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リサコラム
連載692回
      本日のオードブル

あるデザイナーの夢

第13話

「遊びに来て」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ピンクの
ベッドスプレッド
ピーコックブルーの
ヘッドボードカバー
白とピンクのピロー
ブラウンの天蓋と
天蓋カーテン
ライトブルーの壁、
ブラウンのカーテンに
ブルーグレーのレース
墨絵のような絨毯
モンドリアン風の絵画
全部がちょっと変で
全部がアート?
それでいいの?
いいのです。
変ってないと
目立たないの
です。




 







        

第13話 「遊びに来て」




  「そんなことがあるのだろうか?雲の上にいる人のような有名なデザイ

ナーのSariが自分のこの古いアパートのリフォームのことを知っている?

天地とも違うような立場なのに。


            


 もし、Sariがそんなことを知っているとしたら、間違いなく大げさな

チーフが、私が自力で部屋をリフォームして、それがお城みたいだとか、枝葉

をつけてSariにインフォメーションしたに違いない。Rikoの築40年

の賃貸アパートのコネクティングルームと、著名なデザイナーの広く素晴らし

い部屋とは比べものにはならないことはRiko自身が一番知っているのにも

かかわらず、さらに、それが何気ない社交辞令だとわかってはいても、『Ri

koさんを真似して、コネクティングルームにしようと思って買ったの』とい

うメッセージにRikoはうれしすぎて、子供のように自転車を飛ばした。

しかし、問題は、それに対する返事だとRikoは悟った。


            


 「私の安アパートの部屋なんて、そんなSariさまのようなお宅とはくら

べものにもなりません」とか、「とんでもないことでございます。私の部屋は

賃貸ですから」などとヘリ下るべきだろうか?それとも、「隣のお部屋が埋ま

らないので、大家さんが私の部屋とコネクティングルームにしてくださっただ

けですから。実にお恥ずかしい限りです」と事情を説明しながらもやはり謙遜

すべきだろうか?Rikoは好きな先生の染色の授業中にもかかわらず、Sa

riに返す文面をあれこれと考え続けた。


            


 しかし、どんなに考えても「賃貸の、安アパート、古いアパート」という文

句しか浮かばなかった。それと同時に、有名なファッションデザイナーに自分

のコネクティングルームのことを知ってもらえたうれしさは計り知れず、やは

りRikoは授業が頭に入らなかった。


            


 RikoはSariの部屋のお掃除を担当するようになってからというもの、

自分とSariを対比して考えるようになった。清掃のアルバイトをしながら

古いアパートで暮らすデザイナー志望のRikoという自分。そしてゴージャ

スなマンションを持ち、海外で活躍する有名デザイナーのSari。他のスタ

ッフは当然ながら、スタッフと顧客という以外、二人に関連性など見つけるこ

となどないだろう。もちろん、Sariにだって、そんな意識すらないだろう。

敢えて共通点を上げれば、ひとり暮らしの独身というだけであって、その他は

比較にならないくらいの違があることは歴然としている。


            


 このように水と油のように上下に分かれて存在し続ける二人をRikoはフ

ァッション関連というひとつの同じビーカーの中で別れて存在している水と油

のような感覚でとらえていた。もちろん、Rikoが浮上することのない水で、

Sariはすでに浮上している透明な美しい油。


            


 「それなら…」Rikoは教壇に立つ自分と同じくらいの若い講師の先生の

背中を見ながら思った。「もしかしたら、これをきっかけにドレッシングみた

いに混じり合えたりするかもしれない。個人宅のお掃除のアルバイトをしなが

ら美術系の専門学校に入り勉強し直している自分。やっとやりたいことを見出

そうとしている自分。その前に垂れ下がって来た、きらめく細い糸。もしかし

たら、この糸を頼りに水面近くに上がることができるかもしれない。もしかし

たら、何かのチャンスが、いや、チャンスのチャンスのさらにチャンスであっ

てもいい。とにかく、Sariという目指す目標の人物ともっと関わり合うこ

とができるのかもしれない。『デザインという枠の中で個性的な部屋を持つ二

人の女性が語り合う』なんていう見出しをRikoは空想した。「ありえなく

もないかも?」Rikoはそんな期待感に胸を躍らせる一方で、そんな自分を

愚かだと嫌悪しながらも、しかし、微かな希望に息苦しくなるほどに胸が躍っ

ていた。


            


 RikoはSariへの返信文をどう書こうかと迷いに迷った。たった1

の短いメッセージなのに…。「古いアパート、安アパート、賃貸アパート」

こんな言葉を連ねて有名なデザイナーに送って何かいいことがあるだろうか?


            


 Rikoは膝の上に乗せたスマホにメッセージを打ち始めた。「うれしいお

言葉ありがとうございます。Sari様のお部屋とはくらべものにもならない

のですが、ほとんどん自力でリフォームした部屋、そうコネクティングルーム

なのです。私の部屋にもいつかぜひ、遊びに来ていただけませんでしょうか?」

Rikoは左手で自分の心臓あたりをどんどんとたたくと、右手の人差し指を

送信ボタンに触れた?




   


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
    私が非常勤講師をしていた時は
    スマホを手放さない学生との対決でした。
    残念ながら、誰も私の部屋に遊びに来たいとは言わなかったの。


p.s. 2  インスタグラム始めました。
    私の部屋ばかりで、つまらないかもしれませんが。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2019年12月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

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