MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載759回
      本日のオードブル

ホテル・ド・ルーヴル

第10話

「平和で刺激的な日常」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




アメジスト色の
シルクのドレスをまとう
マダムはスレンダーな肢体を
くねらせて、絵画に熱中しています。
その隣で、ブルーのエプロンドレス姿の
ナミコはじっとして何を思うのでしょうか?
さあ、
物語のはじまり、はじまり




 







        

 第10話 「平和で刺激的な日常」




  

 ナミコの朝は午前5時半から始まる。ベッドで目が覚めると、顔を洗い、

それからすぐにベッドを整え始める。ナミコとマダムのシーツの交換日は金

曜日と火曜日の週2回。最近、ナミコは子供の頃に読んだあしながおじさん

の主人公、ジュディの日常を綴ったシーンをよく思い出すようになった。


           


 それはジュディのいる孤児院に監督官がやって来る日の朝、年長者の

ジュディは、これからすべての子供たちのベッドがしわ一つなくベッドメイ

クして、部屋はホコリの一つもなく掃除し、さらに子供たちをお風呂に入れ

て髪を整え、大人しく整列させなくてはならない超多忙な一日を思ってジュ

ディが憂鬱になる場面だった。


            


 しかし、ナミコはすべての子供たちのベッドの青いシーツがきちんと整

い、ホコリひとつなく整っている場面を想像するだけですがすがしい気分

になった。それどころか、毎朝、きちんとベッドを整え、それから床にモッ

プをかけ、花の水を替えてから1日を始めること、そしてマダムのために食

事の支度をすること、自己満足であったとしても、誰かのために働いている

という実感が誇らしくもあり、心地よくも感じるようになっていた。


            


 そして、朝、住人のみんなを玄関で見送ると、1日の大半の仕事が終わっ

たようなほっとした気分になる自分はまさに寮母のような感覚でいることに

ナミコは気づいていた。


            


 その後、ナミコがすることは、朝が遅いマダムのために朝食の支度を始め

ることだった。マダムはしぼりたてのジュースとコーヒーしか召し上がられ

ないから、仕度はものの10分で終わる。それから軽い昼食はほぼナミコと

一緒にし、午後3時になると、ナミコのお手製のいちご、杏、りんごなどフ

ルーツジャムを添えたスコーンでアフタヌンティの時間となる。


            


 さらに夕方6時ごろになるとアペロの時間がやって来る。アペロとは1日

の仕事が終わった後、夕食前に軽いおつまみとワインでその日一日のことを

何でも話し合うミーティングの場にもなっている。そのアペロに欠かせない

のがマダムの本場仕込みのタプナードだった。


            


 マダムは5,6年ほど南フランスを中心に住んでいたことがあるらしく、

この南フランスの伝統的なタプナードのレシピはそのままナミコに伝えら

れ、ナミコの得意料理の一つになった。


            


 材料は黒オリーブやグリーンのオリーブ。それに刻んだニンニクを入れ、

ケッパー、アンチョビと良質のオリーブオイルを入れてミキサーで混ぜ合わ

せるだけの簡単なオリーブのペーストなのだが、苦味と酸味が交じり合う大

人の味はスライスしたバゲットに塗ってその上にスモークサーモンやヤギの

チーズなどを乗せて食べると軽めの白ワインに最高に合う。


            


 「これを食べるとね、南フランスの風や土の匂いを感じるのよ」とマダム

は言う。マダムは絵画や彫刻など芸術作品だけでなく、ワインにも詳しく、

アペロの時間には南フランスで過ごしたゴッホ、シャガールなど多くの近代

の画家、そしてカミュなどの作家たちの話やワインにまつわる話をナミコに

聞かせてくれる。マダムはまたよく、「フランスでは、普段の生活を楽しむ

ことが当たり前だから、高級レストランで友人と優雅な食事をするより、

バーやビストロのようなところや、自宅に招いて気軽に食事を楽しむことの

方が多いのよ」と言った。さらに、「一度もホテルのレストランなどで食事

をしたことがない人だっているのよ、それはお金があるとかないとかには関

係はなく、つまり好みだから」とも言った。


            


 アフタヌンティとアペロというイギリスとフランスのいいとこ取りのよう

な習慣とマダムとのおしゃべりが今のナミコにとってはもっとも楽しい時間

であり、さらに、常に花を欠かさず、朝は花の水替えとから始めるというマ

ダムはナミコにとって主従関係を越えて生活スタイルのお手本のような存在

になっていた。


            


 アペロの後、ナミコは夕食までの2、3時間を残りの家事の時間に当てて

いるが、今日はマダムがルイ14世の肖像画の作品が出そろったから見に来

てちょうだいと言った。作品は住人のみんながそれぞれ、マダムのオフィス

に持ち込み、マダムが審査して優勝者を決めることになっていたからマダム

はその中でまずは3枚を選び、自分のオフィスの壁に架けてからその中から

1作品を選ぶことにしていた。


            


 ナミコはシフォンレースに囲まれ、壁にかかった3枚のルイ14世の肖像

画を眺めた。「ナミコさんはどれが好き?」マダムが作品の壁の方にナミコ

の背中を軽く押した。しかし、その3枚の肖像画はナミコの想像を遥かに超

えた作品に思えた。


            


 その作品の一つはロングガウンを羽織ったパンクミュージシャンのような

ルイ14世、もう一つは、赤い帽子と赤いサンダルを履いてさすらうストリ

ートミュージシャン、そして3つ目は白いタイツに赤いバレーシューズを履

いたお笑い芸人のようなルイ14世にナミコの目には映った。


             


 贅を尽くし、世界中に先端の技術力を見せつけることになった壮麗なヴェ

ルサイユ宮殿を建造させ、絶対王政の権力者はひとりもいなかった。


             


 ナミコはアメジスト色のシルクのドレスを着たマダムの背中をじっと見な

がらぽかんとしていた。「ねえ、どれもステキでしょ?だからどうしても一

つに決められないの」マダムはそう言うと華奢な体を優雅にねじりながら、

3人の変ったルイ14世をまたじっくり眺めた。


            


 ナミコの日常は平凡とはかけ離れ、常に刺激に満ちている



  




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 
 ヴェルサイユ宮殿が大嫌いと言われた建築家の先生がおられました。
ルイ14世は好きな方より嫌いな方の方が多いと思います。
しかし、ルイ14世が眺めたかった噴水で初めて水の循環型が採用され、
循環型社会の先駆けとなったようです。
その17世紀当時の配管が未だ使われているとは信じらないことです。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年4月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.