MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載785回
      本日のオードブル

パリのアパルトマンの絵

第22話

「パリのゴージャスな
スイートにて」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




かの有名なデザイナー、シャネルが
住まいにしていたホテルの部屋を
復元しリメイクしたお部屋は、
1泊300万円でございます。
さらにそのお部屋を真似て
お作りいたしましたこの
お部屋は一泊
30万円で
ございます
煌めくシャン
デリアの下で
誰にも邪魔
されない
優雅は時を
ごゆっくりご堪能いただけますように。



 


 第22回 「パリのゴージャスなスイートにて」



 1泊2000もする部屋に泊まるなんてことは後にも先にも

ないだろう。私はカーテンを触りながら、この生地はきっと1m

300は越えるだろうとか、ベッドは10000、椅子は2000、

などと余計な計算をしながら、ばかばかしくもこの部屋に1泊

2000を払う理由を探していた。


            


 
もしも、こんなホテルに妻を連れて来ようものなら、エントランス

ホールで、螺旋階段で、部屋で写真を撮りまくり、ベルボーイにまで

世間話をして仲よくなろうとするだろう。もちろんそれだけでは済ま

ず、早速、ホテルの3つ星レストランの予約を入れ、その前にアペリ

ティフでいちごにシャンパンに、キャンドルをたくさん持って来いだ

のとうるさく電話をかけまくるに違いない。その上、あとここに2泊

3泊しようと言い出すだろう。そして、帰りにはホテルのショップ

でロゴマークの入ったバスローブに、スイーツに、カップ&ソーサー

なんかも買い込んで友人たちにあれこれ自慢気にしゃべるだろう。


            


 そう言えば、彼女はディナーのフルセットを買ったこともあるな。

持って帰るのに大変な目に遭ったものだが、あれはどこのホテルだっ

ただろうか?彼女は高級ホテルやハイソな雰囲気の中では、見栄っ張

りに変身する。そして自分の財布の前に来たものは何でも買うという

最悪の趣味を持っている。だから、彼女をこんな高級ホテルに泊まら

せるのはとても危険なことなのだ。私はそんなことをあれこれ思いな

がら窓からパリ名物の丸い建物の屋根を眺めながら、ちょっとアンリ

にでも電話をかけてみようと思った。しかし、あいにく留守電になっ

ていた。それなら早めの夕食でも取ろうと、暑苦しいスーツを脱い

でシャワーを浴びた。そしてバスローブを羽織ったままでルームサ

ービスに電話をかけた。


            


 
「ステーキをひとつと、おすすめの赤ワインを1本」すると、

電話のオペレーターは「いちごに生クリームをたっぷりかけたストロ

ベリーシャンティをデザートにいかがですか?」と聞いてきた。

私は驚いて「秋にいちご?」と聞き返すと、「ええ、いちごは今、

1年中ございます」と彼女は答えた。「そうか、なるほどね、いちご

のホイップクリームもありか」私は秋には秋の味覚を食べたいた

ちだが、ステーキの後味には、いちごの方が合いそうだなと思い、

ストロベリーシャンティをデザートに注文した。30分ほど後、巨大

な銀のカバーをかぶったステーキと赤ワインがやって来た。


            


 「デザートはこちらにお入れいたしております」給仕人はそう言う

と、テーブルの横の設置された小さな冷蔵庫を指示した。

「ありがとう。おいしそうだね」「ボンナペティ!」彼はチップをも

らうと満面の笑みを浮かべながら帰っていった。私は早速、銀の

ふたを取ると、たっぷりの付け合わせのゆで野菜とポテトフライが

添えられた香ばしくとろけるようなステーキをほうばった。そして

コーヒーを飲みながら、ストロベリーシャンティもペロリと平らげた

後で、恐る恐る請求書を見た。


            


