MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載721回
      本日のオードブル

ある夏の日々

第2話

「1週間ののち」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




海を見渡す
リゾートのバンガローで
ひとり物思いにふける女性
白いベッドと白いソファと
対照的に薄青い海と
空が感傷的な
気分に
誘います。
あとわずかで
心地よさとも
さよならです。




 







        

 第2話 「1週間ののち」





 
「バリのリゾートに来ています…この上なく、そう、最高です。過去に

行ったどのリゾートより居心地がいいのです。そんなこと言うと、旅慣れたあ

なたはロケーションとか、サービスとかホスピタリティとか、そんな横文字の

外来語で説明しようとするかもしれないけれど、でも、そんな言葉を忘れてし

まうようくらい、居心地がよくて、それで最初の予定を忘れて、すっかり、フ

ツウの浮かれた観光客になっていました。実はこの夏休みにひとりでこのリゾ

ートに来たわけは、ビーチパラソルの下で冷たい飲み物を飲んだら絡み合った

糸もすっきりほぐれるはずだと思ってのことなの。まあ、このリゾートの売り

文句に乗せられただけかもしれないけどね…でもね、箸の上げ下ろしにもうる

さいというけど、まさにそんな小姑みたいな上司と、険しい競争関係にある同

僚たち、そんな諸々からひと時解放されたかったの。まあ、リゾートにひとり

でやって来る人なんて大方、私みたいな人ばかりかもしれないけどね。でも、

この手紙が届くころには、私のことで大騒動になった後でしょうから、上司も

考えを改めることでしょうし、それに同僚だって私がいなかった間にてんてこ

舞いになって、私の存在に感謝しているはず。きっと職場環境も人間関係も好

転するでしょう。その後はなるようになるでしょう。今はそんな心境なのです

…」


            


 Rei
はここに来ることは誰にも言わず、スマホも持たずに来たにもかかわら

ず、でもやって来てみるとハイソなリゾートの心地よさやこの逃避行の理由を

どうして誰かに打ち明けたくなって、リゾートを後にする前、友人のMiriに

向けて心境を綴っていた。


            


 「部外者のあなたにこんな打ち明け話をしてごめんなさい。でも、リゾー

トって不思議なところね。自分自身を守るために分厚くなった鎧(よろい)の

ようなものがすっかり剥がれ落ちて、自然体になるというか、開き直った心境

になれるんだから…」最後にReiは日本に戻ってからまた会いましょうと結ん

で封をした。


            


 デスクの引き出しにはたっぷりの便箋と封筒が置いてあった。しかも、透か

し入りの薄クリーム色の高級な便箋にデコボコした手触り感のある封筒。めっ

たに手紙など書くこともなくなった今なのに、そんな古風な紙を見ると無性に

手紙をしたためたくなるものかもしれないとReiは思った。そして出発の準備

を終えると、自分へのお土産にと数枚の便箋と封筒を自分のバッグに入れてか

ら、フロントに電話をかけた。


            


 「30分後にチエックアウトしたいのですが、スーツケースの引き取りをお

願いします。それと、手紙を日本に送りたいんですけど…」「かしこまりまし

た。お手紙はフロントにお持ち下されば切手を貼って投函いたします」フロン

トの女性スタッフはホスピタリティを満載にして答えた。「わかりました。あ

りがとう」Reiはそう言うと電話を切った。すぐにスタッフが荷物の引き取り

にやって来た。Reiは見納めにと、海を見渡せるテラス脇のベッドの上に腰か

けた。


            


 少し前に陽が沈んだ後で、まだうっすらと明るい空に細い三日月が出てい

る。この月が沈むころには飛行機の中にいるだろう。さあ、明日からまた厳し

い現実が待っている。残りわずかな楽園での幸せの瞬間をこ記憶の中に納めて

帰ろう。そう思うとReiの胸に涙のような液体がたまってゆくような感傷的な

気分に襲われた。センチメンタルジャーニー、そんなものじゃないけれど、た

だただ、日ごろの雑事と人間関係に嫌気がさしただけなのよね、とReiは思っ

た。しかし、今、内海につながった薄青い空と入江の島を眺めていると、それ

も遠い昔のことのように思えて、自分は何に悩み、嫌気がさしていたのか、そ

の正体も薄ぼんやりしてしまっていることに気づいていた。そんな物思いにふ

けっているうち、30分はあっという間に経ち、うっかりその封筒を部屋のデ

スクの上に置いたままで、チエックアウトしてしまった。


            


 Reiは日本に戻ると翌朝、何事もなかったように出勤した。1週間の夏休み

を取ったReiの顔は清々しく見えたのか、同僚は明るい笑顔でReiに接した。


            


 「Reiさん、どこに行ってたの?いない間ほんと困ったわ、連絡もつかな

くて」Reiはそんな反応を期待していたのに、誰も何も文句ひとつ言わなかっ

た。さらにReiがもっともショックだったのは、会社に置いて行ったスマホに

ひとつの着信さえ入ってはいなかったことだった。


            


 Reiは自分の不在の間、通常の様々な問題が発生してはいたものの、他のス

タッフですべて解決済みで、自分の顧客との交渉事さえ、スムーズに済んでい

たことを知った。


            


 それから2週間後、Reiは会社を去った。幸いなことはReiがリゾートの部

屋に置き忘れたMiriに宛てた封書はReiの自宅に届けられたことだった



   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2020年6月より毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1
 
 1週間休んだら、自分自身が組織にとってどんな役目を
果たしているのかわかると言います。
怖いけど休んでみませんか?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2020年7月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.