MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載729回
      本日のオードブル

桃源郷からの手紙

第1話

「懺悔」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ボルドー色
の縁に
まだら
模様の
絨毯
踏み
ながら
ずっと
ずっと
長い廊下を
突き当りまで
歩いてゆきました。
バラの花瓶があります。
でもなんだか生気がないのに
それはそれはとても美しいのです。




 







        

 第1話「懺悔」




 「神様、私はとうとうあの場所にやって来てしまったのでしょうか?

あんなに拒否していたのにも関わらずです。


            


 今、ここはどこなのか、皆目見当がつきません。目が覚めると全く身に覚え

のない場所に来ていたのです。これはいったいどういうことなのでしょうか?

何かの罰なのでしょうか?私は何も悪いことはした覚えがありません。実に善

良な市民だったのです。もちろん、今も、そしてこれからもです。そんな私が

地獄に落とされる理由は全く考えられません。


            


 不幸中の幸いはもしもここが地獄だったとしても、工事現場とか、戦場とか

ではないらしいところです。まあ、戦場と言えば、私の人間関係はそのような

感じではありましたが。ともかく今のところは静かで平和な雰囲気は感じるこ

とができます。ただ、誰もいないのです。長い廊下の突き当りまで歩いて行き

ましたが、それでも、人影と思えるものもありません。


            


 私の数少ない経験の中で想像してみますと、どこかの邸宅か中世のお城のよ

うな雰囲気がします。実際の中世のお城には入ったことがないのですが、重々

しい威圧するような空気も多少感じますし、でも、すがすがしい香りも漂って

います。天井は私の住む2DKのマンションに比べると格段に高く、突き当り

の正面の窓は白い枠の開かない格子窓で、空が見えます。高い位置から白い光

が入ってきているので、きっとお昼前の時間帯ではないかと思いますが、もし

もここがあの世であれば、時間帯などなんら考慮すべき要点ではありませんが。


            


 その窓にはサファイアブルーのような深い青のカーテンがだらんと下がって

いるのです。だらんと言うのは語弊があるかもしれませんが、とにかく、国会

議事堂か、天皇の御所か、ゴージャスホテルのラウンジにでもあるようなずっ

しりとしたカーテンが下がっているのです。そして、窓の両側には猫足の椅子

が2脚並んでいます。ひとつが紫色の張地でその上にモスグリーンのクッショ

ン、もう一つがブルーグリーンの張地の上にボルドー色のクッションが置かれ

ています。


       


 しかし、さっきまで誰か座っていたような形跡もないのは、やはり、この場

所が無人だという証拠でしょうか?しかし、どこにもほこりなど積もってはい

ないのです。天国か地獄かの区別もつきませんが、ほこりと言うのは人間の出

すものだからきっと私がいるのはやはりそのどちらかの場所なのでしょうか?

そうだとしても、インテリアは非常にレベルが高いというのは素人目にも明ら

かです。壁は濃いネイビーブルーでそこに淡いベージュの飾り枠のようなもの

がついています。その飾り枠がドアなのか、ドアに見立てた飾り枠なだけなの

かがわからないのですが、それがドアだとして、私が最も心配しているのは、

そのドアを開けてみるべきかかどうかということです。そのドアを開ければ

出口につながるのか、でも、出口とは何の出口なのでしょうか?あるいは、

もし、私のごちゃごちゃした部屋につながっているのであれば、私はこの場

所のほうが遥かに居心地よさそうです。そうであれば、一度、そのドアを開け

て外に出てしまえば、私は二度とこの屋敷に戻ることができないとしたら、

また、考えてしまうかもしれません


            


 私はこうして、いろいろなパターンを考えてみました。しかし、結局、ここ

は天国なのか地獄なのか、あるいはドアの向こうが天国なのか、地獄なのか、

私の散らかった部屋なのか、私は一体どうしてたらいいのか、それが全くわか

ないのです。


           


 神様、お願いです。この優柔不断な私に助言をお与えください。私は善良な

市民だと先ほど申し上げましたが、実を言えばこれまで、いろいろな人にお世

話になって来ましたが、そんなお世話を私は他の人に施したことなどないので

す。


            


 ことに最近はテレワークばかりで、人に接する機会も少なくなったので、

ちゃんとしたコミュニケーションもできなくなってきています。メールも面倒

で、チャットばかり。手書きの手紙などもう20年以上も書いたことがない気

がします。人に対してあたたかな言葉をかける経験が薄れてきているため、テ

レビの番組で悲しい目に遭ったり、苦しい思いをしたり、生活に困っているか

わいそうな人が出てくると、すぐにチャンネルを変えてしまうのです。


            


 それに最近は誰も家にやって来ないため、部屋の掃除も怠りがちです。だっ

て見られることもないので、その必要性を感じないのです。


            


 そんな乾燥しきった生活で食べるものも、いいかげんで、もっぱら、

Uber Eatsに頼り切りです。考えてみれば、その配達員さんは坂の上にある

私のマンションまで自転車を引っ張って運んでくるにもかかわらず、いつも苦

しそうな顔ひとつせず、「ありがとうございます」と食事を渡してくれるので

す。なのに、私には料理が冷めていないかだけを心配しているのです。こんな

生活を続ける中で、感謝するという気持ちがどんな気持ちだったのかを忘れて

いるのではないかと自分でも思います。でもその善良な配達員さんがもう坂を

上るのは苦痛だから、私と同じようにテレワークがいいとそちらに行ってしま

ったら、私は飢え死にするしかないのです。


            


 神様、この全く善良でない小市民の私をどうかお許しください。ここでそれ

ら全部をひっくるめて反省し、心より悔い改めます。これは私の懺悔です。

だから、お願いですから、このドアを開ければいいのか、どうしたらいいの

か、神様、お教えくださいませんでしょうか?


      


 いえ、いえ、実は、さっきの懺悔は序の口です。実はもっと言っていないこ

とがあります。それを言えば、ここから出していただけますか?どうかどう

か、お教えくださいませ、神様」




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2020年6月より毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1
  
世界同時多発テロのように世の中の劇的な変化を起こした新型コロナウイルス。
そのコロナ渦で浮上した問題もたくさんありますね。
私なりに考えてゆきたいと思っています。

p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2020年9月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.