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リサコラム
連載731回
      本日のオードブル

桃源郷からの手紙

第3話

「変身」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルー
ピンク
ネイビー
グリーンの
大きな絨毯
シルクのような
グレーのカーテン
ダークピンクの長椅子
たくさんのクッション
ピンクの二人掛けソファ
オットマンに
コンソールテーブルに
たくさんのランプスタンド
シャンデリア型のブラケットまで
さあ、変身の舞台は揃いました。




 







        

 第3話「変身」





 「私は大きな息を吐くと、目を覚ましました。私は自分の吐いた息の音で

目が覚めたのです。


            


 神様、人がこの世からあの世に行くとき、息を引き取ると言いますよね、

そして、生まれたばかりの赤ちゃんはおぎゃあと泣きながら息を吐いて生まれ

てくるのですよね。つまり、魂が吐息となって別の肉体に移動しているのでは

ないのでしょうか?だから、人は亡くなるときに息を吸って、あかちゃんは息

を吐いて生まれてくるのではありませんか?もしもそれが真実というのなら、

今の私なら、ほんとうに今の私なら納得できます。信じがたいことですが、ど

うやら私は変身し、生まれ変ったようなのです。


           


 ふかふかのベッドに横になって、いったいどのくらい眠っていたのか、どの

くらいの時間が経ったのか、わかりません。しかし、まさしく生まれかわった

気分で、それまでの恐怖心などどこに行ったのかというほどにすがすがしい気

分で背伸びをしました。


            


 もうここがどのなのか、どうして私はこのお城のような場所にいるのかなど

そんなことはもうどうでもよくなっていました。


            


 私はベッドから降りると、広いゴージャスなホテルのような寝室の中を仔細

に見て回りました。そして、壁に見えていたもう一つの白いドアを見つけたの

です。


            


 「よし、探検だ!」私は探検隊のような気分で白い壁のようなドアに手をか

けました。ドアの先には小部屋があり、そしてすぐに左に折れるとまた白い観

音開きの扉がありました。変身した私には、怖れの感情はありませんでした。

だから、思い切り、中に向かって扉を開いたのです。


            


 そこはリビングというより、奥に行くほど広くなったサロンという感じでし

た。ブルーとダークピンク色のクッションが交互に10個ほど載った2.5m

はあるような長椅子と、また別にダークピンクの二人掛けのソファがありまし

た。部屋の中心にはライブルーとピンクのまだらな模様を取り囲むようにネイ

ビー、次にハーバルグリーンの額縁のある巨大な絨毯が敷かれていました。窓

には天井近くからシルクの輝きを持つシルバーのカーテンが下がっています。

そして至る所にランプスタンドが置かれ、天井だけでなく壁からも白いシェー

ドを被ったシャンデリアが下がっています。


            


 「ああ、なんて美しい!」私は部屋の開き扉の前にじっと立ったままで、ま

ばゆいばかりの美しいサロンを眺めました。150年前、こんなクラシカルで

ゴージャスなサロンにマルセル・プルーストのようなブルジョア階級の作家が

やって来ては、名士や貴族出のマダムと一緒にお茶をしたんじゃないかしら?

などと想像しました。とすると、もしかして、もしかしたら、私はここに秘密

の招待を受けたのかもしれない。ここの部屋に辿りついたということは、きっ

と誰かが私を待っているということではないのかしら?その内、ここに執事が

やって来て、「ご主人様がお待ちかねでございました。間もなくこちらへいら

っしゃいます」などと言いながらお茶を運び込んでくるのではないかしら?

優美なインテリアを眺めながら、私の妄想はどんどん膨らみました。


            


 そしてようやく決心して私はそっとサロンの中に足を踏み入れました。

もちろん、誰もいませんでしたが、私はもうかなり大胆になっていました。

そんな幸運が私に転がり込んできたのなら、受けようじゃないのという気分

でした。と同時に、私は自分の薄汚い服装に飛びあがるほどのショックを感じ

ました。この貴族的な部屋にどう見てもこんな薄汚い服は合っていなかったの

です。しかし、今まで薄汚いとは全く感じたことはなかったのです。私はいわ

ゆるジャージといわれるグレーの上下を着ていました。これが私の部屋着であ

り、仕事着であり、パジャマでもあるのです。仕事がリモートになってからと

いうもの、丸1日同じジャージを着たままで過ごしていました。だから、

もし、ここに執事がやって来たらどうしようなどと勝手な妄想の中で私は不安

に駆られたのです。


            


 どこかに、着替えのローブとかそんなものがあるはずだと思いました。

私は以前、何かで読んだことがありました。貴婦人がネグリジェの上に長いロ

ーブをさっと羽織ってサロンでお客の相手をするためにサロンに隠しクローゼ

ットが作られていると。


            


 やはりありました。その秘密の扉を私はすぐに見つけました。壁に見立てた

白い扉をそっと押すとそこにはシルクのような色鮮やかなローブが数枚かけら

れていました。私はすぐにその中から明るいピーチ色のスリップワンピースと

ローブのアンサンブルを引っぱり出し、着ていたジャージを脱ぎ捨てて、長椅

子の下に押し込むと、すぐに、スリップワンピースを着てローブを羽織りまし

た。そして、そっと長椅子に腰を下ろしてみたのです。


            


 神様、その時初めてわかりました。これが変身というものですね。しかし、

私の場合は、カフカの小説『変身』の主人公のグレゴールとは全く逆に、毒虫

から優雅な貴婦人になったのです。


            


 そのローブのアンサンブルを羽織って長椅子に腰かけた瞬間、今まで味わっ

たことのない優美な気分が私を別人にしたようなのです。


            


 以前の私なら、すぐに自撮りして、友人に送ったことでしょう。以前の私?

以前の私とは、おそらくつい、数時間前の私のことです。


            


 誰にも見られることはないから、掃除もいい加減な部屋でジャージを着て、

いつも心の中に人に対してのもやもやを抱きつつ、時には自虐的になり、また

時には犠牲者的な自己憐憫に浸っていた、あの毒虫が、神様、まさしく私だっ

たのです




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2020年6月より毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1
  
 おかしみの中でどんどん妄想が広がる。
このわたしを笑うことはできません。

p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2020年10月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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