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リサコラム
連載874回
      本日のオードブル

『夢、描きます。』

第3回

「1年後のバレリーナ」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





ルー
ベリー
赤キャベツ
ラズベリー
青紫色から
赤紫、橙色
夕日に染まる街は
パリのようですが
さて、どんな夢が
描かれたのでしょう


 



第3回 「1年後のバレリーナ 」



 女性は壁の前に置いた踏み台の前で10分間ほどじっとしたままで

腕組みをしていた。


            


 「よし、」そう掛け声をかけるとくるっと回転し、踏み台に飛び乗

ると、壁にかかったよこ80cmXたて150cmの大きな絵に対決

するような一瞥を送りかけてから、さっと取り外した。そしてそれを

テーブルに広げた白いシーツの上に置くと、上下左右からシーツをか

け、しっかりと結び目を作って絵を包み込んだ。それから、その絵を

背負うような感じで家の外に出た。通りまで出ると角を2つ曲がって

1軒のパティスリーの前で立ち止まり、そっとドアを押した。


            


 「りん」と呼び鈴のような音がして、中から愛想のいいパティシエ

の主人が出てきた。「あれ?どうしたの?今日はなんだか大荷物、

いったいそれ、何?」「夢よ!」「夢?凛ちゃんの?それが?」主人

はガラスケースの向こうから長い首をさらにペリカンのように伸ば

すと、その四角い白いものを不思議そうな顔で覗き込んだ。


            


 「そうよ。何か悪い?」凛と呼ばれた女性はパティシエの主人に

睨み付けるような視線を送った。「別に、悪くはないよ」「そうよ、

悪いのはここのお店よ!」「凛ちゃん、冗談でしょ?今日はいった

いどうしたの?僕の何が悪いって言うの?」「それは悪いに決まっ

てるでしょ…だってさ、こんなにおいしいケーキをたくさん食べさ

せられて…ここのお店ができた時、私はまだ12歳でした。今や

32歳!その間に身長は25センチ伸びました。まあ、175センチ

の女性ってそうそういないから、ちょっと男性には敬遠される部分

は多々ありますけどね、でも、問題はそれじゃないのよ。問題は

ね、この20年で体重が2倍になったってこと!ここのケーキの

せいよ!」「はい、はい、それは悪うございましたね。でもね、

凛ちゃん、うちのケーキを食べる日はご飯を我慢してもらわなく

ちゃ。ご飯とかパンの代わりだと思ってね、そしたらプラスマイナ

スゼロでしょ、まあ、中には食べても、食べても太らない人もいる

けど。だから、凛ちゃんの体重が増えたのを僕のケーキのせいにさ

れても困るよ~」



            


 「
私だって食べても太らない人になりたいわよ、でも、残念ながら

食べたらその分、ちゃんと太ってきたのよ。だから残念ながら、

もうここのケーキとはさよならします」「それはないよ、

凛ちゃん!」「いいえ、その宣言を、今日はしに来たんです!」

凛は切れ味のいいはさみでザクッと厚紙を切ったような口調で言

った。しかし、凛の左目の角はショーケースの中の色とりどりの

フルーツが乗ったタルトに行き、右目は、一般的には1個しか乗

っていないマロングラッセが4つも乗っている特大のモンブラン

にあった。さらに2段目に移動すると、削ったホワイトチョコが

うずたかく積み上がっているチョコレートタルトの存在を確認し

た。さらに両手で三角を作ったほどもある大きなレアチーズケー

キにも同じく。


            


 この店のレアチーズケーキには独特の仕掛けがある。それはレア

チーズケーキの間にマスカルポーネチーズがそのまま層になって重

なっていることだ。そのレイヤーを11枚、はがしながらブラック

コーヒーをちびりちびりと飲み、半分の高さになったところで

カフェ・オ・レに切り替える。そうして、漫画本を片手に優雅に

高さ15センチの地層を切り崩していくのが凛の食べ方だった。


            


 「おじさん、ホントのホント、もうさよならなのよ」「なんで?

