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リサコラム
連載542回
      本日のオードブル

饒舌な場所


第6話


「ラウンジ2020」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



正面の
大きな窓からは
高い樹木が並び、
森の中にいるようです。
そして薪をくべる暖炉の横には
スタッフが置いて言った本が
たくさん並んでいます。
ラベンダー色のソファが
並び、ミントブルーに
こげ茶の縁取りの
モダンな絨毯。
そうです。
ここは
ラウンジです。
それもホテルではないのです!
時代はというとちょっとだけ先の
未来なのです。


 
      
  





       


第6話
 「ラウンジ2020」




 3方向を緑に囲まれたざっと100平米はありそうなラウンジのコーナーでわっ

という歓声が上がった。そこにはお茶とお菓子を囲んで談笑している数人の女性た

ちがいた。みんなお菓子を手づかみでぱくついている。そしてあっという間にテー

ブルの上のお菓子はなくなり、それぞれが立ち上がると、また楽しげに笑いながら

散っていった。


              


 暖炉の脇の書棚のある場所では本を抜き差ししながら、けっこう大きな声で会話

を交わしていた中年の男性2人がいた。立ち飲みでマグカップのコーヒーを飲み終

えるとカウンターに戻し、しゃべりながらラウンジの出口から消えた。


              


 入れ違いにやって来た男女4人はラウンジの隅のバーカウンターに座ると、パス

タにサラダを山盛りにした遅いランチを注文して、ひとしきり何かの話で盛り上が

り、そのあとはやはり、皆、すっと出口から消えていった。


 また次に、どう見ても時間を持てあましていそうな白髪の男性がやって来た。

天井から床まで切られた窓から外の緑を眺めながらオーダーを取りに来たボーイに

「今日は最高の天気だよね」と言った。ボーイがケーキセットを持って男性の元に

戻ってくると、「一緒にどうかね」と男性は言い、ボーイは「それではちょっとだ

け」と言って、軽く腰かけると少し話をしてから、立ち上がった。その男性は瞬く

間にお菓子を平らげてしまうと、「なんとも、忙しいものでね」とため息をついた

あと、忙しいとは思えない、ゆっくりした足取りでラウンジを出ていった。


               


 また別の若い男性2人がやってくると1分ほど暖炉の前で話してから、一人が出

てゆき、もう一人もすぐ後で出て行った。


               


 次はベージュのスニーカーを履いた女性がピンクのヒールの女性を従えるように

入って来た。そして、だれもいなくなった暖炉の前のソファ席に座ると、ボーイの

方に目配せをした。すぐにボーイはくるくると丸めたおしぼりを、まずはピンクの

ヒールの女性の手の中に広げた。次にスニーカーの女性の手の平に広げた。「98

%殺菌できるおしぼりです。でも、皮膚に負担はありませんからご安心ください」

とスニーカーが言うと、ピンクヒールは手に乗ったおしぼりを鼻に近づける「う~

ん、いい香り」と言った後、うれしそうな顔をした。


               


 それから3分後、二人の間のバーズアイのテーブルの上に、アフタヌンティのセ

ットが並んだ。「ちょっと昔は」スニーカーの女性は言った。ピンクのヒール

は「はい」というとテーブルの上にノートを広げた。「ああ、どうそ、ご遠慮な

く」スニーカーはそう言った後で、テーブルの上のスコーン、ケーキとサンドイッ

チの並んだケーキスタンドを指して、「全部で300kcalです。砂糖もバターも不使

用です。それにこれで一日分の主要栄養素の半分は摂取できます。まあ、それは余

計なことですけどね。ああ、どうぞ、手づかみで」と、スニーカーはつかむものを

探しているような様子のピンクヒールに向かって言った。


              


 「手づかみで?」「ええ。もちろん。その昔は、ナイフとフォークを使って食べ

ていたらしいけれど」とスニーカーは言った。ピンクヒールは「遠慮なく頂きま~

す」というと、小さなチョコレート色のケーキをぱくっと口に運んだ。「わ~、お

いしいです。すっごく!ほんとですか?砂糖も、バターも使っていないなんて!ま

るでチョコレートケーキそのものだわ」ピンクヒールは口元を抑えながら言った。

「ええ。これを昼食にする人も多いんです。それに、サンドイッチのきゅうりはう

ちの農園で作ったものです。そして、そのぉ、」スニーカーはベージュ色したケー

キを指さした。「チーズケーキもどきです。豆乳と大豆で使った純植物性です。で

も味は最高ですよ」とスニーカーが言い終えるか終えないうちにピンクヒールは、

ぱっと手でつまむと、チーズケーキもどきを自分の膝のナプキンの上に置いてから

口に運んだ。


               


