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リサコラム
連載793回
      本日のオードブル

5つのクリスマス

第4話

「プライベートホテル」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




白い
天蓋付き
ベッドには
白いベッドリネン
ベッドの両サイドには
白いナイトテーブルとランプ
クリスマスツリーが輝く部屋は
さて、誰のお部屋でしょうか?
続きはイサムの話しで…

 


 第4話 プライベートホテル」



 「実は、私は田舎の大家族の中で育ったんです」イサムはそう、

口火を切ると、学生の聴衆を見渡した。


            


 「両親、子供7人。長男はもちろん、ここにいる君たちのお祖父さん

より年齢は上だろう。それに、祖父、祖母、叔父、叔母がそれぞれ2

人ずつ、さらに、どんなつながりかわからないけれど、居候と言われ

る男性もひとりいました。そして、住み込みの家政婦さんが2名、

さて、暗算の得意な人、合計何人だ?」パラパラと手が上がった。

イサムは教壇から降りると、窓際の方へ少し歩み寄りながら、最後列

の男子生徒を指した。「はい。18人です」「正解!」イサムはその

男子生徒に向かって右手を挙げるとまた教壇に上がった。


            


 「そんな18人もの人間たちがいれば、おのずと規則が必要にな

る。まずは食事の時間、風呂に入る順番などなど。その大家族がみな

若い時代はまだなんとかなったが、成長するにつれ、部屋も風呂の数

も足りなくなった。それで、家を建て増し、建て増ししていった。母

屋の他に3つ、渡り廊下でつながった家ができた。それでも夕食時な

ど一同に18人が集まれば当然、大騒ぎになる。さらに、祖父母の体

も弱くなると、彼らの世話をする人間も必要になってきた。しかし、

まだ両親は共働きで忙しくしていたため、世話をする住み込みの人間

をまた2人雇入れることになった。これで20人になった。


            


 その内、長男、次男、長女が相次いで結婚した。しかし、彼らも村

から離れず、すぐ近所に簡易な家を構えると、みんなそれぞれ1、2

時間かけて車で町まで通勤することになった。しかし、彼らもやはり

共働きのため、週末は夕食時、母屋に集まり、みんなで食卓を囲むと

いう習慣は変わらなかった。つまり、そのテーブルに新たに私の兄、

姉の配偶者3人が増えたことになる。


            


 その内、それぞれの家庭に子供が生まれたから、夕食の時はいつも

大騒動になった。何しろ、男の子が5人もいれば、それこそ戦争状態

になる。3番目の兄だけが家を離れ、都会に行ったが、7人兄弟の

内、6人は同じ場所に、まさしくスープの冷めない場所で寝起きし

た」そこまで一気にしゃべったイサムは70人ほどもいる学生の顔を

ひとりひとり確認するように見た。そしてやっと口を開いた。


 「信じられるか?君たちはおそらく3人か、4人かわからんが、

一桁の家族構成だろう。そんな中で、それぞれみんな仲良く喧嘩も

せずに暮らしてゆけるとしたら奇跡だ。しかし、私たち大家族は仲た

がいもせず、毎年、クリスマスにはみんなで母屋の広間にツリーを飾

り、そして姉たちはテレビで見たレシピでケーキやクッキーを焼い

た。それぞれ、持ち寄りのごちそうを大きなダイニングテーブルに広

げ、飲めや歌えやの大騒動で冬休みを過ごした。そして、今のよう

にパソコンも、インターネットもない時代だから、子供の遊びと言え

ば、トランプやオセロゲームくらいだったが、それでも私たちは夜中

まで熱中した。


            


 その頃はまだ、私たちの住んでいた地域も夏祭りだの、盆踊り大会

だの、おみこしかつぎだのと、いろんなイベントがあったし、村おこ

しなどといったことも盛んにおこなわれていたために、人口は増えて

行った。しかし、10年も経たないうち、近くの町に温泉が湧き出

て、小さなホテルができるようになり、田舎の町がいきなり、リゾー

トと呼ばれるようになった。それでも、私たち一族はその地を離れる

こともなく、毎年、クリスマスにはみんなで集まり盛大なパーティを

やり、餅つきをした。正月はもちろん、盛装して、母屋に集まり、

100歳に近くなった祖父におめでとうを言いに来た。


            


 しかし、そのうち、私たちの住む村から、隣町に人口が流入し、

過疎化していった。それでも、まだ、私たち一族の誰も田舎に飽きて

出て行く者はいなかった。そんな中、ただひとり、毛色の違う人間が

いたのだ」そこでイサムはまた学生の顔色を伺うように目を輝かせ

ながら、学生ひとりひとり、愛情を持って眺めた。沈黙が続いた。

しかし、みな真剣にイサムの話に耳を傾け、今か今かという表情で

イサムがまた口を開くのを待った。


            


 「その毛色の違う人間とは、だれか、」イサムはそれだけ言うと黙

った。「それは私だと言いたいところなのだが、それが違うのだ。当

時、私たち一族は住み込みの使用人も入れると31人になっていた。

それでも、いさかいもなければ、犯罪者もいなければ、代わりに大金

持ちもいなかった。しかし、私の娘のるいはちょっと違っていたの

だ。彼女がすでに40歳を越えた頃、私の父は100歳になり、

祖父母亡き後の長老になっていた。娘のるいはなんと、外国人と結婚

して村を出ると言い出したのだ。彼女は田舎のしがらみを忌み嫌った

2人目の人間だったと思う。


            


 もちろん、そんな話は簡単に一族たちの耳には絶対に入れてはなら

ないと思った。というのも、私たちには不文律というものがあった。

女性が村を出ることを原則禁じるもので、もしもどうしてもという時

は長老の許可を得なくてはならないというものだった。彼女は真っ向

からその不文律に不満を示した。もちろん、私と妻の前でだが。そし

て、何日も話し合った結果、彼女は実はホテル経営をしたいのだと言

い出した。隣町がリゾートとして潤っていることに刺激を受けたよう

だった。


            


 
彼女には過疎の村をリゾートに生まれ変わらせるいいアイデアがあ

るというのだ。そんなものが簡単に行くわけがないと私は一笑に付し

た。しかし、彼女は耳を貸すことなく、パートナーと二人でどんどん

計画を立てて実行に移した。そして、森の中に一組だけをもてなすホ

テルを作った。町の外から職人を雇い、高い石垣を積み上げ、秘密裡

に行ったのだ。


            


 そして完成したある年の12月、彼女は100歳の長老の私の祖父

から順々に毎日ひとりずつそのホテルに招き入れてもてなしをし、

自分のパートナーを紹介すると共に、共同経営者としての資金提供を

願い出た。そして、その後、娘とパートナーは出て行った。そして、

私たちはまんまとそのホテルを維持管理する役目の従業員として使わ

れることになったのだ」イサムはそこまで言うと、にっこり笑った。

「こうして、誰もやって来ないプライベートホテルが出来上がったの

です
。」




   


上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 第1話からお読みの方はきっとお分かりかも。
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お読みいただけます。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年12月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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