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リサコラム
連載742回
      本日のオードブル

あるパリのホテルで

第7話

「ある孤独なクリスマス」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




石づくりの
歴史的建造物が
立ち並ぶ広場に面した
由緒あるホテル
いろいろな
人間模様が
繰り広げられる
24日から25日。
ホワイトクリスマスの
国、地域もある中で、
一風変ったクリスマスを
過ごしている方もいるようで。


 







        

 第7話 「ある孤独クリスマス」




 午後4時、私は持ち場についた。


 午後5時、日没。あたりが暗くなると、パラパラと雪がちらつき始めた。


            


 広場に集まった人々が歓声を上げる。”ホワイトクリスマスだ!”と。その歓

声が広場から19世紀の石づくりの建物にこだました。


            


 午後7時、ホテルの前から人々の姿が消え始めた。雪は静かに降り続く。

私はホテルのゲートの前に目を配りながら、次第に石畳がアイスリンクのよ

うに冷たくなり、その冷気が私の靴の中に侵入してくるのを感じていた。


            


 昨日のクリスマスイヴは久しぶりにフランスの、いや、世界中の人々が1日

限りの解放感で満たされた。不安感と共に。そして昼頃から子供たちと子供

の心を持った大人たちがこのヴァンドーム広場に面したこの高級ホテルの門

の前に大勢集まって来た。クリスマスのこの時期、普段、簡単に近寄ること

もできない、いかめしい金の紋章をもつホテルの鉄の門扉の中にクリスマス

の特別なデザートを販売する出店がオープンするからだ。


            


 午後2時の開店と同時に出店の前には人だかりができ、デザートシェフの

ペレによる美しいお菓子は瞬く間になくなる。そして門の前に置かれた巨大

なクリスマス仕様のテディベアの前で人々は記念撮影をするのだ。いったい

どのくらいの人がこのシェフのお菓子とテディベアを肴にソーシャルメディ

ア上で話をしただろうか?そう、超ハイソなホテルが一般市民にも寄り添う

姿勢を見せられる絶好のチャンスがこのクリスマスなのだ。


            


 しかし、今年はパンデミックのために、なんとクリスマスのこの時期に異

例の午夜間外出令が発令された。ただし、イヴだけは大統領がその禁を解い

てくれたため、昨晩のイヴは例年通りの盛り上がりを見せた。人々のカウン

トダウンの掛け声が0になると広場のすべての人々がマスクをしたままで

「メリークリスマス!」と叫び合い、
写真を撮り合った。ビーズもハグも

ないクリスマスは私も初めて経験したが、特に奇異でもなかった。このイヴ

の夜の外出禁止解除は政府のトップの人々のためでもあったかもしれない

が、不運にもフランス大統領自身は隔離されたままだったらしい。


            


 そして今日、
クリスマスの午後8時の鐘がなった。また外出禁止が施行

される時間だ。7時に閉店したデザートの出店も営業を終え、ホテルの前に

も広場にも人々の姿がなくなったが、私は警備を続ける。体が頑強にできて

いた私はたまたま警備員という仕事を選んだが、今にして思えば、それは幸

運だった。上の学校には行けなかったがその代わり、譲ってもらった本で多

くを学ぶことができたと思う。特に精神分析学が私のツボにはまった。

当然、フロイトもユングも読んだが、今、多くの人が言うように私もアドラ

ー心理学が今の人々にはすんなり当てはまると思う。すべての苦悩も、問題

も人間関係から生まれるという分析は実体験でとても納得できる。というの

も、私の父も母もチュニジアからの移民で人種の壁と向き合って生きて来た

からだ。


            


 両親は私を筆頭に5人の子供たちを育てるのに必死で、たくさんの仕事を

かけもちした。父はまずごみ収集業からスタートして、次にタクシードライ

バーになった。母は昼間、ホテルの客室の清掃、その後、夜間のビル清掃と

1日掃除の仕事に追われ、くたくたになって深夜帰ってきた。だから、私は学

校に上がる頃から食事の支度も家の掃除もしてきた。弟、妹を教育して家事

分担させる役目もしたが、それは当たり前で不満なんてなかった。


            


 しかし、もしも、父と母の仲が悪く離婚でもすることになっていれば、

私たちは苦境に立たされていただろう。だから、パンデミックで両親に会え

ず、クリスマスも祝えなくても、二人が今でも仲よくしているだけで私は幸

せを感じる。


            


 現実にフランスでは2人に1人以上が気軽に離婚するが、離婚すれば、子

供連れ同士でまた別のパートナーと暮らし始め、そこで再構成家族が誕生す

る。さらにその再構成家族が離婚によりバラバラになり、新たな再々構成家族

ができる。私の意見では、フランス人のこの自由恋愛主義こそが多くの不幸

を生み、そしてそれが戦争にさえ発展したと思っている。もちろん、多くの

小説も生んだのだが。


            


 この大人の喧嘩が大きくなったものが戦争なのだから、歴史を辿れば無駄

な戦争なんてたくさんあるだろう。その喧嘩は怒り、ヘイトスピーチ、短気

に由来すると思う。だから、すべての不幸は人間関係における短気と不機嫌

から生まれたものだというのが私のゆるぎない結論だ。


            


★だからといって、世の中には幸せなことより不幸なことが多いとは決して

思わない。しかし、大人はもちろん、無関係な子供さえ悲しみ持たされる世

の中になった時代に、その憂い、悲しみを発散し、埋め合わせをするために

多くの人々はクリスマスという時を共有するのだと私は思う。


            


 午後9時、まだ雪は降り続いている。今晩はかなり冷えそうだ。私の任務

は朝まで続くが、外出禁止で人々が外出禁止で不平を言っているこの時間、

私はストレスから解放され、こうして瞑想にふけることができる。


            


 人の流れが途絶えた絶えた静かなヴァンドーム広場を私はひとりうろつく。

散歩好きの哲学者だって、精神分析医だって知るはずがない、こんなすばら

しい孤独なクリスマスの夜に瞑想しながら




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2020年6月より毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1
 
  短気と不機嫌が最も嫌い。孤独が好き、かっこいい!
 私もそれが一番すき。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2020年12月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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