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リサコラム
連載1007回
      本日のオードブル

『千夜と千日』

第8話

「あの絵」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



青い壁の中に

黒い壁、

その中にさらに、

海のようにも見えるモダンな絵

しかし、

その前の白いコンソールテーブルも

さらに、飛び込もうとしている

女性もこれも絵?


 



第8話 「あの絵」



 「ほら!どうした!起きろ!」私は夜遅く帰ってきた夫に肩をゆす

られ、やっと気が付いたらしい。


            


 その金曜の晩、私は新しいプロジェクトの大きな仕事に一段落が

ついて、疲れ切って家に帰り着いた。そして、玄関のドアを開けた

あたりところまでは覚えていた。しかし、その先は記憶がなかった。

その時間から計算すると、およそ、1時間ほど、私は玄関先の絵の

前で床に打ちのめされるかのように倒れ込んで眠っていたらしい。

片足にはまだパンプスの先が引っかかっていたという。


            


 そのひと月ほど前、初めて訪れた祖母の姉である伯母の家の玄関

で私は度肝を抜かれていた。こんな片田舎に、こんな豪邸があるの

かと、私の家とは比べる方が野暮なその豪華さに。もちろん、他の

親戚縁者、友人の家でもこんな豪邸を見たことはなかった。しかし、

自分の娘、息子が成人する年齢になるまで、どうして父も母も、祖父

母もこの伯母の豪邸のことを教えてくれなかったのか?と。95歳の

誕生日を控えた伯母の家にひとり招かれた私は吹き抜けのホールで、

手土産の袋を持ったまま、ミントかセージか、ラベンダーか、そんな

すがすがしい清浄な空気にぞっとするくらいに穏やかに包み込まれた

まま、驚きのあまり身動きさえできなかった。


            


 この伯母、祖母の姉にはミドルネームがあった。戦前、私の曽祖父

に当たる祖母の父は南米に渡ったそうだ。その後、成功を納めて、一

時日本に帰国すると、18歳だった曾祖母と結婚してまた、南米に戻

り、その後3人の子供と共にアメリカに渡ったが、子供たちを日本の

学校に通わせようと帰国し、自分だけはすぐにアメリカに戻り、かな

りの富を得たらしい。その後、家族をアメリカに呼び寄せたが、しば

らくすると太平洋戦争が始まり、敵国人となった日本人は強制収容所

に入れられるという話しから、家屋敷、すべてを置いて、2カ月かけ

て日本に戻ってきたという。その時、おなかにいたのが、私の祖母で

彼女は日本で生まれ育った日本人で、英語はまるでしゃべれない。

しかし、すでにこの世にはいない伯父、そして、この伯母共にアメリ

カ国籍を持っていて、ミドルネームがある。そんなファミリーヒスト

リーは小さい頃から何度も聞かされてきた。


            


 その後、この伯母だけが単身、アメリカに渡り、数十年後、日本に

帰国、一時期は親戚の家を転々としたことは祖父母が誰かに話すのを

耳にして知ってはいたが、その後のことはまるで知らなかった。た

だ、なんだか異人館の匂いのするアメリカナイズされた祖母の姉と

いうイメージだけが私の中にぼんやりとあった。


 そんな伯母のうわさ話を聞かなくなって四半世紀以上経っている

が、一体、どうしたら、こんなにお金持ちになれるのか?さらに、

自分が50歳を過ぎる年齢になるまでその後の伯母のことを誰も話

してくれなかったのか?とそんな疑惑が、その麗々しい吹き抜けの

玄関で一気に噴出した。しかも、初めて会うのが、95歳の伯母だ

なんて!これにはきっと何かがある、何かわからないが深いわけが

ある。そう思わざるを得なかった。


            


 戦後の話は、祖父母もあまり多くを語らないまま、この世を去っ

たため、ここで真実を聞き出すのはおそらく難しいだろうというのは

わかった。だから、いきなりの対面にどう、挨拶をしたらいいのか、

どんな話をすればいいのか、そして、どうして姪の私だけが今回、

呼ばれたのか、それがまるでわからぬまま、高い天井から下がるシ

ャンデリアを私が呆然として眺め上げていると、お手伝いさんらし

き人が玄関に出迎えにきた。そして、バラの造花があしらわれた繊

細なデザインのサンダルを勧めた。伯母はすでに足も不自由になっ

ているらしいことは聞いていたため、私は言われるままに、サンダ

ルに履き替えて、絨毯敷の廊下を歩いた。長い廊下を歩きながら、

「遠路はるばる、お疲れでしょう」「いえ、いえ、すばらしいお家

ですね」とかいう社交辞令を交わしたあと、彼女の後について部屋

の中に入ると、高さ5、6mほどもある、折り上げ天井からきらめ

く巨大なシャンデリアがぶら下がる、私の生きる世界とはまるで別

世界の空間に入った。


            


