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リサコラム
連載611回
      本日のオードブル

わがままな部屋

第2話


「カフェ・ムーンリバー」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルー
ベリーの
畑のような
グリーンの
毛足の長い絨毯
壁には巨匠の絵です。
12畳ほどの細長いサロンに
バイオリニスト、ピアニスト
ボーカリストがやって来ると
駅の中のカフェは
コンサート
ホールに
変身します。
薄緑の上品な
カーテンに見とれて
うっとりしていると
時間を忘れてしまうかも、



 







        

第2話 「カフェ・ムーンリバー」



 
初めて降りた駅は、閑散としていた。


 ひとりM子が改札までの階段を下りてやってくる間、駅員はじっとその様子を

見守っているように思えた。


            


 「あの~乗り換えの駅はどちらでしょうか?」M子は改札で控えめに尋ねた。

 駅員は引き込み線の駅を指さしながら、「あちらです。次は1時間後です。

今、出たばかりですから。出られる前に待合室でお待ちになられたらいかが

ですか?」と丁寧に教えてくれた。


 M子は礼を言うと、ちょっと周りを見渡した。平日の昼下がりというのに、

乗降客はまばらで、閑散とした構内に広々とした待合室のようなドアが2

あった。M子は2つのドアの前でしばらく逡巡した。それは一つは無料待合室

もう一つは白いドアに「カフェ・ムーンリバー(有料)」と書かれていたから

だった。有料の白い看板の下には、「15分以上お時間がおありなら、ぜひ

非日常の素敵な空間でおくつろぎください」と書かれてあった。そのコメント

M子の気持ちは動いた。そしてそっとドアを押した。


            


 中にはまた白いドアがあり、そのドアの前に立つとドアは自動で開いたよう

に思えた。が、実はドアマンがM子にドアを開けたのだった。M子はびくっ

とした。


             


 「いらっしゃいませ」蝶ネクタイをしたウェイターがにこやかな笑みを向

けた。「あの、お茶だけでも大丈夫ですか?」M子はどぎまぎした様子で尋

ねた。「ええ。もちろんです。どうぞ。お足元、ご注意くださいませ」ゴルフ

場の芝生よりふかふかな絨毯にM、子は足を取られそうになりながら、10

cm
ほどの段差をM子は慎重に降りた。


             


 そこは駅とは別世界の優雅な淡い緑色のティルームのようだった。蝶ネクタ

イのウェイターは背中を向けて、くすっと笑ったように見え、M子は気おくれ

を感じた。


            


 「どうぞこちらへ」蝶ネクタイのウェイターはM子をソファの席に案内し

た。「あの、コ、ヒーだけでも構いませんか?」「もちろんでございます。

コーヒーでございますね、かしこまりました」そう言った後で、蝶ネクタイの

ウェイターは続けた。


            


 「今月はこちらのカフェ・ムーンリバーの1周年記念イヴェントを行ってお

ります。そこで、お客様に簡単なクイズにお答え願っておりまして、見事正解

なさいましたらプレゼントを差し上げております。今から私が質問いたします

が、よろしいでしょうか?」M子は両手をひらひらと顔の前で交差させると、

同時に首を振った。「あ、あの、苦手でして、その、クイズのようなものが、

すごく」「いいえ、簡単なものでございます」「それでも、ちょっと遠慮して

おきます」「そうですか?しかし、せっかくですから」蝶ネクタイのウェイタ

ーはなかなか立ち去らない。「私、自慢じゃないですが、その、クイズってい

うものが、全然ダメなんです」「いえ、いえ。ご心配には及びません。じつに

簡単なものですから。それに1問だけですので、さほどお時間も取りません

し」M子は得意の優柔不断さで、しばし逡巡した後で、やっと、「わかりま

した」とこくんと頭を下げた。


            


 「ありがとうございます」ウェイターはまた更に背筋を伸ばすと、「それで

は行きます」と言ってから、ゴホンと一つ咳払いをした。


            


 「このカフェの名前は、カフェ・ムーンリバーと言います。さて、そこでク

イズでございます。このカフェで一番人気のオリジナルコーヒーは次の4つの

内、どれでしょうか?」「えっ?4択?それは無理です」「そうですか?」

「4択は無理です。3択までならまだしも。でも、4択となると、考え込んで

しまって、ダメなんです」「わかりました。それでは、特別に4択を3択にし

てクイズをお出しいたします。慎重に考えてからお答えください。それでは、

行きます。このカフェの名前は、カフェ・ムーンリバーと言います。このカフ

ェの一番人気のコーヒーは次の3つの内、どれでしょうか?1.カフェ・モー

ツアルト、2.カフェ・ベートーベン、3.カフェ・オードリー」ウェイター

はそう言った後、にっこりと笑った。


            


