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リサコラム
連載998回
      本日のオードブル

『ノックの音が』

第13話

「さがしもの」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





スキー場の

近くはステキな撮影場所。

顔を隠せば、

どんなひとも絵になる?

さあ、

イヴの夜ですが、仕事です。




 



第13話 「さがしもの」




 北へ向かうグリーン車の新幹線の中で、スーツ姿のサラリーマン風

の中年を過ぎた男性と、40代くらいの女性が隣合って、指定席に座

った。周りにはかなり空きがある。すぐに女性は思った。空いた通路

側の隣の席に移動していいものかどうかと。次の駅に停車する間だけ

でもと、思いはしたが、次の駅で人が乗ってきたら、また移動すると

きに何となく後ろめたさも感じると思い、仕方なく、そのまま、やり

過ごしていた。次の駅でも、また次の駅でも、さらに、次の駅でも誰

も乗って来なかった。


            



 「ご出張ですか?」男性が気まずさを埋めるように、話しかけてき

た。「ああ、まあ、そんなところです」女性は話しを続けないような

口ぶりで簡単に答えた。「私も出張ですが、今の世の中、出張なんて

しなくても、Zoomやらなにやらでやれるようになりましたけど、そ

れでも、私なんかはどうも、面と向かった方がいい性分でして。それ

に、パソコンは何とか使えますけど、スマホはなくても生きていける

ような感じですね。ただ、世の中が、幼児からスマホは使わせるよう

になったじゃないですか、だからどうかなぁ、この先、スマホも使え

ないようなじいさんはとっとと死んでしまえなんて、そう言われるよ

うな時代が来るでしょうかね。対面の交渉やミーティングもなくなっ

て、出張がこの世から消える日も近いかもですね。その方が二酸化炭

素の排出量も減るでしょうから、世の中はその方向に向かっているん

でしょう。それでも、私はやっぱり対面は違うと思うんですけどね…

まあ、話しが脱線しましたけれど…」女性は頷きながら聞いていたが

、この先ずっと男性の話が続くのかと思うと、気が重くなってきた。


            


 「白くなってきましたね~」男性は窓に顔を近づけて外を見た。

「ですね」「あと1時間位ですかね?」「そうみたいですね。」女性

は、このまま続けるほうがいいのか、あるいはもう切り上げて寝たふ

りをしたほうがいいのか迷った。しかし、いきなり寝たふりもおかし

い気がしてかといって、カバンから本でも広げて読もうと思ったが、

今日に限って1冊も持ってきていなかった。新幹線の中で隣合っただ

けのことで、気に病むほどのことはないようなものだが…こんな時に

ほんの1冊もないなんて…女性は胸の中で、深いため息を、ついた。

それからそれとなく、横目でちらっと男性を見ると、「まあ、出張と

はいえ、ついでにスキーをね」と男性は言って、女性の方を見た。


            


 「ああ、そうですか。私もそんなところです。そんなというか、

それが仕事といいますか…」「もしかして、スキー場でお仕事とか

?」「ああ、まあ、半分アルバイトですけど。主に、ダイビングの

インストラクターをしてますが、スキーにスケート、ウインタース

ポーツも好きで。それで、冬の間はスキー場で働いています」「ほ

う、そうですか?グリーン車に乗られるのは、幹部の方か、何かで

?」「いいえ、今回は、特別に…」女性はこの先、まだ話を続ける

べきか、あるいは、やっぱり、寝るべきかと迷っていた。すでに、

降りますと言って次の駅で降りて、別の新幹線に乗る手もあるが、

そうなると、到着が遅くなってしまう。手持ち無沙汰であれば、ス

マホを見ていればいいのだが…スマホとはこんな時のためにあるの

かもしれないとちらっと思った。女性がスマホを取り出すと、男性

はまた話し始めた。


            


 「スキー場目指してやってきたのですから、やっぱり袖触れ合う

も何とかと言いますから…」その男性の言葉に、女性はびくっとし

た。電話番号なんて聞かれても絶対に言うことはないが…今回のア

ルバイトは大事なプロモーションビデオの撮影も含まれていた。初

挑戦だった。クリスマスイヴの撮影は少々がっかりしたが、それも

この地域のスキー場の宣伝のためだし、それに高い競争率を突破し

て得た仕事だから、文句など言える立場ではなかった。


            


 女性は自分のペースで話をしたほうがよさそうな気がした。

「今回はプロモーションビデオの撮影もありまして、それで、モデ

ルなんていうとおこがましいんですけど、スキー場と、町おこし

の地域振興を兼ねての撮影のなんです…それがかなり割のいいバイ

トでして…それで、応募したら、受かっちゃって。競争率が100

倍以上で、ほんとまさか受かるなんて思ってなかったんですけど」


 「そうですか。雪国のプロモーションビデオ、モデルさん、そ

れは楽しそうですね。私は若い頃は、いろいろ危険なバイトをやり

ました。中でも恐ろしかったのは、猛獣使いのバイトでしたね」

「猛獣使い?」「ええ、サーカスのね、猛獣にエサをやったり、

掃除をしたりというような、オリの中のやつにね」「それはすご

いですね」「ええ、でも、楽しくもありました。若い頃はお金が

もらえて、ちょっと楽しければそれでよかった。あなたはどんな

バイトをされました?そのやっぱりスキー場ですか?」女性はも

う半分、諦めかけた。この先1時間、この男性と話をなんとか合

わせるしかないようだと。


            


