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リサコラム
連載763回
      本日のオードブル

ホテル・ド・ルーヴル

第14話 最終回

「芸術家アパートの執事が
見た幸せな日々」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




石造りの建物から
オレンジ色の光が
漏れ出ています。
おしゃれなカフェ
美術館?それとも
工場でしょうか?
白いテーブルには
ブルーの
グラスが4つ
人影はありません。
これはきっとひとつの術ですね。


 







        

 第14話 「芸術家アパートの執事が見た幸せな日々」



  

 「『モナリザとモネの睡蓮なら、わかります』それが私のマダムとの


面接用に用意した答えでした。


            


 そして私は今、そのマダムがオーナーのホテル・ド・ルーヴルという芸術

家を目指す住人の住むアパートで住み込みの執事、つまりは管理者として働

いています。


            


 6年前、私はそのアパートの管理者の求人広告をたまたま通りかかった

カフェの窓辺で見つけました。そのカフェは周りの建物とは異質な雰囲気の

石造の建物で、細長い窓からは温かなオレンジ色の光が漏れ、きっとこのカ

フェでそのホテル・ド・ルーヴルのオーナーや芸術家志望の住人たちが集っ

ているのだろうと思いました。しかし、それまで芸術とは無縁な世界で生き

てきた私にはどう見てもその職場は分不相応に、しかしそれ以上にアカデミ

ックに輝いて見えたのです。しかも貼り紙には、『絵画、彫刻に多少の興味

がある方』と書かれていましたから、図々しくも『多少』という言葉に期待

をしたのです。そして翌日にはオーナーのマダムとの面接の約束を取り付け

ました。


            


 その時の私はルーヴル美術館という名前は知っていても、そこにどんな絵

があるのかと言われれば返答に困るくらいの芸術に対するレベルでした

(笑)。そんな私だったからこそ、『モナリザとモネの睡蓮なら、わかり

ます』などという答えを堂々と用意できたのだと思います。それを悟って

か、マダムは私に絵画や彫刻に関する知識を尋ねるでもなく雇って下さっ

たのです。


 翌日から私はホテル・ド ルーヴルというアパートのオーナーのアシス

タントとして、アパートの清掃、および教育係として働き始めることに

なりました。しかし、現実には私の方が彼らから多くのことを学ぶことに

なりました。


 それまでは生活するために比較的賃金の良い清掃や家事の仕事をやって

きた私でしたが、その私がキッチンをピカピカに磨くと、彼らの中にはキッ

チンの写真を撮ってそれに手を加えて自分の作品にする人がいたのです。

私が日曜の朝の食事会でパンを焼きテーブルセットをするとそのテーブルの

写真を撮り、それを油絵にする人がいるのです。また私が廊下の床にモップ

でワックスをかけていると写真を撮って私の姿を彫刻にする人がいるので

す。私が被写体になるなんて、ほんとうに驚きでした。


            


 アパートの住人は芸術家あるいは芸術家志望とは言え、皆、別に仕事を持

っています。つまり、絵画や彫刻といった直接お金になりにくいものとは別

に収入の道があるのです。そのような生活の中にいるからでしょうか、彼ら

が芸術作品として顕すものは美しい風景でも、静止した人物モデルでもな

く、実生活と密着した普通の日々のひとこまなのです。しかも、誰も題材に

しないようなシーンばかりです。しかし、彼らにより絵になり、彫刻になる

と、こんな芸術音痴の私でも、その作品を理解できると思えるのです。


            


 そんな彼らの作品を知るに付け、私は喜んで掃除婦のモデルになりまし

た。だって、これまでどんなにピカピカに掃除をしても、誰かに

「美しい!」とか、「写真撮っていいですか?」なんて言われた事はもちろ

1度もありませんでしたから。


            


 それから家事や掃除に対する私の意識に少しずつ変化が起きました。それ

までは夕方6時までが仕事だとすると、その6時が来るまで仕事をしながら

苦痛に耐えるという意識だったのが、床を磨く、パンをこねる、その一瞬一

瞬がとても貴重なものに思えるようになりました。そしてもっと美しくなる

ように、もっと美味しくなるようにと考えながら心を込めるという意味も理

解できるようになりました。そうなると、ブラシも雑巾さえも、大事な愛お

しいものに見えてきて、掃除が終われば、ブラシは2本のブラシ同士でハケ

の中の汚れをとり、取手はスポンジで磨く、雑巾はきちんと並べて干すとい

う具合に、道具に対するケアさえするようになったのです。


            


