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リサコラム
連載161回
本日のオードブル
リゾコの
ミステリアス紳士録
12

反逆者たちの魅力学


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに勤務し、400名以上の顧客を持つカリスマ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
17年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。
好きな作家は夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、マルセル・プルースト
      
  
  「ぜったい当たるお靴占い?」
  「ヤシの木に靴がひっかかれば、金運がつくらしいわよ」

            
 
      
  




反逆者たちの魅力学




 カメラの雑誌をめくっていたら、巻末にモノクロームの写真が載っていた。なんと

ロバート・キャパが撮った秘蔵写真ではないか!わたしは驚いて夢中で読んだ。

キャパが来日したのは、1954年4月。その時、熱海の温泉に立ち寄った折に、

撮った写真だという。浴衣にどてらをひっかけた男性が、おもちゃの鉄砲のような

ものを持って、ゲームの標的を狙い撃ちした瞬間の写真であった。すでに半世

紀が経っているとはとても思えない、まるで昨日のことのような写真に思えた。

 ロバート・キャパは歴史上貴重な戦争写真をたくさん撮った戦争カメラマンであ

った。しかし、この1ヶ月後の1954年5月25日に、彼はベトナムで命を落とすこ

とになる。そう思えば、写真とはなんと非情なものよ。私は彼の著書『ちょっとピン

ぼけ』(文春文庫)をまた数年ぶりに書棚から引っぱり出してページをめくった。

1979年5月25日発行の初版本である。25年後のキャパの命日に合わせて刊

行されたらしい。この本は友人より譲り受けた本であった。肌寒い日に熱いカフェ

・オレをすするような気分が、ページと共にどくどくと押し寄せる。ベトナムで地雷

に触れて40歳で世を去るまで、戦場の返り血を浴びるような近くで、歴史の瞬

間をフイルムに納め続けた男がいたのかと思うと、鳥肌が立った。しかし40年の

人生の生き様を自身の写真を通して後世の人に知らしめられるということは、な

んと幸せなことだろう。凡人にはできないそんな壮絶な生き方は人の感動から

遠ざかることがない。地雷で吹き飛ばされ倒れた手にはカメラが握りしめられて

いたという。そんな彼は、なかなかの美男子である。ユダヤ人特有の彫りの深い

顔に、切れ長の目。本の裏表紙から微笑み続ける彼は、頬杖をついてカメラに

向かってポーズを作っている。さて、本日リゾコは壮絶な生き方をしている人間

を紹介してくれるそうである。では、一緒に楽しむとしよう。




            



 こんにちは、リゾコでございます。ロバート・キャパといわれて、わたしはある人を

思い出しました。その人の容貌はキャパと似ているわけではないのですが、有名

でもあり同時にスキャンダラスな会社の社長さんでもあり、現役の編集者です。

その人の本を始めて書店で見つけたとき、その表紙の帯に書かれたコメントにシ

ョックを受けました。そこには雑誌『ダ・ヴィンチ』の編集長の言葉が、『驚きであ

る。ただ、ただ驚きである』と書かれ、バレリーナの草刈民代さん、『編集者って

凄い。凄すぎる』と書かれてあったからです。しかしAmazonでの評価は、1つ星

と5つ星が混在し、さらに\1から定価の¥1680までが同時に多数存在すると

いう著しく評価の分かれる本でもありました。つまり、評価の幅が1から1600ま

であるということでしょう。それほどだから、今ここでその人の名前を挙げれば、こ

れから先、読む気が失せる方も、わたしのことを嫌いになり始める方もおいでか

も知れませんので、その人のことを、失礼とは承知の上で、“おっちゃん”とだけ

呼ばせて頂き、短い手紙を書き記すことにいたします。



 「おっちゃん、おっちゃんの本を最初に読んだときのわたしの感動を一言で言

い表すとこんな感じです。今これを書いている高層階の部屋の窓から突き落とさ

れ、コンクリートの上にたたきつけられて、不思議と九死に一生を得、起き上がろ

うとすると、誰かが、急げよ!仕事だぜ、とユンケルだかリポビタンDだかを持って

きて無理やり飲ませ、手をひっぱって走らせられるような感覚。もうろうとして、も

がきながらも、ずんずん深い穴のなかに進んで行くような感じ。だいたい、わた

しは1冊の本を数回読み返しますが、少しは自分の肉に染み込んできたかな~

と思えるまで、しつこく読み返さないと気がすまないのです。だからいつも重いか

ばんには10冊くらいの本が入っています。しかし、おっちゃんの本は数10回、読

み返しました。読み返すたびに、また、コンクリートの上にたたきつけられ、栄養ド

リンクを飲んで走らされる。とてつもなく息苦しくても、しかしだんだんからだに栄

養が回ってくる心地よい感覚に浸るのです。毎回それの繰り返しているような、

それがどのページを開いても、読み返すたびに続くのです。




             