 「ステーキとポテトにワインにいちごが150もするのか

なるほど、これが高級ホテルである証か」私は少し腹立たしくもあ

ったが、「まあ、これがパリの一流ホテルなんだから、致し方ある

まい。こんないちごだって、私の故郷の近くのプロヴァンスで作られ

ているのかもしれないしが、フランスはパリを食べさせるために働く

ようなっているのだから」とすでにパリ人になってしまった私は

ちょっと遠慮気味にぶつぶつと文句を言った。


            


 そして夕食後2時間ほど経っても、まだアンリから電話はかかって

来なかった。「そう言えば、あのギャルリー・ヴィヴィエンヌという

パサージュの本屋で絵ハガキを買ったきりだった」私はすっかり忘れ

ていたその絵はがきを鞄のサイドポケットから引っ張り出した。私の

絵のことについて相談したあの本屋で買った絵はがきは、誰が書いた

のかはわからないが、およそ80年前のパリ解放の写真が写された

投函済みの古い絵はがきだった。私は高級ホテルの部屋で金のエンブ

レムの入ったバスローブに身を包み、ステーキを食べ、ワインを飲み

ながら80年前のパリに思いを馳せていた。なんという悪趣味だろう

と、1年前の私、いや、1週間前の私なら思ったことだろう。

しかし、そんな優雅なパリのホテルで過ごすことにまんざらでもない

私がそこにはいた。


            


 ようやくアンリから電話がかかってきた。

「どうした?絵の謎が解けたか?」アンリは唐突にそう言った。

「いや、絵はもういいよ。その謎の絵がまだあるかどうかも怪しい

からね。きっとバンクシーのコピーなんかに掛け替えられているか

もね、ははっは」私は笑ったが、アンリは笑わなかった。


            


 
「一体、今、どこにいるんだ?」彼は家出した子供を問いただす

ような口調で私に聞いた。「5つ星のパラス、シャングリラって知

ってるかい?」「一人か?」「ああ、もちろん」「まだホテルを泊

まり歩いているのか?そんな高級ホテルに泊まってどうする?家は

あるだろう?もう帰った方がいんじゃないか?」「ホテル暮らしも

なかなかいいもんだよ。パリにはいいホテルがたくさんあるしね

「スイスの質素な山小屋暮らしが夢だったんじゃないのか?」

「まま、それはもちろんそうだが、」「それなら、奥さんを呼ん

で、そのパラスで優雅なホテルライフを味わえば問題は可決するん

じゃないか?まあ、どんな問題なのか、私にはわからんがね。

ひと言、言っておくが、持ち物を全部処分してきた君には、価値

があるかどうかわからない絵と、自分自身しかないんだから、早く戻

って奥さんと仲よく暮らほうがいいんじゃないかな?でも、まあ、

君の奥さんはしっかりしているから、今もパリを楽しんでいるだ

ろうけどね」


            


 「それは一理あるが、でも君にそんな風に言われたくはないね、

数字と結婚した人間に、生身の人間同士のことなどわかるまい。

でも、ありがとう、わかったよ」私は腹立ちを押さえてなるべく穏や

かな口調で礼を言うと電話を切った。私はいつもアンリに電話をかけ

た後で、電話をかけたことを後悔する。そして私は気分を変えようと

鞄からプルーストの長編小説の第1巻を出して読み始めた。


            


しかし、目は字面を追うものの、私の留守中に妻があの家を売りで

もしたら、私はそれこそ、鞄一つ、身一つの難民ということになる。

私はシャンデリアが輝く貴族の邸のような美しい部屋でこれから先の

ことを思案した。



            


 
そして1時間後、私はやっとスマホを出して妻の番号にタッチし

た。しかし、2000の部屋に泊まっていることだけは黙っていよ

う、こんなゴージャスなホテルライフは自分ひとりで堪能するに限る




   


上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 パリのシャングリラのスイートはもちろんもっと
高いでしょう。しかし、宿泊できなくても
真似ることはできます。
 本物は向こうで、イミテーションは自宅
それでもいいのではありませんでしょうか?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年10月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.