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リサコラム
連載649回
      本日のオードブル

彼女たちの部屋

第9話

「彼女の
イタリアンリゾート」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



黒と白の
タータン
チェックの
テーブルクロス
の上にはオレンジ色の
パスタのような料理と
にんじんのスープ?
タブレットには
なんだかリゾートが
映っているようです。
おいしそうな場所に
やってきたようですが、さて、



 







        

第9話  「彼女のイタリアンリゾート」




 「植え込みの間から伸びる細い小径のようなアプローチを歩いて、レスト

ランのエントランスドアの前にやって来た時、「いらっしゃいませ。タミヤ様

ですね。」という声が聞こえた。私はきょろきょろしながら、マイクのような

ハートマークに向かって、「ええ、そうです」と答えた。


            


 「お待ちいたしておりました」という声がした後、重厚感のある木製のドア

がゆっくり右に移動した。その向こうには白いシャツ姿のスタッフの女性が立

っていた。


 「どうぞ、こちらへ」にこやかな笑みの彼女は私を中へと案内した。室内は

照度が落としてあり、古材で作った床はギシギシと軋み音を立てる。それでも

スニーカーの私の足音は響くことはなかったが、前を行くスタッフの女性の規

則的なコツコツ音を聞きながら長い廊下を後ろについて歩いた。


 一度、彼女は私の方を振り向いて「間もなくです」と言った。それから右に

折れ、外の光で、自分が今どこにいるのかがようやくわかった。


            


 廊下は緩やかなスロープになっており、さっき入って来た小径のある場所が

中庭でその周りを建物がぐるっと取り囲んでいた。


 「タミヤさまはこれからどちらへ?」スタッフの女性は唐突に私に質問をし

た。もちろん、私は面食らった。“だってここはレストランで、どちらへと言

われても食事をしに来たのだから、レストランに決まっているんだけど…私は

「ああ、ええと、」としどろもどろになりかけて、”ああ、そうか、多国籍料

理のお店だったと、思い出し、「それじゃ、イタリアで」と答えた。「かしこ

まりました。それではイタリアの北部ミラノ、ヴェネツィア、中部のナポリ、

南部のサルディニア島がございますが、どちらがお好みでしょうか?」


            


 私はまたもや想定外の質問に面食らったが、いい加減に「それじゃ、ナポリ

で」と答えた。「かしこまりました」彼女そう言うと、少し先の2つ目のドア

の前で止まった。


 「タミヤさま、どうぞ」「ああ、はい」私は案内されるままに中に入ると、

そこは廊下より明るい四角な小部屋だった。壁には白いテーブルがくっつい

ており、椅子が3脚。他は何もなかった。彼女はテーブルの引き出しをすっと

開けると、何か布のようなものを取り出し、ふわっと私の目の前で開いて見せ

た。それはテーブルクロスで、彼女の手を離れたあと、見事なほどにきれいに

テーブルの上に着地した。


 モダンイタリア~ノぽい演出なのか、モノトーンのタータンチェックのテー

ブルができていた。私がそのタータンチェックのテーブルにつくと、彼女は別

の引き出しからタブレットを出してテーブルの左斜め前に置いた。


            


 「こちらでメニューをご覧いただき、タッチするか、音声でお選び頂き、

「これをください」か、「取り消します」と言っていただけますか?それで

オーダーが完了いたします。お会計はこちらの小さなタブレットでお済ませく

ださいませ。タッチしていただくだくと案内が出ます。タミヤさまのクレジッ

トカード、スマホをかざしていただければ完了でございます」彼女はデモをや

ってみせた。私はなんとなくだが、「わかりました」と言うと、ペコンと頭を

下げた。彼女は私の不安げな様子を察知したのか、「わからない時はいつもで

このボタンでお尋ねください」と言ってにこやかにドアの外に出た。


            


