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リサコラム
連載520回
      本日のオードブル
習慣

第10話

「ラッキーな日」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



ブルー&
グレーホワイトの
ストライプの絨毯と、
パソコン、デスクライト
だけの白いデスクに赤い椅子、
ガラスの葉がランダムに集合した
モダンデザインのシャンデリア。
今風のかっこいいエクゼクティヴを
演出するには格好のインテリアです。
そこから見える景色が絶景であれば、
サクセスを匂わせることができます。

 
      
  





       


第10話
 「ラッキーな日」


「はい。わかりました」祐司はマネージャーの健二の秘書室で秘書に書類を渡す

と、秘書は、忙しそうに祐司の入って来たドアに視線を送った。その時、奥からマ

ネージャーの健二の声が聞こえた。


             


 振り向くとマネージャーの健二は祐司に、「君、ちょっとここで待ってくれない

か?」と言った。秘書は健二にちらっと視線を送ると、祐司に「あちらでちょっと

待ってもられませんか?」と言った。「ああ、はい」祐司はどぎまぎした様子を隠

せず、身長190cmの体を半分に折るような感じでお辞儀をすると、マネージャーの

健二の部屋に入った。


             


 「ちょっとここで待っていてもらえないかな?」マネージャーの健二はそう言う

と足早にオフィスを出て横の書庫に入って行った。祐司は自分の上司から託された、

健二宛の封書を5階下の階から持ってきたところだった。


             


 「あっ、はい」祐司はマネージャーの健二の背中に向けて返事をした。健二は書

庫を抜けるとガラスの扉を開ける音がして、そのあとは静かになった。祐司はその

場に立ったままで健二が戻って来るのを待った。そして体の向きを変えてオフィス

の大きな窓を見た。これを素晴らしい眺めと言わずしてなんというのだろう、5階

違うだけでこんなにも素晴らしい景色が眺められるものかと祐司は思った。


             


 天井から床まで切られた大きな窓から少し雲がかかってはいるが、すがすがしい

朝の眺めは素晴らしい。手前の大きな緑地帯は台風の雨に洗われたようで、青々と

葉を茂らせていた。その向こうにはビル群が見渡せる。東窓のため、夕焼けは望め

ないものの、こんな部屋なら祐司のいる雑然としてストレスに満ち、背中に暑い西

日を浴びることなく常に安定して仕事ができそうだなと思った。それより先に、ブ

ラインドを押すくらいに窓の前にまで押し寄せている必要なかどうかさえわからな

い書類の山がそんな景色を眺めることすら忘れさせていたともいえる。


             


 部屋の広さおよそ3X6mくらいはあるだろうか?部屋全体に敷き詰められたブ

ルーと淡いグレーの太いストライプの絨毯はダイナミックに窓に向かって伸びてい

るようで、まるで映画に出てくるかっこいいオフィスそのもののように祐司には思

えた。


             


 祐司自身のテリトリーはと言えば、およそ1X1mほどしかない。そのうちの

半分は書類の山と自分のカバン類や私物に占領されている。つまり、18分の1

下ということだ。きっと年収の差も18倍はあるだろうなどと祐司は計算をした。


             


 祐司は3か月前に転勤でこの支社の人事部に配属されたばかりだった。部長から

頼まれて、上の階にあるマネージャーの健二に文書を手渡しするために初めて足を

運んだのだったが、同じ会社にこんなにスタイリッシュな部屋があるとは想像もし

なかった。


             


 祐司は部屋の中でじっとマネージャーの健二を待った。しかし、健二はなかなか

戻ってこなかった。ただ待っていてももったいないが、だからと言って、うろうろ

歩きまわることもできず、祐司はさらに部屋を観察してみた。


              


 白いデスクの上にはラップトップのパソコンがひとつとデスクライトが1台置か

れているだけで、他には何もない。その前に丸いキャスター付きの淡いブルーの椅

子が2脚ある。そこに座った来客はきっとこの眺めにうっとりしてしまいそうだな

と祐司は思った。この来客用の椅子に座れることが、先々あるだろうか?おそらく

ないだろう。


             


 右隣の書庫をちらっと見た。それは他の部署のようにスチールの棚ではない。

そして書棚には海外のサイトで見るようなきれいな背表紙の本ばかり並んでいる。

このオフィスで具体的にどんなことが行われているのかは祐司にはよくわからなか

ったが、いずれにしてもこんな部屋を自分が持つことはありえないだろうし、また

ここに上がって来ることがあるかどうかも疑わしい。隣の秘書室の椅子の前にだっ

て座れることはないだろう。


              


 祐司は会社にしては珍しいブルーの花柄の間仕りカーテンの向こうの秘書室をち

らっと覗いてみた。ついさっきまで、忙しそうな音がしていたのに、今は誰もいな

いように静かになっていた。


              


 格差社会と言われて久しいけれど、自分のように平社員とこんなオフィスを持つ

エグゼクティブが同じ社内にいること自体、すでに格差社会を可視化しているなと

祐司は思った。まあ、ここに足を踏み入れただけでも今日はラッキーな日だと思え

ばいいのだろうと祐司は思うしかない気がした。


 その時、秘書室からざわざわと人が入って来た。カメラマンとマイクを持った人

たちがいろんな器具をセットし始め、祐司は邪魔にならない位置に移動した。


 「いい部屋だな~」「いい眺めだね~」「こんな場所で仕事できたらいいな~」

そんな声が口々に聞こえて来た。社内のプロモーションビデオの作成かあるいは雑

誌などの成功者のエグゼクティブルーム訪問みたいなものかなと祐司でも推察でき

た。


              


 祐司は後にした方がよさそうだ思い、秘書室を通って外に出ようとしたその時、

「ちょっと、待ってもらえないかな?」と先ほどのマネージャーの健二の声が聞こ

えて来た。こんな時に自分に用があるとはとても思えなかったが、祐司は言われる

ままに、またマネージャーの部屋へ戻った。


 「実は、これからある雑誌の撮影なんだがね、こんなピンクのネクタイじゃ、印

象が悪くはないかなと思ってね、今日はあいにく持ち合わせがなくてね。だから悪

いけど、君のそのブルーのネクタイと交換してもらえないかと思って。どうだろう

か」と健二はにこやかな顔で言った。祐司はなぜかとても恐縮に感じた。


 「はっ、こんな安物でよろしいでしょうか?」と言いながらすぐに外して健二に

手渡すと、祐司は代わりに健二のピンクのネクタイを締め直して秘書室に戻った。


             


 すぐに撮影が始まった。秘書は「それのネクタイ、5万円はするわよ」と言いな

がら、自分の後ろのロッカーを開けた。そこにはスーツが10着ほどと様々な色の

ネクタイが20本ほどと整然と並んでいた。


 「変わっているけど、これがマネージャーの習慣なのよ。あなた、今日はラッキ

ーな日ね」と言うと、ドアの方に視線を動かし、黙ってまた仕事を始めた。



    



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 こんなお部屋で仕事をしてみたい。こんな人になってみたい。
 どちらが先に来るののでしょうか?


 「もの、こと、ほん」は下の写真から。

            

p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
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