 おっちゃんの好きな言葉に『これほどまでの努力を人は運という』という言葉が

ありますね。そのとおり、おっちゃんはそのくらい努力した人だと思います。また、

おっちゃんの生み出したコピー、『顰蹙(ひんしゅく)は金を出してでも買え』とか、

『薄氷は自分で薄くして踏め』、『新しく出て行くものが無謀をやらなくて一体何

が変わるだろうか』それをそのまま実践しましたね。大手出版社を辞めて、10

人中10人が失敗するといわれた新たな出版社を設立し、14年間に14冊のミ

リオンセラーを出し続け、連戦連勝と言われました。郷ひろみさんが離婚届けを

出す日に合わせて、『ダディ』という本を初版50万部も刷って、芸能ニュースよ

り何より速く、新聞1ページの全面広告でスクープと本の宣伝を同時にやるなん

て、そんな悪知恵の極みを発明しました。またアウトロー文庫なんていうのも作り

異端の作家を集め、異端児の人生をまた自ら歩んでこられたと思います。しかし

おっちゃんはパーティが嫌いといわれる。その理由は、誰かと話をしていたら、別

の誰かが自分と話しをしたがっていたような気がして、それがずっと後まで気に

なってしまうからだと確か書かれていました。そんな繊細なチキンハートをもつ

おっちゃんはユーミンの歌を聴いて感動して涙するように、感激屋で涙もろく、セ

ンチメンタルで、臆病で、愛に飢えていて、老いることを極端に恐怖し、体の自由

が利かなくなる前に、最期は、足でライフルの引き金を引いて自殺したヘミング

ウェイのように生きたくて、週5日ボディビルで体を鍛え抜いたりと、どれを聞いて

も極端です。



 おっちゃんは公私を超えて付き合いながら、名だたる有名人と人生の苦楽を

供にするような激烈な日々を送ったといいます。尾崎豊、坂本龍一、村上龍、

五木寛之、松任谷由実、郷ひろみ、林真理子、銀色夏生、etc.そんなアーティ

ストや作家たちとタッグを組んで『その人々の中の葛藤しているものを引き出して

言語化させる。心に傷があればそこをえぐって、塩を塗りこんで書いてもらう』そ

んなえげつないことをずっとやってきたからこそ、今度は自分がその苦労も努力

も美しい部分も汚い部分も恥ずかしい部分も全部広げて見せなくては仁義に反

すると思って書いた本が、つまりこれですね。わたしは平成の時代にこんな男性

がいることにびっくりしました。そんなおっちゃんはむちゃくちゃかっこよくて、むち

ゃくちゃかっこ悪くて、まるで、ひとりで明治維新を戦っているような感じを受けま

した。でも、おっちゃんがそんな自分の半生をさらけ出した本を読んで感動した

理由は自分でもわかるような気がします。わたしもこんなつたないコラムを毎週

3年間書いてきて、人を楽しませ、感動させたかったら、それは自分の肉体から

出た真実を書くしかないということに気付いてるからです。毎週少しずつ自分の

血肉を削っていて、だから書いた後、10000mを走った後のようにくたくたに疲

れます。ですから、おっちゃんも59歳のカラダをいたわってあげてください。そん

なおっちゃんの真実を試してみようかと、おっちゃんの誕生日の12月29日を、

誕生日大全(主婦の友社)の占星術で、占ってみたんです。これから先は文字

数オーバーです。




              



 『駆け引き上手で現実主義者。人との交流を強く求めるあなたにとって、プライ

ベートな人間関係は非常に重要。常に理想の相手を探していますが社会的に

成功している人や創造力のある人に刺激を求めているので、財産や地位のある

人、または芸術的な才能を持った人との交際が吉。あなたは一度築いた人間

関係を守るためにはどんな努力も惜しまず、犠牲を払うことさえいといません。

戦略家のあなたはアイデアや製品を売り込んで利益をあげる方法を鋭く察知し

積極的な取り組みをします。カリスマ的な魅力と思慮深さを持つあなたは販売

や宣伝など、人を相手にする仕事で才能を発揮し、大きな成果をあげることが

できるでしょう』。おっちゃん、どうです。おっちゃん、大当たりでしょ」。



 p.s.1 おっちゃんの誕生日にある短所、“極端な行動に出る”はわたしも似

ています。タイトルの『反逆者たちの魅力学』はわたしの大学の卒論のタイトルで

した。やっぱり、異端児が好きみたいなんです。




       



 p.s.2 ロバート・キャパにおっちゃんが似ているところがやっとわかりました。

どちらもカメラの前で気取って頬杖をついているところです。



 p.s.3 おっちゃんの本のタイトル、言ってもいいですか?『編集者という病い』

(太田出版)です。

 p.s.4 10月22日はロバート・キャパの誕生日です。




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