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リサコラム
連載606回
      本日のオードブル

愛おしいひとびと

第8話


「2度目のNY」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




正面の壁は
夕日を浴びる
ニューヨークシティ
3秒を1秒にした3倍速で
日が暮れ日が昇ります。
こんな映像を眺めながら
行かずして自宅のバーで
優雅な時を過ごすことも
今ではたやすいことに
なりました。
そして
一流ホテル
のような
お部屋に
住むことも。



 







        

第8話「2度目のNY」




 「わあーすごい~すてき、こんなとこあったの?初めて来た。」クリコは両手

で顔を包むとうるんだ瞳で予想通りの感嘆の声を挙げた。「まるで、ニューヨ

ークじゃない!なに、この景色!ほんとNYに来たみたい」


           


 クリコと友人のアリサは5つ星ホテルの最上階にやって来ていた。そして広

いフロアの一角を占領している、まるでNYの摩天楼を一望にするような奥の

バーに吸い込まれていった。


            


 「まあ、映像なんだけどね。それでもすごいでしょ?24時間を8時間に縮

めて巨大スクリーンにNYの摩天楼を映し出しているのよ」アリサはクリコの

背中に向かって解説を加えた。


            


 「こんばんは。ようこそ、NYバーへ。どうぞ、こちらへ」白い蝶ネクタイ

をしたボーイはふたりを奥へと案内した。足元の僅かにグリーンを帯びた濃紺

の太いストライプの絨毯は足の裏に絡みつくように深く密度が高い。


            


 「すてきね~」クリコは隣の友人のアリサの腕をつかんだ。「なかなかいい

感じでしょ?」ふたりは案内されたカウンター席に間にひとつ席を空けて並ん

で腰かけた。「ステキ過ぎじゃない?なんだかぼうっとしてしまう~」「こん

なところで舞い上がって酔っぱらったりしないでよ」アリサは感動系のクリコ

に先に釘を刺しておかなくてはと思った。「大丈夫。これでもちゃんとハイソ

な場所の場数は踏んでいるから。そんなダサい真似はしないわよ」


           


 案内されたふたりの元にまた別のスタッフがやって来ると、「すぐに担当が

やって参ります」と声を掛けて、ふたりの手におしぼりを置いた。「えっ?

ここ、カウンターでしょ?担当がつくの?」「そうなのよ。バーテンダーにあ

まり親し気に話しかけないでって、意味じゃない?」クリコは数人のイケメ

ンバーテンダーがNYの日没の風景をバックに黙々と任務をこなしている光景

に目をやった。「ふ~ん。クールね。なんかおもしろそう!」ふたりは同時に

メニューを開いた。


            


 「えーと、まずは水のお値段はと」クリコは指でメニューの価格を追った。

アリサは「くくく」と押し殺した声で笑いながら言った。「ついさっきまで、

あんなに感動してたのに、いきなり現実的!恐れ入りました!」「いやね 、

これ、基本の『き』よ。だってさ、この間、友人から聞いた話だけどね、ニュ

ーヨークのレストランでお水注文したら、コンビニで売ってるのと同じペリエ

のボトルを置いていってね、20ドルも取ったんだって。ひどくない?その話

聞いて以来、私、レストランに行ったらまずは、水の値段を確認することにし

たのよ。まあ、『締り屋クリコ』とでも言って笑ってください」と言って笑

った。


            


 「でもここはそんなことはないからご安心。ミネラルウオーターは、アルコ

ールを注文したら
1本は無料なのよ」「わお!それはとても良心的ね。それ

じゃっと、なにこれ?オリジナルカクテルって?」「ああ、そうそう、オリジ

ナルで作ってくれるんだって。ほら、あのバーテンダーに、にっこり微笑む

でしょ。するとね、あなたの好きそうかなっていうカクテルを作ってくれるん

だって」「ほう、なるほど、神通力?」「ハハハハハ」アリサは声を上げて

笑うと、近くで待機していた担当のボーイにオリジナルカクテルを二つ注

文した。


            