 おそらくは、ここは客間とかサロンとか呼ばれる部屋だろう。

2、30人は裕に座れるだろう巨大なソファが3面の壁を背中に

中庭を向いて鎮座している。そして中央にはまた、私の小さな寝室

が丸ごと入りそうなくらいの巨大なテーブルがあった。


            


 あ然としていた私に、「どうぞ、お好きなところに」と背後の

少し遠くから声が聞こえた。「ああ、どうも」私は振り向いてそう

答えたが、いったいどの辺りに座れば良いものかわからず、短い方

のソファの端っこから3人目位のところに恐る恐る腰掛けた。そし

て座った瞬間、正面に見えた不思議な現代アートのような絵画に目

がくぎ付けになった。


            


 それはどこまでが絵なのか、壁なのかわからないような一種の

だまし絵のような構図で、人間離れした髪の長い女性が、オーガン

ジーのような薄いドレスを裸の上に1枚まとって、両手をまっすぐ

に伸ばし、白い猫足のコンソールテーブルの上にかかった額縁の中

に、今、まさに飛び込む瞬間のような絵だった。その額縁は色分け

された深さを感じない4色で塗り分けられた平板に見えるもので、

飛び込むことはできないものに向かっているような不安定感が、絵

全体をさらに奇妙にしていた。じっと見ていると、私自身が吸い

込まれるよう感覚になった。


            


 「お疲れになられたでしょう?庭で採れたハーブティーでござい

ます」そう言うと、先ほどのお手伝いさんが私の前にお茶のポット

とカップ&ソーサーを置いた。私は何をしゃべっていいかわからな

いまま、「何だか、引き込まれるようなすてきな絵ですね。有名な

作家さんの絵でしょうか?」と尋ねた。すると、お手伝いさんは驚

いたような顔で、「そうですか、それはマダムが喜ぶと思います。

褒められる方はめったにいらっしゃいませんから」と答えた。私は

「詳しくないんですが…だた、なんとなく、異次元の世界に誘われ

るような、運気のようなものを感じるというか…」と、適当なこと

を言った。そして、しばらくその絵のことを話した後で、彼女は申

し訳なさそうに、「せっかくお越しいただいて恐縮ですが、マダム

は今日、あまりお加減がよくないとのことで、お会いになれないそ

うです」と言うと、何度もお辞儀をして、私の労をねぎらった。私

は「そうですか」とだけ言って、お茶だけいただくと、また、3時

間かけて電車とバスを乗り継ぎ、家に帰った。


            


 それから、間もなく、家に「あの絵」が何の連絡もなしに送られ

てきた。ふたりの運転手が絵を抱えて、「ここがいいですね」とい

うと、有無を言わさず、玄関の突き当りの壁に取り付けた。そして

そのことがあった3日後、伯母が亡くなったという連絡があった。


            


 後日聞いた話では、もう、先が短いとわかった時点で、絵も家具も

大きなものは貰い手が決まっていたそうで、最後に残ったあの絵だけ

が私の元にやって来たらしかったが、その絵には伯母の激動の人生を

想像させるメッセージが添えられていた。


            


 「この絵はニューヨークにいた時に、どうしても欲しくて手に入れ

たものです。売れば、いくばくかのお金にはなるでしょうけれど、

持っているに越したことはないと思います。この絵のおかげで、これ

までアメリカでも日本でも、いろんな事業に挑戦し、成功を納めるこ

とができたような気がするからです。ほら、不可能なことに飛び込ん

でいるようなそんな絵でしょ?ただし、あまりに強いエネルギーを発

するので、弱気なときは、打ちのめされることもありますから、その

点だけはご注意なさいね、くれぐれも






   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 10人兄弟、姉妹のお客様の実話を元に…。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2026年2月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































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-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

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