 「ええと、人気のコーヒーを当てるんですね。う~ん、カフェ、、、、

え~、う~、なにかヒントは?」ウェイターはにっこり笑うと、「このカフェ

の名前はカフェ・ムーンリバーと言います。それがヒントです」と言った。


            


 「ええと~、カフェ・ショパン、ですか?」「残念ながら、カフェ・ショ

パンは3択の中に入っていませんでした」「ああ、そうでしたっけ?う~ん、

他にヒントは?」「それでは、4択目はカフェ・スヌーピーでした。さて、

お答えは?」「ええと、カフェ・スヌーピーはなしとして。これ、結構、引っ

掛け問題ですよね?」「いいえ、そんなことはございません。肩の力を抜い

て、ごく自然体で考えていただければと存じます」


            


 M子は額に手を置いてから、天井を眺めた。シャンデリアの光がきらめく

天井は淡いブルーで、少し曇った空のように見える。


            


 「ああ、ここ、空の柄ですね。私、バチカンのシスティーナ礼拝堂に行っ

て、ミケランジェロの天井画を見てからというもの、どこへ行っても天井を眺

める癖がついてしまって、もしかして、ミケランジェロ?カフェ・ミケラン

ジェロではありませんか?」ウェイターはとても残念そうな声で、「大変恐縮

ではございますが、クイズの4択にカフェ・ミケランジェロは入ってござい

ません」「ああ、そうでしたっけ?つい、頭からミケランジェロが離れな

くて」


            


 「そうだったんですね」「それでは、最後のヒントです。映画、『ティファ

ニーで朝食を』の中で主役のオードリー・ヘップバーンが歌う歌が『ムーン・

リバー』ですが、さて、このカフェ・ムーンリバーで一番人気のコーヒーは何

でしょうか?もう一度申し上げます。1.カフェ・モーツアルト、2.カフェ

・ベートーベン、3.カフェ・オードリー、4.カフェ・スヌーピー、さあ、

いかがでしょうか!」

 
 M子はカフェの天井を見上げてから大きく息を吸い込んだ。そして、

3番、カフェ・オードリー!」と答えた。

 すると、ウェイターは大きな手で盛大な拍手をした。


            


 「お見事!おめでとうございます!」「え~、アタリ?嘘みたい。クイズ

に当たったことなんて、全然で、ほんと?」M子は興奮したほほを両手で包

んだ。「やっぱり、コーヒーじゃなくて、赤ワインで!」M子がウェイターに

そう言うと、ウェイターはすぐにグラスをM子の前に置いた。するとすぐにカ

ーテンの向こうからバイオリンを手にした男女二人のバイオリニストが出て来

るとピアノも加わり、一斉にメロディを奏で始めた。いつの間にか、ボーカル

の女性もやって来て、歌を歌い始めた。「Moon river~」その歌声はカフェ

を一気にコンサートホールに変えてしまった。


            


 その時、ガタンと大きな音をして、M子の頭はガラス窓に激しくぶつかっ

た。「イタッ、ああ~、なんだ、夢、か」M子は帰宅時間の込み合って蒸し暑

い満員電車の中で、ワインのせいではなく赤くなったほほを両手で押さえた。


            


 「あの素敵なカフェは夢か~、ざんねん。芝生みたいな絨毯、薄緑色の壁に

薄緑色に金のドットのカーテン。ほんと、別世界みたいに贅沢な空間だったの

に、あのカフェ、あれは夢かぁ~」M子は自宅近くの駅で降りると、そこは土

砂降りの雨だった。


            


 M子は逡巡したが、自宅までの徒歩10分の道のりをタクシーに乗った。

M
子は土砂降りの雨眺めながら、いつの間にか、“Moon river~”と鼻歌を歌

い出していた。そして、やっと、子供の頃から夢だったカフェを実現させる決

心をした。


            


 カフェの名はカフェ・モーツアルトにするか、カフェ・ベートーベンにする

か、カフェ・オードリーにするかは、1年たった今でも、まだ未定ではある

けれど




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
   Moon riverの鼻歌を歌うと幸せな気分になります。
   『ティファニーで朝食』でオードリーが窓に腰かけて
   ギターを弾いているシーン、タクシーから降りて
   ずぶぬれになるラストシーンを思い浮かべます。
   
p.s.1
   Moon riverの鼻歌を歌うと
   
鈍感力が増してきたような気がします。
   鈍感力と知性が同居した人にとても憧れています。


  「もの、こと、ほん」は下の写真から、
           
            


p.s.2
   
 E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   
 英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.5
    下は日本語版です。

    
E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
  
 どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。






シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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