なんでそんな悲しいことを言ってくれるわけ?」「だってさ、私、

もう決断したから」カウンターの中のシェフはその白い四角なもの

が気になって仕方ない様子だった。「凛ちゃんの夢って、それ、

いったい何?」「私の夢そのものです」凛はそう言うと、近くに

あったテーブルの上に白い四角なものを置くと結び目をゆっくり

と解いた。


            


 「今日はこれを見せるために来たのよ」シーツの結び目がほど

けると、主人はすぐに近寄って来て、現れた絵の中にまたペリカン

の首を突っ込んだ。「え~っと、これは…夕焼けだよね、ブルーベ

リー、ラズベリー、オレンジ、アプリコット…」シェフはつぶやき

ながら、「ここ、どこなの?」と聞いた。「ほら、ここんとこ、先

端に翻っているんでわかるでしょう?」「あー、フランスか、

パリだね」「ご明察!そしてね、この左手の建物、ここが、私が

踊ってみたい劇場なのよね」「凛ちゃんが?もちろん応援してい

るよ。まだ32歳じゃないか。私なんか修行しにパリに行ったの

は39だったからね。パリの料理学校に入ったものの、フランス

語はわからず、落ちこぼれだったけど、何とか卒業できたし、

まぁまぁ有名どころのパティスリーに入って、そりゃあ、ちょっと

は意地悪な仲間もいて、苦労もしたけどね。でも何とか頑張って

日本でいい店を持てたから。凛ちゃんもその劇場で踊りなよ!

いいんじゃない?」「もちろんその夢はずっと前から持ってるん

だけどね。ただね、これ見て、…」凛は絵の真ん中あたりに描か

れた黒い影の人物を指差した。


            


 「私、まぁ、身長では、モデルさんをクリアできたんだけど

ね。12歳の頃、30キロだった体重が、今では2倍の60キロ

でしょ?まぁ、全然肥満体ではないけど、ただバレリーナの世界

では超おデブさんなのよ。何とか痩せてその劇場に立てるように

なりたいのよ。プロなんて言わないわよ、もちろん。アマチュア

のサークルに入って、ここで踊りたいな~って…それで、夢を描

くのが上手な絵描きさんにこの絵を描いてもらったの」


            


 「なるほどね、真っ赤に燃える夕暮れのパリの街、夢の舞台に立

つスリムなバレリーナ、凛ちゃんか!」それを聞いた凛はため息を

つくと、近くの椅子に腰を下ろした。


            


 「私、『スリムに描いて下さい』なんて画家さんに言ってないの

よね。この絵を実際に絵描きさんのアトリエまで依頼しに行った

のよ。そこで自分の夢を話をする間、画家さんは私のことも観察

していたはずなんだけど…このおかっぱ頭は正解よね、身長はあと

2cm欲しいところだけど、体形からすると、今の私より15キロ

は絞り込んだ感じでしょ?いや、22キロかなぁ…身長175cm

体重48キロって感じでしょ」「あれ?何かおかしくない?たし

か、60キロって、さっき、言ったよね…でも、48キロに22

キロを足すと、70…」


            


 「何か、モンダイ?」凛がじろりとパティシエの顔をにらみ

つけると、「いや、まぁまぁまぁ、別に何も…」とにらまれた獲

物は言葉を飲み込んだ。


            


 「つまり、その夢の絵を描いてくれた画家さんの、『もっと痩せ

なさい!』っていう忠告がこの絵の中に塗り込められているのか

な~なんて思って…やっぱ、悔しいでしょう。最初、余計なお世話

とも思ったけど、でも、ずっと絵を見ていたら、実はこれが私の夢

のような気がしてきて…絵の中の私が1.5倍の太さだったら、やっ

ぱり、なんか締まりのない絵になっちゃうかな~とか、わくわくし

ないって言うか…」「そっか、それじゃ凛ちゃんがこれから、何年

かかけて20キロばかり落とすってことだね」


            


 「1年よ。もう、何年って話じゃないわ、年齢の壁もあるから」

「それはちょっと大変な道のりかもしれないけど、でも頑張って。

うちに来てくれないのは本当に悲しいから、低カロリーのじゃがい

もか何かで作ったケーキでも開発するかな…」


            


 「それだけはやめてちょうだい。私のさらなる夢は、ここの舞台

に立って、そして日本に戻ってきたら一目散にこの巨大モンブラン

と巨大チーズケーキと雪をかぶったチョコタルトを食べることだか

ら。それまでは、毎晩、遠回りして仕事から帰るから、そのつもり

でね。ここの前を通ったら、この覚悟が崩れ落ちる感じがするか

ら。それじゃ、今日は何も買わなくてごめんなさい。一年後、

楽しみにしててね」


            


ドアベルがりんとなり、バレリーナ凛は舞台でするお辞儀をして

から、背筋をぴんと伸ばして立ち去った



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *2023年4月よりリサコラムは毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1

 パリ、夢の舞台、旅人には優しく
移民に冷たい街。がんばれ、凛!
がんばれ、みなさま。私も含め。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年7月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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