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リサコラム
連載636回
      本日のオードブル

思いでの場所

第6話

「恋人がサンタクロース」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



黒と
いちご色の
三角の大理石が
美しいホールには、
毎年、
12月1日に
ツリーとボールとリボンを
たくさん抱えたPさんが
やって来ます。

その日を
364日
待っている
犬がいます。
今年はどんなツリーが
出来上がるのでしょうか?


 







        

第6話 「恋人がサンタクロース」



 「やつがやって来たな。今日から12月だもんな。勝手口から1年ぶ

りの懐かしい匂いがするからわかる。僕は目をこすりながら、伸びをした。


            


 そろそろホールに行っておくか。こう見えても実は何もかも準備を整えて来

たんだ。今日の日のためにね。まあ、僕は俗にいうジェントルマン犬なんだか

ら、人間の仕事がうまくはかどるように補佐できるし、当然、彼らの仕事の邪

魔はしない。しかし、僕の家によく来る、チェロってやつは、キャンキャンと

猛烈に吠えたてる。チェロは僕の家の方が素敵だから、やっかんでいるだけな

のさ。しかし、ジェントルマン犬の僕は、もちろんそんな犬を相手にしない。

そこが並の犬と違うところなんだ。でも、あまり自慢するとジェントルマン精

神にもとるから、この辺でやめておこう。そろそろやつが勝手口のドアを開け

はなして、大荷物を運びこむところだろう。そうしたら、僕の仕事も始まると

いうことだ。


            


 まあ、やつは真面目なやつだから、いい加減な仕事はしないが、時々、僕も

やつと遊んでやらないと、不機嫌になるから、厄介なところだ。


            


 やつの仕事の仕方は熟知している。これで10回目だからね。やつははま

ず、大荷物を入れる前に床にモップをかけてから青いシートを敷く。そのため

僕は邪魔にならない隅で寝たふりをして監視をすることにしている。


            


 僕の家のホールの床は、ツリーが一番映えるように黒といちご色の三角模様

になっているから、どんなツリーを置いても美しくは見えるんだが、僕の家に

やって来るツリーは今時の流行の枯れ木のようなやつじゃなくて、でかい緑色

の本物みたいなやつなんだ。最初は本物のモミの木だったが、段々大きな木が

手に入らなくなったらしく、その内にニセモノのモミの木になった。しかし、

僕はその方がいい。本物のモミの木は触れると痛くてたまらないからな。それ

に、今はニセモノでも本物のモミの木の匂いがするようにしてある。


            


 さて、やつがホールに入って来たぞ。僕は予定通り、脇によけて寝ているふ

りをして目をつぶった。やつはいつも通り、モップで床の上を掃除してから青

いシートを床の上に広げ、いつも通り3回に分けてごそごそと荷物を置くと、

まずはツリーの脚を出した。そしてうんうんと唸りながら木を組み立て始め

た。そして、全部の組み立てを終えると、はしごに乗って枝を一つ一つ広げ

始めた。これが、意外に時間がかかるらしい。


            


 僕はずっとホールの隅で薄目を開けて一部始終をチャックしていた。まあ、

これが僕の毎年のこの季節の役目だから仕方がない。しかし、人間ってものは

だれかに監視されていないと、やるべきことを怠るから不思議なものだ。僕ら

の世界にはそんな常識はないからなんとも理解に苦しむ。そんな人間たちを僕

ら犬族が無給で監視し、守ってやっていることにもっと感謝すべきなのに、人

間は僕らに年金も、ボーナスも、給料さえ与えようなんて思わない。なんとも

理不尽じゃないか?


            


 さらに、最近はやつみたいな独身男子が僕ら犬と過ごすようになっている

らしい。それというのも、普段はもてない男子でもイケ面犬を連れて公園を散

歩でもすれば、女子がよってたかって写真を撮るわ、親し気に話しかけてくる

わ、いきなり、動物愛護の優しいモテモテ男に変身するらしいのだ。これをイ

ケ面犬のハロー効果だと僕は思っている。それで、お付き合いを始めようと企

んでいる輩(やから)もいるらしい。その後、うまく行ったかどうかは知らな

いが、僕ら犬がキューピットになってやっているのは事実なんだ。だから最近

は公園に行けば、犬を連れた独身男子がやたら目につくようになった。なんと

も、ふがいない時代になったものだ。


           