 「そうですね。スキー場を併設したホテルでずっとバイトして

きて、ええと、15年になりますかね。まあ、スキーが好きなの

で」「15年ですか。大変な仕事でしょう。ホテルのスキー場の仕

事なんて」「まあ、そうですね。でも、大変だなんて思ったことは

ありませんけど、ただ、よくあるのが、落とし物探しです。結構、

よく落とし物をされるんです。リフトに乗るときとか、あるいは、

レストランとかでの置き忘れも。今はスマホが一番です。やっぱり

、自分の滑る姿をお互いに撮り合いたいっていうのかな?でも、ス

キー場でスマホを落としたら、これがなかなか、見つけるのが難し

いです。見つけ出せるような設定をしていないものも多いですから

。でも、今まで一番大変だったと言えば、財布探しですね。財布落

とす人って結構いんです。一度、大金が入った大事な財布を落とし

たから何とか探し出してもらえないかなんて言われたことがありま

した。もう、10年以上前ですけどね。もちろん謝礼は半分上げま

すからって言われて…そんなふうに言われたら、やっぱり真剣に探


            


しちゃうんですよね。広いスキー場をですよ。大体スキー場に大金

の入った財布なんか持ってくるのかなあって、思いましたけど、

まあ、謝礼ありですから、痛し痒しで、ほんと、もう真剣に探しま

した。それに早く探し当てないと、雪が降ってきたら、もうわから

なくなりますし、埋もれたら春まで見つけることは不可能です。

もう、それはもう、不休不眠で探しました。暗くなってきて懐中電

灯まで持ち出して。それで、夜中、木の下でやっと財布を見つけ

たんです」


            


 「ほう、それはすごいですね。それで、半分もらったんです

ね」「ええ、まあ」「あの、その、ええと、興味本位でこんなこと

を聞くのはなんですが、大体、どのぐらいのもの、入っていたんで

すか?」「どれぐらいだと思います?」「そこまで言われる方です

から100万は軽く入っていたとか?」「ということは私が50万

円もらったって、お思いですか?実は、その方の財布には3千円し

か入ってなかったんですよ」「3千円ですか!それって詐欺じゃあ

りませんか?」「まぁ、詐欺と言われれば詐欺なのかもしれないで

すね。必死に探したのも、まぁお金が欲しかったからですけど、で

もホテルの仮にも従業員が、お客様に、『3千円しか入ってなかっ

たじゃないか!』って訴えることもできませんし…」「ああ、勘違

いだったすいませんて言われたんですが、でも、その夜、控え室で

休憩していたら、ノックする人がいて。『この礼は必ずしますから

』とその男性の方が言われて、振込先をと言われたのですが、私は

断りました。それこそ、恐喝みたいですから。たしかに、半日は必

死で探しましたけど。そしたら、次の日もまた、控え室をノックす

るんです。また、その人でした。今度は、『いつか、必ずお礼に来

ますから』って、そう言って帰られました。でも、もう、10年以

上も前のことで、そんなことは今日、思い出すまで忘れてました。


            


 
「そうでしたか」「ええ。財布も見た目に高価なブランドもので

もなかったようでしたああ、もう、間もなく到着するようです

ね」女性はやっと解放されたような気分でアナウンスに耳を傾けた

。「もしも、100万円でも入った財布で、学生の身分でその半分

もらえたら、それはそれはうれしかったでしょうけどね。まあ、青

春の一ページですね」男性はそう言うと、じっと雪景色に見とれて

いるようだった。


            


 「それじゃ、お先に!」女性はさっと、荷物棚から自分荷物を下

ろすと、先に降りる準備を始めた。そして、アナウンスと共に、席

を立った。その時、男性が女性の席の下を示して、「落とし物です

よ」と、紫色の手袋を指示した。「ああ、ほんとだ。ありがとうご

ざいます」女性が礼を言って、顔を上げると、男性は静かに語り掛

けた。


            


 「実はあの時の財布の落とし主は私なんです。あなたにどうやっ

てお詫びしようかとずいぶん考えました…ここまで来るのに、10

年かかりました。町おこしのプロモーションビデオの撮影も、私が

立案したものです。そして、モデルさんの選択も。実は、あの財布

には一等が当たる予定だった、宝くじの券が入ってまして…ははは

は、笑いますよね。それで、結局、宝くじは当たらなかったんです

けどね。その時は当たるような気がして、気が気でなくて、ほんと

、あの時は申し訳なかったです」男性は薄くなった頭を深々と下げ

ると、「やっとちゃんとお礼が言えてよかった!あの日、ドアをノ

ックした時から、ずっとずっと色々考えました。でも、せっかくな

ら、ちょっと笑い話でと思ったんです。そう、サプライズでお返し

しようと…」と。男性は女性のもう片方の紫色の手袋を差し出した





   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 新幹線の中で見ず知らずお隣りの人としゃべったこと、

あります。得意です。

普段からもう、鍛えていますから。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2025年12月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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