 私は言われた通りにタブレッットからメニューを開いてみた。パスタのバリ

エーションはとても豊富で、魚介類のスパゲッティ、生うにのリングイネ、イ

カのラグーソースのフィットチーネと迷いに迷った挙句、スペシャルナポリタ

ンと季節の野菜ポタージュ、ノンアルコールのスパークリングワインといちご

のデザートを注文した。


            


 ”ナポリタンってナポリの料理じゃないよね。でもいいか。個室だし、何を

注文しようが、私の勝手だしね“


            


 まもなく、タブレットから「お料理のご用意ができました。壁の扉がゆっく

り開きます」という自動音声とは思えないような素敵な声が聞こえてきた。そ

して、正面の壁に見えた扉が上にゆっくり開き、注文した料理がやって来た。

料理を載せたトレーはす~とテーブルの上に伸び、また、す~と自動で下がり

料理と飲み物はタータンチェックのテーブルクロスの上に正確に残された。


            


 私は2355というテレビ番組でこんな不思議な素材のトレーのようなもの

を見たことがあった。テーブルの上に塗られたケチャップやマヨネーズを跡形

もなくきれいにすくい上げ、また元に戻すことができる魔法のようななめらか

な面を持つ不思議なトレーだった。「なるほど、こんな応用ができるのか」何

かにつけてもローテクの私は、古材でできたハイテクな無人サービスのレスラ

ンに感心しっ放しだった。


            


 まずは湯気を立てる料理を嗅覚で味わい、そして彼女に言われた通りに、

「いただきます」という呪文を唱えた。すると、タブレットからはナポリ湾と

ヴェスヴィオ火山からの様子が映し出された。波の音も、人々の話声さえ聞こ

える。白いクルーザー、ヨット、そして、イスキア島、カプリ島を臨む風景へ

と続く頃には、私はノンアルコールシャンパンに酔い、こってり濃厚な野菜の

ポタージュとスペシャルナポリタンをほぼ平らげた。別に家にいても味わえる

リゾートの風景ではあるが、とは思いながらも、ぐんぐんとリゾート気分の幸

せ感に満たされていった。


            


 「おいしかった」私は2度目の呪文を唱えた。すると、また扉が開き、コー

ヒーといちごのメレンゲパイ、バニラソースが出て来た。私はいちごのメレン

ゲパイとコーヒーを手元に引き寄せた。すると画面はゆっくり断崖絶壁に張り

付くようにカラフルな家が軒を連ねるアマルフィの海岸に移った。私はアマル

フィの海岸線と赤ピンク、オレンジ、緑などのカラフルな屋根とのコントラス

トに見ほれ、そしてさらにそのワインディグロードからの風景にわれを忘れた。


            


 「ああ~おいしかった。ごちそうさま」すると、海岸線はゆるやかにフェー

ドアウトし、右隅の置かれた小さなスマホ型の端末から、「ナポリをご堪能い

ただけましたでしょうか?本日のナポリの旅は5,800円でございます」と

また美しい声が聞こえた。私はスマホをかざし会計を済ませると、ドアを開け

て外に出た。


            


 そこには先ほどの彼女が待っていた。「あの~、」「はい?」「いえ、大丈

夫、わかりました」私は軽く手を振ってから、パウダールームと書かれた突き

当りのドアを開けた。


 「なかなかいい感じね~本物のリゾートをひとりでも味わえるしね、おト

クかも。それにレストランでかしこまって、いろいろ気を遣わなくていいのは

楽よね~」私はバラの香りに満ちたパウダールームから出て来たが、彼女は先

ほどとは違って少しすまなそうな表情で待っていた。


 「失礼いたしました。『あの~』という言葉をお手洗いと同義語だと学習い

たしました」彼女は美しい声で詫びを言った



   


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
   
    人間とロボットの共存が
   ずっとこのところの話題ですね。
   気が付くといつもこのテーマを
   考えています。
  
p.s. 2  
    ひとりではなかなか行きにくいリゾートのレストラン
   そして、ヨーロッパのリゾート地。
   手軽に気分を味わう方法を考えてみました。
   無人のサービスで。



  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2019年3月号です。
           
           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             (木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

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