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リサコラム
連載172回
本日のオードブル
華麗なる贋作人生第11回


我輩は虎の子である


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに勤務し、400名以上の顧客を持つカリスマ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
18年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒は強くない。
好きな作家は夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、マルセル・プルースト
      
          
                「それでもいいの、道楽だから」
 
      
  






我輩は虎の子である





我輩は虎の子である。名前はまだない。何処で生まれたのかは見当

がつかぬ訳でもない。はるか遠くの町で生まれたことだけは事実のよ

うである。その後、檻に入れられ、トラックに積み込まれて、人間と

いう得体の知れないものに連れ去られ、触られ、あちこち運ばれ、や

っとこの女主人の家に昨年暮れにやってきた。一度などは、ある若い

女の家に貰われて行こうかともした。しかしその若い女は我輩の値段

を聞くと、じっと我輩の顔を覗き込んで、ちょと頭をなでたものの、

財布と相談したら、我輩よりは実用的かつ、コストパフォーマンスの

高いやつを買えと財布が言ったのか、そのうち、ぷいと背中を向けて

立ち去って行った。我輩もまんざら顔に自信がないわけでもないが、

やたらと戯れに頭をなでられても、ちと心もちが悪い。時には我輩と

隣の虎の子を見比べ、どちらの顔がいいかと、あれこれ撫で回すやか

らもいる。失礼至極な話である。そんな訳で、ようやく去年の暮れに

この主人の家にやってきたようなことである。




            



 (ちまた)では、家に居座る猫が人間たちに可愛がられ、幅を利か

せておるようだが、やたらとみゃーみゃー猫なで声を出しては、人間

の気を引くようなことは、気高いわれわれ虎族には言語道断、あり得

ない行為である。無論、少々なことでは、ことさらに騒ぎ立てたり吠

えたりもしない。だからと言って甘えることもわがままを通すことも

できず、おうおうにして損をすることがある。その点、猫族は実に人

間の世界で生きる処世術に長(た)けておる。都合よく、人間の遊び

相手になれば、3度の食事に事欠くどころか、最近では栄養バランス

も考えられた日替わりメニューで食事は出るわ、綺麗な寝床で人間と

一緒に寝させてもくれると言う。事実、主人の知人の愛さん宅の小猫

は、リボン付きのお手製の可愛い猫ベッドさえも最近、与えられたら

しい。そんな高待遇を受けるうらやましい猫族もおるのである。




                



 しかしながら人間というものは、実に気まぐれで不可解な生き物で

あることをこの主人の家にやって来てわかったのである。うちの主人

は暮れも押し詰まり、年賀状も書き終えた後に、いきなり部屋の模様

替えを始めた。夜中から明け方近くまで、カーテンをつるし替えたり

ベッドの向きを変えたりと、あれやこれやと、こんな慌しい時分にな

ぜそんな面倒なことを思いつくのかと思うほど、せっせと模様替えに

励むのである。それが今年の正月、元旦になると、主人は普段は絶対

に着ることはない、着物というものを着て、我輩がいる部屋に入って

きた。



     



 珍しいこともあるものだと観察していると、主人は自分の寝室に茶

碗を運んできて、テーブルから我輩を排除し、かわりにその茶碗を置

いた。それから着物の長い袖をもてあましながらも、神妙な顔つきで

着なれない着物で窮屈そうに珈琲を飲み始めた。



       



 聞くところによれば、その珈琲茶碗は、明治時代に流行った有田焼

の茶器を復刻したものらしい。歩きもままならない、そんな衣服をな

ぜに寝床部屋で着なければならないのか、また、そこで明治時代のア

ウトオブファッションの茶器でなぜにお茶を飲むのやら、我輩にはも

ちろん理解できない。そうこしているうちに、主人は古めかしい、こ

れも明治大正時代の装丁の本を持ってくると、今は使わないような文

語体に近いルビがふられた文字を読み始めた。



        



よく見れば、オレンジ色の布張りの少々貴重な本のようでもある。

その本の背表紙には「漱石全集」という文字が書いてあった。

見れば主人は飽きもせず出勤前のほぼ小1時間を窮屈な着物を身に付

けたままで、行儀よく読み続けておる。普段はベッドに寝転がって読

むことが多いのに、なぜか正月も元旦から神妙な顔でそんな行動をす

るのか、我輩にはとんと見当がつかない。しかしまた聞くところによ

れば、それが“風流”というものらしい。主人は風流のためなら暮れ

の忙しい時だろうが真夏の暑い時だろうが、部屋の模様替えをしては

その風流とやらを喜ぶような性質らしい。




             



 またこの暮れ、主人はクリスマスが終わると、ろうそくの類を排除

しだし、短い線香のようなものを出してきた。これが“香”をという

ものらしいというのを我輩はやっとわかった。その香とやらをしきり

に焚くのである。



      



これが我輩の鼻のあたりにかかって、けむたいのなんのって、たまっ

たもんじゃない。さらに、主人は線香や器と我輩を同じ皿の上にあれ

やこれや並べ替えてはまた面白がり、こんな我慢強い我輩を道具のよ

うに扱うような仕打ちもする。これには、ことに自尊心を傷つけられ

た。我輩がこんな風流の道具のひとつにされては、はなはだ迷惑なの

である。この家に来て初めて知ったことだが、人間の中には、道楽を

信条として生きている種族がおると言うことである。





                 




  
 それでは「華麗なる贋作人生」の続きは、また来週。



                                    Risaco



 2010年、明けましておめでとうございます。今年は縁起も

よろしく、元日からスタートのリサコラムでございます。

本日、朝に撮影致しましたものでございます。よって、本日UPが

少々遅れましたが、お正月番組のように前撮りではございません。

リアル生番組でございますため、どうかご容赦くださいますように。







   



      


 では、マダム・ワトソンのスタッフ数人ですがこころを込めて、

新年のご挨拶とさせていただきます。年末年始に不在の者もおり、

一同には揃っておりませんが、どうか新たなる2010年もごひいき

のほど、よろしくお願い申し上げます。





             


  カッコよすぎです。一応は元日ですから、スローガンだけでも。





           



                                      木村里紗子








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