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リサコラム
連載704回
      本日のオードブル

ホテル・センチメンタル
part.2

第10話

「お花畑のパリで
つぶやく猫」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




花が咲く
赤い花
紫の花
緑の花
色とりどりのに
花が咲く
そんな春が来たから
私は幸せなんだな~


 







        

 第10話 「お花畑のパリでつぶやく猫」




  人間は自分以外の人間は何にも考えていないと思っている。大統領だって、

政治家だって、隣の席に座った人だって、自分以上に考えていないと思ってい

る。だから当然、猫なんて何一つ考えてはいないと思っている。でもそれは全

部大いなる間違いだ。


           


 私はよく自分の屋根裏部屋の天窓から外へ這い出てくる。そして屋根伝いに

同じような建物を5つ6つ渡って、いい場所にやって来る。こうして私は時々

昼休みには空中散歩をすることにしている。


            


 6階の建物からのパリの街の眺めは何度見てもいいものだ。遥か向こうにそ

びえるエッフェル塔以外はほとんどがほぼ同じくらいの高さだから、晴れた日

の見晴らしはこの上ない。特に春は最高に気持ちいい。私はその度に、今が最

高に幸せで、この街の人間は最高に幸せな人間たちだと思う。至る所で使われ

ていない古い煙突も、汚れて剥げかかった壁も屋根もあるが、こうしてパリの

街並を俯瞰してみる分には十分鑑賞に堪える。


            


 それもこれも、フランス革命のちょうど100年後の1889年に建築され

てからずっと世界中から旅行者を集めてきているエッフェル塔が街並を絵画な

らしめているのだと思う。まったくすごいことだと思う。この街はつくづく、

エッフェル塔のおかげで成り立っていると思う。


            


 今はパリに近代的な副都心ができて、世界中どこの大都市にもあるような普

通の高層ビルの光景が広がっているけれど、それを除けば、パリははやり花の

都に違いない。街を歩けば、花屋に当たるし、カフェに当たるし、ホテルに当

たる。


            


 それに猫にとっても遊び相手には事欠かない花の都ともいえる。パリは

100年以上そのままの古い建物を使い続けなくちゃならないから、ねずみだ

ってわんさといる。時折、かわいそうにも車に轢かれたねずみたちを見かける

が、それも日常茶飯事の光景で、だからと言って猫はねずみなんか食べないし、

実際、パリの街の猫はもっと上品な食事しかしないものだ。それに、今どきの

飼い猫はみなオーガニックの食事に慣らされているし、特に私のようなホテル

住まいの猫は朝から普段の市民はなかなか食べないようなクロワッサンとスク

ランブルエッグにフレッシュジュースの残りをいただける。


            


 さらにこのハッシュタグ付きの看板猫の私にはちゃんとした個室もあるし、

ふかふかなクッション付きのベッドもある。ハウスキーピングのニナが忘れな

ければ、月に2回はシーツを替えてくれる。だから、ホームレスの時代からす

ると、だいぶ人間に毒されてきた。時々はこれじゃいけないとは思う。こんな

ことじゃ、いつ起きるとも知れない様々な危機を乗り切れないのではないかと

思うが、人間たちはそうでもない。


            


 私の持ち場のコンシエルジュデスクのビルは、暇さえあれば、愚痴を言っ

ている。「あのゲストはいつも無理難題を言いつける。今日なんて会社の女性

スタッフに誕生日プレゼントを買って来てくれと言う。どんなものがいいのか

わからないと言えば、どんなものでもいいから任せるというんだ。マダムのお

好みなら大体把握してはいるのですがと言うと、とても恐ろしい目をしてにら

むんだよ。マダムのマの一言でも言うようなものなら、君またハウスキーピン

グからやり直しだねってさ。ほんと、こんなの困るんだよね~」


            


 私はビルのそんな愚痴を聞きながら、そんな楽しい買い物を言いつけられた

ら、すぐにでも飛んでゆくのにと思った。だって、散歩しながら好きなものを

買ってくればいいんだろう。自分のガールフレンドにプレゼントするつもりで

さ。そんなことで愚痴なんて言ってたらすべてのことに愚痴りたくなるだろう。


            


 もちろん愚痴を言うのはビルに限ったことじゃない。みんな人間は雨に降ら

れて濡れたと愚痴を言い、電車が遅れたと愚痴を言い、だからアポの時間に遅

れたじゃないかと愚痴を言い、ランチが出てくるのが遅いって愚痴を言い、料

理がまずいと愚痴を言う。そして社会が悪くて、政治が悪くて、景気が悪くて、

様々なものを見つけてきてはあれが悪い、これが悪いと愚痴をいう。


            


 でも、雨にぬれられるなんて、砂漠に住んでいる人には最高に幸せなこと

なんだ。電車どころか、電気も水道もないところに住んでいる人はハエが止ま

っていない衛生的なランチが食べられるなら、何10kmだって歩いて食べに

くるだろうよ。


            


 僕は屋根に上って、カフェで愚痴を言い続ける人間たちを観察しながら、い

つもこう思う。愚痴るのをやめて上を見上げれば、空は青くはないかもしれな

いが、晴れた日はエッフェル塔だって見れるんだよとね。どんな嫌な目に遭っ

た時でも、春になれば、あちこちで花が咲き始めるんだから。それだけで十分

素敵な気分じゃないかとね。


            


 そんな人間のビルは愚痴を言いながら、私の頭をなでる。そして、「何にも

考えなくていいから猫はいいね。でもそれもかわいそうなものだね、人間じゃ

ないからね」などとのたまう。そんな時、私は猫語でこう言うんだ。「何も考

えていないって思っている君が一番の幸せ者なんだよ。現実にはお花畑でお散

歩なんてしている人はいないんだよ。みんな困ったことにめいっぱい悩んでい

るんだから。そして愚痴を言える時が一番幸せなんだよ」とね。


            


 そして私は幸せそうに鳴いてやった。毎日何かの愚痴を言ってストレス発散

して十分癒されてるはずなのに、ビルは私の「ニャオ」に一番癒されるらしい。


            


 人間ってとても変わった生き物なんだよ




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
  マクロン大統領の画像に「私たちの大統領を支持します」とコメントしている
  ツイッターを見ました。
  その上に”エイプリル・フ~ル”と書かれていました。
  フランスも幸せな国ですね。こんな遊びをして拘束されないのですから。

  次回は4月8日(水)です。


p.s. 2  インスタグラム始めました。私の日常です。


     


   私のセカンドベッドルームならぬ、セカンドバルコニーにも
 
   春がやってきました。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2020年3月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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