 しかし、彼らは様々な武器とさらに長寿というものを手に入れて、食物連鎖

の頂点だと有頂天になって他の動物の存在意義がよく分からなくなっているか

らどうにも仕方ない。まあ、お犬様と言われた僕らの先祖をうらやむしかない

が、僕らが災害現場で、介護施設で、そして一般家庭でも、どれほど人間たち

を支えているのか知ってもらえば、特別ボーナスだって、年金だってくれても

いいものだ。しかし、僕ら犬族は、人間のように欲の皮を持たない。あるべき

場所で満足するし、時に雨をよけ、空腹のときに食べ物さえあればいい。その

上で人間が喜ぶように、さらに癒しを与えるように身を尽くせるように神様が

作った生き物なんだから人間より遥かに崇高な動物だと僕らは思っている。あ

あ、独白が過ぎたようだな。やつの飾りつけもそろそろ終わるらしい。


             


 やつはいつも通り、最後に、飾りつけの終わったツリーを青いシートの上

でゆらゆらゆする。つけているボールがちゃんとついているかを確認するた

めだが、必ず、数個はボールが転がる。


            


 おやおや、また転がって来たな。僕は仕方なく遊んでいるふりをしながら、

一つずつ拾い集める。これもいつも通りだ。


            


 そうしてから、てやつは「よし」と言った。そして、ホールの中央に行くと

手で四角を作って眺めた後で、また「よし」と言った。さらにぐるりとツリー

を回すと、また「よし」と言った。さらにまた離れて、ツリーを眺めると、4

度目の「よし」を言うと、僕に手招きをした。こっちに来て、自分の作品を褒

めろとでも言いたいのだろう。しかし、これもいつも通りだ。だから、当然、

それまでに僕は集めたボールを箱に戻し終わっていた。


            


 僕はやつの方に駆け寄った。やつは僕を抱き上げてツリーの下に置くと、

ホールの隅からカメラで写真を撮った。僕は面倒だなと思ったが、一応「わん」

と答えてやった。 “ホームページにUPするなら、僕にも写真を見せてからに

しろよ” そんな気持ちも込めていたが、わかったかどうか。


            


 それからやつはシートを丸めて、黒といちご色の大理石の床にモップをかけ

始めた。そしてやっと気づいたように、「ああ、ボールはちゃんと箱にしまっ

たよね」と僕に言った。あきれたものだ。しかし、僕はジェントルマン犬らし

い気品ある明るい声で「わん」と言った。すると、こともあろうに、やつは、

「遊ばせてやらないね」と言った。 “なんて、勘違いだ!” 僕は思ったが、

ジェントルマン犬の僕はいちいち相手なんかしていられない。それからやつは

後片付けを終えるとリビングで来客のお相手をしている主人に挨拶をしてい

た。主人は「今、お客様で手が離せないけど、後で見ておくわ」と言った。


            


 するとやつはお辞儀をしてから帰りかけたが、「あっ、そうだ」と言って、

またホールに戻って来た。そしてポケットから自分のスマホを出すと、僕を抱

いてツリーの前に行き、「ハイ、チーズ」と言って3回シャッターを押した。


 “なんだよ、自撮かよ?僕は美男子に撮れてるか?” 僕はわんと吠えた。

するとやつは、スマホの画面をめくりながら、不満げな顔で首をかしげると、

「最後の記念だしね、あと何枚か撮っとこうかな?」と言ってまた3枚撮った。


            


 そして、やっと満足した顔で僕を降ろして、「サンタクロースは今年で終わ

りだから、じゃ、これからも元気で頑張れよ!」と言った。そして廊下を歩き

出してから一度振り返ると、また僕の写真を1枚撮った。僕は「当たり前じゃ

ないか!」という気持ちを込めて「わん」と一声大きく吠えた。


 「失礼いたします」やつの声が勝手口で響いた。

「涙目の写真はUPすんなよ」僕は、背中で手を振るサンタクロースに言った





    



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
    今日から12月。
  今年のクリスマスはどうしよう、ツリーは飾りつけは、
  そして、お料理は、いろいろ決める事が多い忙しい
  12月。しかし、やはりウキウキ、楽しい12月。
  大変ですが、クリスマスがなかったら
  12月はやっぱり寂しい気がします。

p.s. 2
    リサコラムも今年残り4回です。
  たった4回かですが、2019年も続けます。
  変わらず、読み続けて頂けたらうれしいです。


  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2018年12月号です。
           
           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
             (木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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