マダム・ワトソン　My Style

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連載６１４回 　　　　　　 わがままな部屋 第５話 「秘密はスイートで」 木村里紗子のプロフィール マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。 大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。 著書「シンプル＆ラグジュアリーに暮らす」（ダイヤモンド社 紙の本＆電子書籍）（2006年6月） 「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 （電子書籍2014年8月） 道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。 いろいろなインテリアを考えだすこと。 新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。 外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。 ２０年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。 アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。 好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、Ｆ・サガン、 マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。

黒白 市松の床 ハーブティ グリーン色の シルクのカーテン 濃紺の額縁付きです。 その奥はドット刺繍のレースの シェード、そして、手前には 一人掛けソファ５脚。 チャコールグレー グリーンと イエローの ストライプ レモンイエロー ピーコックブルー どの柄のどの椅子に あなたなら腰かけますか？

第５話　「秘密はスイートで」 　私たち３人は、高校時代の同窓会を終えた後、ホテルのロビーでそれぞれ 行く先の違うタクシーを待っていた。 　　　　　　　　　　　　 　「ねえ、向こうの椅子の3人、なんか変わってるって言うか、個性的よね」 ロビーラウンジに並ぶ５つのひじ掛け椅子にそれぞれ１つずつ間を開けて腰か けている若い３人を私たち、かつての美人３人組は見るともなく眺めていた。 　　　　　　　　　　　 　「そうね、昔の私たちみたくない？」私が口火を切ると、すぐにレイが私に 向かって言った。「ああ、私もさっきからそう思ってたとこ。あの真ん中の子 あなたみたくない？一番個性的だし、だってさ、5つ椅子があったら、なかな か真ん中には座れないものよ」「あら・そう？」私は真ん中の黄色とグリーン の派手なチュニックに白いパンツを履いた若い女性を見た。「あんなにきれい だったかしらね、昔は。だってみんなもてたわよね、女性にね！へへへへへ」 私は照れ笑いでごまかした後で、レミに、「あなたはやっぱり一番右の黒人の 女性の雰囲気よね。タイトな感じでさ、厳しくて、でも、しなやかな感じがそ っくりよ」と言った。もちろん褒め言葉のつもりで。すると、レミは、 「嘘でもうれしい」と言って3人目の友達、さっちゃんの背中をボンとたたいた。 　　　　　　　　　　　　 　華奢なさっちゃんは、さちこという名前からではなく、鉄の女と言われた マーガレット・サッチャーから、さっちゃんと言われていた。“本名は何だっ たっけ？”私は思った。ああ、そうだ、ゆうみだ。でも、漢字は思い出せな かった。久しぶりに会ったにもかかわらず一気にタイムマシーンに乗った私た ちはいきなりあだ名で呼び始めたが、戸籍上の名前はすっかり忘れてしまっ ていた。 　　　　　　　　　　　　 　さっちゃんは、「私はやっぱり、左の女性が好きね。もちろん、見かけから 判断してだけどね。こんなリゾートみたいなホテルにシャツにタイトスカート でしょ？仕事中みたいだから、それならきっとやり手でしょうね。難しい会議 かなんかに参加するとこかもね」さっちゃんが言い終わる前に、ルミは食べ過 ぎた自分のおなかを軽くさすりながら、「キャリアな人に限って中身はソフト だったりするものよ」と言った。私はすぐに「あら、それって負け惜しみじゃ ないの？」と笑いながらジョークのつもり言った。そうしないと、女の絆にヒ ビが入るのだ。 　　　　　　　　　　　　 　ルミはすかさず反論した。「負け惜しみじゃないわよ。人は中身と反対の外 見を作る人もいるのよ。昔の私がそうだったからね。いつも自分自身をきらき ら、きらめかせていたわ。お昼ご飯は、５００円以下で、その分をブランドの 靴や服や時計に回してたのよ。でも、内情は、何もかもに自信がなかったの。 核みたいなものがまるで無かったの。だから外見で武装してたんだと思う。 でも、今は反対でしょ。そんな私にそっくりな友達がね、最近になって素敵な 家を作ったのよ。お菓子の家みたいにかわいいの。小さいけどね。お庭は四季 を通して花が咲いてるし、小川が流れていて、ブランコがあって、自分の部屋 はティファニーブルーのシルクのカーテンよ。すっごくロマンティックだった わ。ベッドの周りの天井からミルク色のカーテンが下がっててね、いっぱい刺 繍がしてあるレースよ。その中に囲まれて、たっぷりフリルの中でふりふりし ながら眠るんだって！」 　　　　　　　　　　　　 　「あ～ら、すてき」鉄の女、さっちゃんが肩をすぼめがら、代わりに私の背 中をポンとたたいた。「でしょ？」ルミは話を続けた。「それを見て、娘さん が笑うらしいわ。その彼女も、若いころは一番右の黒人の女の子みたいに細く って、ピタッとしたボディコンの服着て、高いヒールで街を闊歩してたらしい からその変身ぶりにね。当然、仕事もバリバリにできて、まさに地球儀を持っ て歩いくみたいな、そんな生活してたのよ。でもさ、ある時、彼女、バリバリ と外側の皮がむけたんだって。それをね、ちょうど私たち、一緒に塩釜で焼い た鯛をつっていていた時だったから、まさに、この魚の周りの厚い塩の衣が全 部はがれたみたいにって、彼女が例えて言ったの。