 クリコは運ばれて来たカカオ色のカクテルから、生クリームとマロングラッ

セをスプーンですくうと口に入れ、しばらく味わってから、「う~ん、好み!」

と唸った。「ブランデーが効いてる~。それにこのカカオの香り、最高じゃ

ない!なんで好みがわかったのかしら?これぞまさに神通力!」


            


 アリサは「こっちはとてもシンプルなカクテルよ。でも、いちごよ。朝摘み

いちごのフレッシュカクテルって感じね、さわやかで美味しい~!」と言いな

がら半跏思惟像のマネをしてみた。「まさに、阿弥陀如来さまのいる境地です。

つまり、極楽ってこと」ふたりはだんだんと赤みが青みを凌駕してゆく空と、

それをバックにきびきびと立ち働く数人のバーテンをしばらくぼんやり眺め

ながら、束の間の優雅な時を満喫していた。


            


 やっとクリコがぼそりと言った。「帰りたくないね」「わたしも」「今晩

は、ここ、泊まりたくない?でも、高いよね」「うん、きっと。ウォークイン

だと5万じゃ無理かな?」「その前に、今日は主人が帰ってくるのよね、

出張から。あああ、昨日だったらよかったのに~ほんと、失敗したわ~」クリ

コはため息をついた。「私、明日、大事なプレゼンがあるの。でも、部屋が汚

いから、帰って掃除しなくちゃ。運気下がるからね。でも、泊まりたい気分

ね、ほんと。しばし、現実逃避したい~。でも、今日は無理か。今度ね、

絶対、今度」アリサは下を向いて無念の溜息をついた。小一時間、ふたりが

オリジナルカクテルを味わっているうち、すっかりNYは漆黒の中に浮かぶき

らめく要塞に変化していた。アリサはボーイに合図をした。


            


 伝票が運ばれてくる間、肩ひじを顎の下にあてながら夜景に見入っていた

クリコが言った。「でも、私、マロングラッセが好きだって、なんでわかった

のかな?」「わたしも、いちごが好きって、どうしてわかったのかな?」

「聞いてみる?」クリコはアリサの方を向いて言った。アリサはくすくす笑い

ながら黙って目の前のバーテンを手で指し示した。


             


 すぐにクリコは、「あの、私、マロングラッセが好きだって、どうしてわか

ったのですか?」とバーテンに尋ねた。バーテンはにっこり笑うと穏やかに

答えた。「素敵な栗色の髪の毛をなさっておられるからです」


             


「わ~、さすが、すごい!」クリコは小さく拍手をした。「それじゃ、私は、

どうしていちごが好きって?」「赤いドレスがお似合いだからですか」

「ほう!」アリサもまた拍手をした。「おだてていただき、光栄です」クリコ

は言うと、伝票に1万円札を挟んで伝票をもって来たボーイに渡した。


             


 バーテンはふたりそれぞれの顔を交互に見ながら、「次回はどうか、もっと

ゆっくりいらしてください。よろしければこちらを。「『2度目のNY』とい

うレディスステイプランです。来月いっぱいですから、どうぞお早めに」

バーテンはふたりに一枚ずつチケットを手渡した。「わ~」ふたりは同時

に叫んだ。「どうして私たちの気持ちがわかったの?」


             


 バーテンは腕を大きく挙げると、「一応、プロでございますので」とクール

に笑い、シャカシャカと甲高い音を立ててシェイカーを振り始めた。


             


 「さすが、お上手!」とクリコはまた小さく拍手をした後、おつりをゆっく

り財布にしまうと、ふたりは非日常の夜景を後にした





  




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
  
  こんなバーでオリジナルカクテルを味わっていたら、
  電車で帰りたくない、
  ホテルの素敵な
部屋で余韻を味わいたくなる、
  その気持ち、わかりますね。
  さらに自宅がホテルみたいであれば最高ですね。
 


  「もの、こと、ほん」は下の写真から、
           
            


p.s.2
   
 E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   
 英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    
E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
  
 どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。






シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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