める。


            


 3,4分後、マダムは白いポットとカップ2つをテーブルの上に置い

た。「恐縮です」女性は頭を下げ、マダムは「いいえ」と言った。そして二

人は丸いテーブルに挟んで向か合った。


            



 
「あの、こちらが履歴書です」女性は両手で白い封筒をマダムの前に差し

出した。「頂戴いたします」マダムはそう言ってから、「さあ、どうぞ」と

女性にコーヒーをすすめた。「ありがとうございます」女性は一口飲んでか

ら、また部屋を見渡した。クリスタルのシャンデリアが輝くその部屋には3

色のシフォンレースのようなカーテンに囲まれるようにベッドが1台あり、

両サイドのテーブルの上には白いランプスタンドが光っていた。そしてベッ

ドの上には、アイボリーやダークなピンク色の枕やクッションが載っていた。


            


 
「あの、ほんとにステキなお部屋にお住まいですね。募集内容から想像は

していましたが、まさか、こんな素晴らしいお部屋にお住まいとは、いえ、

失礼いたしました。何と表現したらいいのか、夢のようで、ちょっと頭がぼ

うっとしてしまって」そのたどたどしいしゃべり方から女性はかなり緊張

していると察したマダムは軽く笑いながら、「ご覧の通りですが、あなたの

お好みにはどうかしら?」と尋ねた。「こんな素敵なお部屋のお掃除ができ

るなんて、夢のようで、ほんと幸せです。いえ、いえ、できることになれ

ば、ほんとうにうれしいですし、幸せです」と言い直した。


            


 
マダムは品のある笑みを浮かべていたが、「それでは履歴書を拝見いた

しますね」と言ってから、ゆっくりと時間をかけて読み始めた。その間、女

性は驚きの表情で部屋の中を見渡していた。マダムはゆっくりと履歴書の紙

を封筒にしまうと、「あなたの経歴は素晴らしいわ」と言った。「えっ?そ

うでしょうか?」女性は予想外の反応に驚いて、マダムの顔を見た。

「いえ、大した経験もありませんし、高学歴でもなく、私でお役に立てる

かどうか、自信がありませんが、採用いただけたら、一所懸命にがんばりま

す」と答えた。「明日からでも来れますか?」とマダムが聞くと、「は、

はい。もちろん、大丈夫です」女性は慌てて答えた。「実は、20年勤め上

げたアシスタントの女性がお母様の介護のために、転居することになって、

急でほんとうに申し訳ないのだけれど、明日からでも来ていただけたらあり

がたいのだけれど」マダムは申し訳なさそうな表情で両手の平を胸の前で重

ね合わせた。「あの、ということは、合格ということでしょうか?」

「ええ。合格です。あなたがよければ」「ええ、もちろんです。明日から参

ります。お掃除は得意ですが、他にこれと言って特技はありません」「それ

で結構です」マダムはそう言うと、すっと白い右手を出した。女性は慌てて

ポケットからハンカチを出すと手を拭いてから、右手を出して握手をした。


            


 
「あの、何て表現したらいいのかわかりませんが、この素敵なベッドル

ームは、まるで、マリー・アントワネットか、レディ・ガガか、いえ、変な

例えですみません。ボキャ貧で、恐縮です」女性はペコリと数回頭を下げ

た。マダムはクスクス笑いながら、「それはうれしいこと。マリー・アント

ワネットか、レディ・ガガ、ずいぶん年代が離れているけどこの部屋は

ベッドルームと小さなキッチン、小さなバスルームだけのお部屋なの。イン

テリアはそうね、クラシック音楽の方が、ポップスより似合うかもね」と言

ってクスっと笑った。


            


 「もう、ほんとに、ほんとにステキです。まるでお城のようで、シャン

デリアに、カーテンが何重にもなっていて、枕も何個もあって」女性は

また部屋の中を眺めた。「それはうれしいわ。実はインテリアが大好きな

の。まあ、女性はみんな好きよね~。でも、ここの住人の方はみなさん変

った方ばかりだから、お世話も大変かもしれないけれど、あなたならがんば

ってこなしていけそうだから」「ありがとうございます。ほんと、がんば

ります。しかし、ほんとうに、きれい!優雅と言うのでしょうか?女子

ならみんな憧れると思います」「それはありがとう」「もしかして、マンシ

ョンの住人の方もこんなお部屋にお住まいなのでしょうか?」「それはいろ

いろのようね。好きなテイストは人それぞれだと思うから。でも、みなさん

いい方ばかりだし、ここは普通のマンションではないし、もちろんホテルと

いう名前だけど、普通のホテルとはまるで違うどこにもないスタイルの集合

住宅なの。住人の方々は私の厳しい目で選んだ将来的に有望な若い人方ばか

りなのよ。あなたみたいにね。しかし、有望とはいえ、夢と現実の生活を両

立させるのが経済的に難しい人たちだから、私ができる範囲で応援している

の。まあ、これからいろいろお話ししてゆきますけどね。それで何か質問は

ないかしら?」


            


 
「はい。先生のアシスタントで雑用、掃除、家事も兼ねるとありました

が、それは全く異存ありません。しかし、あの住み込みも可となっていまし

たので、ここのマンションに屋根裏部屋みたいな部屋があるということで

しょうか?」女性は少し遠慮気味にマダムの顔色を見た。「ええ、住まいの

件ね、あなたの好みに合うならだけど、その、ナミコさんいうところの、

マリー・アントワネットか、レディ・ガガのベッドルーム?ナミコさんが

よければ、このお部屋を無料でお貸ししますが、どうかしら?」マダムは

ナミコの返事を待った。


            


 ナミコは口を半開きにしたままであっけにとられていた。「あの、確認

ですが、このマリー・アントワネットか、レディ・ガガの部屋にお家賃無し

で住み込めるってことですか?いえ、すみません、まさかそんなことは

私の聞き間違いですよね?」


            


 
「いいえ、聞き間違いではなく、その通りです」マダムはゴールドのリ

ングのついた鍵をテーブルの上にそっと置いた



  



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 
 新しいシリーズを始めました。連載です。
ホテル・ド・ルーヴルという名の集合住宅で働き始める
アシスタントに、どうか、軽めにご期待を!


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年2月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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