そんなに風に外側の衣を脱 ぎ棄てたら、ものすごくロマンティックな生活がしたくなったんだって」 　　　　　　　　　　　　 　さっちゃんと私はほぼ同時に「へ～すごい」と言ったあとで、「わかる、 わかる」とまた、同時にハミングした。その声はホールに小さくもなく響いた。 　　　　　　　　　　　　 　そして私は、「あの3人の中で真ん中に座ってる女性、やっぱり、なんかい い感じするわ」そう言った後で続けた。「だってさ、真ん中に堂々と座っても 動じない貫禄あるし。私なんか、いつも隅っこにしか座ったことがなかったの よ。まあ、末っ子だから、いつもそんな立場にいなさいって言われてたせいも あるかもしれないけど、」 　　　　　　　　　　　　 　「あら、そうかしら？」と反論したのは、さっちゃんだった。「だって、 あなた、前の同窓会の時より遥かに生き生きしてるし、キングサイズのベッド なんかで大の字で寝てるとかじゃないの？それとも、キャリアの階段をまっし ぐらで、オフィスの真ん中のデスクから部下ににらみをきかせているとかじゃ ないの？」さっちゃんは私の顔を覗き込んで含み笑いをした。 　　　　　　　　　　　　 　「そう思われているなら、そう思ってもらってうれしいわ」私はそう応じ ながら、同窓会のパーティの最中は話せなかった別荘のことを二人に話してみ ようかという気になった。 　　　　　　　　　　　　 　「実はね、別荘作ろうと思っているの。もうほぼ決まりなんだけどね。 でも、主人には内緒なの」「え～、ナイショ？」ルミは如何にも秘密めかした 声で私の耳元でささやいた。「ねえ、ねえ、その話、聞きたい～！」さっちゃ んは私の腕をにゅっとつかむと、ルミは「あなた、今日帰らなくちゃダメ？」 と言いながら、フロントの方に強引に私たちを誘導した。 　　　　　　　　　　　　 　ルミは、「私は自由人だからOKよ、さっちゃんも大丈夫よね？」と聞くと さっちゃんは即座に「OKに決まってるじゃない！」答えた。私はまだ返事を してはいなかったが、ルミは、ひとりでカウンターに行くと、ホテルマンに今 日の部屋の交渉を始めた。 　　　　　　　　　　　　 　「ねえ、スイートにしない？3人で割れば、ね？スイートにしようよ」ルミ はカウンターでホテルマンと話をしながら、後ろを振り向くと、さっちゃんと 私の顔を交互に見た。私は仕方なく、首をタテに振ると、さっちゃんは、 「もちろん！」と言った後で、私の耳元で、「実はね、私、離婚したって言っ たでしょ？でも、すぐに彼氏ができて、今、素敵なお家、建ててるところな の」と恥ずかしそうにささやいた。 　　　　　　　　　　　　 　「へ～、そんなことになってるの！」私は驚いたが、戻って来たルミは、 スマホをさっちゃんと私に見せた。「実は、さっきの塩釜の彼女ね、レースの ふりふりで眠ってるって友人だけど、ほんとは私自身のことなの、ちょっと言 いづらくて、ごめんなさい。だってほら、私のイメージ、あの右の女性みたい にクールな感じじゃない？今は昔だけどね、はははははっ」 　　　　　　　　　　　　 　同窓会のパーティでは当たり障りのない話をした私たち3人は急きょ決まっ た２次会でそれぞれの秘密の部屋について夜通し語ることになった。 　　　 　上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。 p.s.１ 　 　　　　同窓会、話すことが多すぎて、 　　　　きっとお泊りしないと本音のところはでないのかも 　　　　しれません。 　　　　しかし、私は一度も同窓会に出た経験がありませんので 　　　　お客様のお話し＆想像です。 　　　 　　　 　　「もの、こと、ほん」は下の写真から、 　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　 p.s.2 　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 　　　　英語版を出版いたしました。 　　　　"Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。 　　　　写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。 　　　　　　　　　　　 　　　　タイトルは、"Bedroom, My Resort” 　　　　Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories: 　　 　Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms 　　　　趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に 　　　　チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに 　　　　E-bookにしていただいたものです。 　 p.s.5 　　　　下は日本語版です。 　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」 　　　どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　バックナンバーの継続表示は終了いたしております。 　　書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。 　　どうかご了承くださいますように。

	シンプル＆ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り- 　　　　　　　　　　　　　　（木村里紗子著/ダイヤモンド社　）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。 マダムワトソンでは　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて 　　1,944円にてお届けいたします。 　 　ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 　　　　お申込はこちら→「Contact Us」

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