 「なるほど、これはおいしい!う~ん、ほんとに、ほんとのチーズケーキみたい

です」と感嘆の声を上げると、広げたノートにさらさらとメモをとってから、また

「さいっこう、ですね」と言った。「それにスコーンだけど」とまたスニーカーが

言い始めると、ピンクヒールはまたも、さっとスコーンをつまむと半分に割って口

に運んだ。


 「うん、おいしい!それにしっとりしてますね~。何もつけずに、こんな味が出

せるなんて、ほんとすごいことですね~」とほおばると、至福の表情を浮かべた。

「よかった。お口にあって」とスニーカーはごくさらっと言った。


               


 それからピンクヒールはお茶をごくんと飲み込むと急に姿勢を正した。「それで

は質問をさせていただきますが、アフタヌンティのデリバリーサービスを始められ

たのはどうしてですか?」「う~ん。自然の成り行きだと聞いています」とスニー

カーはそう言ったあと、「つまり、みんなが楽しくなるからでしょう」と付け加え

た。ピンクヒールはノートに「自然のなりゆき。楽しくなるから」と書いた。

 それからおよそ10分後、ケーキスタンドの上には何も残っていなかった。


               


 「大変、ごちそうになりました。デリバリー専門のアフタヌンティがこんなにお

いしいなんて、思いもよりませんでした」とピンクヒールがうれしそうな表情を浮

かべると、スニーカーは「『アフタヌンティ』ではなくて、『ベジタヌンティ』と

書いていただけます?」とピンクヒールのノートを覗き込みながら言った。「ああ

はい。そうでした。失礼いたしました。『ベジタヌンティ』ですね。そうでした」

ピンクヒールはノートに大きく、ベジタヌンティと書き直すと、「ああ、それで、

さっき、『ちょっと昔は』って言いかけられておられたのは」とピンクヒール

はノートから目を上げた。


               


 「ああ、それですか、」スニーカーは大したこともないような表情で、「ちょっ

と昔は、高級ホテルのアフタヌンティに行くしかなかったようですけど、私どもは

そのころすでに、社内にラウンジを設けて今日召し上がっていただいたみたいなア

フタヌンティを習慣化させていたのです。それからスタッフの要望で、ベジタリア

ンミール、ベジタリアンのアフタヌンティも始めました。それなら、お隣のそんな

ラウンジのない会社にデリバリーしたらどうかと話が出て、始めたのです。その内

社内にラウンジみたいな場所を設けるところが増えてきましたから、それで本格的

にデリバリー部門を立ち上げたら、それが軌道に乗って本業を追い越してしまった

んです。『ちょっと昔は』っていうのは、職場で社員が優雅に楽める場所がなかっ

た時代のことです。ストレス発散は居酒屋、グルメ、旅行、スポーツしかなかっ

、そんな時代のことですけどね」スニーカーはお茶を一口飲んでから、「まあ、

昔のことですけど」と言うと、ピンクヒールも「なるほど、そんな頃、ありました

ね。たしか2020年くらいまででしたかね」と言った。


               


 「ええ、そうそう、ちょうどそのオリンピックの年でしたから、だからここに、

『ラウンジ2020』ってつけたんです」スニーカーはそう言うと、「今は1年があ

っというまですから、2、3年前は懐かしい時代ですね」と付け加えた。「ああ、

そうでしたね。会社って楽しくない場所だった時代のことですからね」とピンクヒ

ールはくすっと笑い、「ええ、懐かしいわ」とスニーカーも笑った。


              


 「あと300kcl追加しましょうか?私も応援しますけど」とスニーカーはスニー

カーを脱ぐと、ボーイの方に目配せをした




      


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
 こんな時代が日本に、世界中にやって来て欲しいです。
 みんなでお茶とお菓子で語らえる優雅な環境が社内にあるなんて
 いいですね。
 とはいえ、私たちはよくお客様とお茶で語らっています。



  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
           


p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
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