 そしてアパート住人それぞれと仲よくなるうちに、それぞれみんな違う個

性的な表現方法を持っていることを知ることになりました。例えばカンナ

は、20代前半の画家志望で、運送業で働いています。彼女の描く絵は段ボ

ールを抱え、汗を噴き出しながら働く人々の絵ばかりなのです。その彼女の

絵は最近SNSを通してファンを増やしているのです。また、Ryoとい

う40代の彫刻家は、危険な高所の現場で働く人だけを彫るのです。私は

当初、そんな絵や彫刻が人気であることに疑問を持っていました。美しい

情景、モナリザのように誰もが価値を認めるものが崇高な芸術作品であり、

それこそが壁や室内を飾るものだと思っていたからです。しかし、あるとき

から、生活の一つ一つのシーンが全て何かを生み出している芸術と呼んでい

いのではなのではないかと思うようになりました。すると、見方がいきなり

ガラッと変わりました。今ではゴミを収集する人々の素早い動き、建築現場

の足場を組み上げる人たちの正確な動きを美しいと思って眺めている自分が

います。


            


 こう偉そうに言う私ですが、それまでは、掃除をする自分の姿が美しいと

は思ったことなどありませんでした。いや、実は掃除をする自分自身の姿を

恥ずかしいものに感じていました。そんな美意識しかなかった私にオーナー

のマダムは初対面の日に信じられない位に美しい部屋を与えてくれると言い

ました。見ず知らずの私に、です。私はその部屋をマリー・アントワネット

か、レディ・ガガの部屋のような部屋と表現しました。それほどの美しい部

屋だったのです。


 しかしです。もしも私がその部屋の掃除もせず、シーツも替えずにいたら

きっと数週間後にはとても汚い部屋になってしまっていたでしょう。その時

は誰もマリー・アントワネットやレディ・ガガの部屋とは表現しないはず

です。


             


 
つまり、ゴミを集め、夜中に道路掃除する人がいて、停電しないように管

理する人がいて、公園の花壇を整備する人がいて、畑や田んぼで草取りをす

る人がいて、便利さや安全な暮らしを得、おいしさや栄養の糧を美しい景色

を享受できるということです。そこに思いを寄せた時、それらを創り出して

いる人々の姿が崇高で美しいものに見えてきたのです。美術館にあるものだ

けでなく。


            


 テル・ド・ルーヴルの住人は、カンナのように肉体労働につく人、

職人さん、バスガイドさんなどブルーカラーやサービス業に従事する人たち

の方が多いのが特徴です。それはマダムが芸術家を目指すそのような職業の

人にあえて格安で部屋を貸しているからなのです。だから彼らの表現するも

のは型にはまらず、あっと驚くように個性的なのだと思います。私はそんな

彼らの日常から生み出された作品にエピソードを交えてここに紹介したいと

念願し、これを拙い前書きとさせていただきます』」


            


 マダムは
ドア1枚隔てた向こうにナミコが立っているとは知らず、立っ

たままでこのナミコの書いた原稿を読んでいた。っそして読み終えたらし

く、「ナミコさん、すばらしい。ありがとう」という明るい声が
ドア越しに

ナミコの耳に届いた
。ナミコは胸の中でうごめくたくさんの言葉が一度にあ

ふれ出てきて、何も言葉にならないまま立ったままだった。


            


 そして、「これが本になるように、全力を尽くしますからね」というマダ

ムの決意にあふれた声を聞いたとき、ナミコのほほに笑みとそして目には

うっすらと涙が浮かんできた。




  




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 
 先日、インスタグラムでサッシの溝の掃除方法を
簡単に紹介いたしました。すると、単なるサッシの
その溝に対して「美しい」とご感想をいただきました。
美しいはどんなものにでも使える言葉だと実感しました。

美しいはもっとどんどん使っていい言葉で
使い過ぎて悪いことがない言葉ですね。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年5月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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